4月21日(土) 
香川県琴平にある江戸時代からの芝居小屋、金丸座で毎年この時期行われる歌舞伎公演。一度は行ってみたいとずっと思っていたが、今年は播磨屋一門の公演と言うことで、この機を逃しては、と思いきって行ってきた。


沿道には幟がはためいて、芝居気分を盛り上げてくれる。


これが金丸座。情緒たっぷり。キャラクターのこんぴー君もお出迎え。

小屋の構造などにご興味のある方は金丸座のHPをご覧頂きたいが、座席はほとんど椅子ではなく桟敷。一枡に5人座る形で、私たちはちょうど5人グループだったので、少しでも楽な姿勢が取れるように足を崩していたが、知らない方と相席だとあまり勝手なこともできないしかなりしんどいかも!

今月の公演も、去年からの又五郎、歌昇の襲名披露公演の一つ。



一、戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
浪花の次郎作       歌 六           
禿たより(交替出演)       種之助         
   〃  ( 〃  )       米 吉        
   〃  ( 〃  )       隼 人               
吾妻の与四郎       錦之助

日替わりのたよりは、この日は米吉君。三人の中では、少なくともビジュアル的にはいちばん禿に向いてると思われ、実際とっても可愛かった。台詞などはまだ固いというか、勉強の余地ありだけれど、首をかしげて相手を見上げる様子とか、愛らしい禿の雰囲気が良く出ていた。

歌六が次郎作実は石川五右衛門。やや赤っ面っぽい、いかつい作りの堂々たる風情。歌六さん、最近何やっても格好いいなあ。
錦之助は白塗りの与四郎実は真柴秀吉。似合いの二枚目をすっきりと。

一演目見て驚いたのは、客席と舞台の近さもさることながら、音の響き方が普通の劇場とまったく違う。悪く言えばデッドで、残響が少なく、唄や鳴り物の人はひょっとするとやりにくいかも。でも、客からすると聞きづらいことはなく、特に役者の台詞など妙に近く、生々しく感じられる。見た目だけでなく音も近いという印象。

二・口上
出演は、吉右衛門、又五郎、歌昇、錦之助、芝雀、歌六、種太郎。
芝雀と錦之助以外みんな播磨屋。錦之助も播磨屋とよく似た紋と色の裃で、なんか見た目地味な口上(笑)。
去年9月に始まった襲名口上、はじめの頃はつまりつまりだった吉右衛門さんがすっかり慣れてなめらかな口調になって、安心なようなちょっと寂しいような。。。

三、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
  川連法眼館の場        
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐  歌 昇改め又五郎                  
静御前       芝 雀                 
亀井六郎  種太郎改め歌 昇                 
駿河次郎       隼 人                  
源義経       吉右衛門

又五郎の忠信は以前鑑賞教室で観ている。
特に前半の本物の忠信がすっきりしていて良い。又五郎らしく律義で忠義心に篤い、武将と言うより能吏のようなかっちりした印象。
源九郎狐としては、狐言葉はあまり強調せず、所々アクセント程度に抑え、動きもそんなに飛び跳ねるという感じではない。だからそういうアクロバティックな狐を期待する人には物足りないかもしれない。だが、いちばん肝心な、親への愛情と寂しさにあふれて、又義経に鼓をもらって喜ぶ様子も素直に胸を打つ。襲名披露にふさわしい、変なケレンのない、真っ直ぐな舞台。
3月の船弁慶もそうだったが、又五郎の芝居や踊りは本当に真心が詰まっているようで、観ていて胸が熱くなる。

芝雀の静御前は初見か。花道を登場したときから、義経に会える喜びを体一杯に表したいじらしさと可愛さ。偽忠信詮議の凛とした様子と、源九郎狐の身の上を知った後の優しさと情のある様子。しっとりとした品と色気のある美しい静御前。

吉右衛門の義経は襲名披露のご馳走。ちょっと立派すぎないかという懸念もあったが、さすがに品格と貫禄のある御大将ぶり。久しぶりに会った静を見る目が愛情たっぷりで優しい。だがなにより、源九郎狐に自らの境遇を重ねる述懐に、寂しさと悲しさ、兄頼朝への複雑な思いなどがひしひしと感じられたのがさすが。この段のこの場面で義経に泣かされたのは初めて。

それにしても、吉右衛門さんと芝雀さんがカップルをやると、ほ~んとにラブラブなの。幕切れで寄り添うところなんかも、とっても良い感じ。四の切りの義経と静がこんなに仲よさそうなのって、そうないよなあ。妬けるわ(笑)。

歌昇の亀井は力一杯。(小屋小さいんだから、そんなにがんばらなくても良いんだよぉ~)と思うくらい、どったどったと大股で歩いてました。
隼人の駿河は反対にお行儀よすぎか。まあ、二人が対照的で面白かったけど。

又五郎、吉右衛門、芝雀の三人が揃って実のある様子で、本当に気持ちの良い舞台でした。