こんぴら歌舞伎大芝居 昼の部 [舞台]
4月22日(日)
この日は千秋楽。天気予報では太平洋側は大荒れとかで心配したが、降ったり止んだりでそれほどの大雨にはならず助かりました。
開演前に劇場前で出演者が出て餅つきがあったそうですが、残念ながら間に合わず。
一、正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)
曽我五郎時致 種太郎改め歌 昇
小林朝比奈 歌 昇改め又五郎
一連の襲名披露の中でも、二人だけでの演目はこれが初めて。
歌昇はむき身の隈もよく似合い、凛々しい五郎。踊りもすっきりと力強く、手先、足の爪先までピンと力の入った様子が美しい。襲名してからわずか半年で、本当に華が出てきたなあ。この五郎を観ていたら、いつか助六やらないかなあ、と思った。
又五郎の歌昇が立派。剽軽さも見せながら誠実さが感じられるのがこの人らしい。踊りは堅実で堂々とした貫禄もあり、良くニンに合っている。
二人とも小さい小屋からはみ出さんばかりのパワー溢れる様子で、本当に誠心誠意、一生懸命の舞台。清々しかった。ええもん見せてもらいました。
二、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛 吉右衛門
お蔦 芝 雀
堀下根吉 種太郎改め歌 昇
若船頭/おみな 種之助
子守娘おてる 米 吉
伊兵衛 隼 人
船戸の弥八 吉之助
清大工 桂 三
老船頭 由次郎
船印彫師辰三郎 錦之助
波一里儀十 歌 六
夜の部は吉右衛門はお付き合いだけで、今回主演はこの茂兵衛のみ。
この小屋で長谷川伸の新歌舞伎って合うのかな?とちょっと思っていたが、意外と違和感なくすんなり。青果や綺堂の理屈らしいのだと駄目かもしれないが、人情味溢れる長谷川のは、ちょっと大衆演劇みたいな趣もあって面白く観られた。
吉右衛門茂兵衛は前半は情けないふらふらの相撲取り。お蔦に問われ、ぼつぼつと身の上を語るのが決して同情を買おうとしているようではなく、淡々と語る様子にかえって哀れさが溢れる。母親の居所を「なあに、そこは、お墓さぁ」と言うところ、さらっと言っているのに、泣けて泣けてしょうがなかった。
そしてお蔦に金や櫛を恵んでもらい、感激する姿に誠実さがこもってまた涙。きっとこれまで人から親切にされたことなんてなかったんだろうなあ。。。
後半は一転して貫禄あるヤクザの親分風。しかし、船頭ら堅気の人に対する腰の低さには誠実さが見え、一方根吉ら儀十一味には貫目ある様子で圧倒する。しかりつけられた根吉たち、芝居と判っていてもびびりそうな迫力。
儀十らをやっつけてお蔦一家を逃がした後の幕切れの万感のこもった名台詞にまたハラハラと涙がこぼれる。十年間暖め続けたお蔦への恩と淡い憧れもしくは恋心。やっと会えた、でももう多分会うことのない切ない別れ。約束を果たせなかった我が身への悔い。全てがあの「しがねえ姿の横綱の土俵入りでござんす」に詰まっていて、誰にでもある思うようにならなかった人生への悔いと、それでも忘れてはいけないことの大事さを、腕を組んでお蔦たちの行方を黙って見送る茂兵衛に見る思いがした。
芝雀のお蔦は、あまり酌婦のすれた感じがないのはこの人らしい。口は悪いが気の良い、根は優しい女と言う風情。人によるともっとやけっぱちな雰囲気を出すが、これくらいの方が、後半で出ていったままの亭主をずっと待ち続けていた一途な女に無理なくつながって良かったと思う。茂兵衛に助けられて逃げるとき、何度も何度も振り返り、お辞儀をする姿に誠実さが見えて暖かい気持ちになった。
錦之助の辰三郎は気の弱いくせに悪事を働いてしまう二枚目という様子がぴったり。
歌六の儀十が出番は少ないが貫禄十分。渋い悪役ぶり。
歌昇の根吉は目一杯背伸びして悪ぶってる青年という感じ。大阪弁て言う「いきり」って感じ。さすがにちょっと若過ぎか。でもそのがんばってる感じが可愛かった~(笑)
桂三、由次郎の大工船頭コンビがのんびりと良い感じ。
今月の公演は、播磨屋一門に芝雀さんや錦之助さんなど、いつもご一緒の面々ばかりで和気藹々の雰囲気。
歌昇君はじめ若手の成長も著しく、チームワークもますます良くなって、まさしく吉右衛門劇団と言っても良いくらい。昼夜どの演目も、誠意に満ちた、とても気持ちよい舞台でした。
こんぴら、楽しかったです。
この日は千秋楽。天気予報では太平洋側は大荒れとかで心配したが、降ったり止んだりでそれほどの大雨にはならず助かりました。
開演前に劇場前で出演者が出て餅つきがあったそうですが、残念ながら間に合わず。
一、正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)
曽我五郎時致 種太郎改め歌 昇
小林朝比奈 歌 昇改め又五郎
一連の襲名披露の中でも、二人だけでの演目はこれが初めて。
歌昇はむき身の隈もよく似合い、凛々しい五郎。踊りもすっきりと力強く、手先、足の爪先までピンと力の入った様子が美しい。襲名してからわずか半年で、本当に華が出てきたなあ。この五郎を観ていたら、いつか助六やらないかなあ、と思った。
又五郎の歌昇が立派。剽軽さも見せながら誠実さが感じられるのがこの人らしい。踊りは堅実で堂々とした貫禄もあり、良くニンに合っている。
二人とも小さい小屋からはみ出さんばかりのパワー溢れる様子で、本当に誠心誠意、一生懸命の舞台。清々しかった。ええもん見せてもらいました。
二、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛 吉右衛門
お蔦 芝 雀
堀下根吉 種太郎改め歌 昇
若船頭/おみな 種之助
子守娘おてる 米 吉
伊兵衛 隼 人
船戸の弥八 吉之助
清大工 桂 三
老船頭 由次郎
船印彫師辰三郎 錦之助
波一里儀十 歌 六
夜の部は吉右衛門はお付き合いだけで、今回主演はこの茂兵衛のみ。
この小屋で長谷川伸の新歌舞伎って合うのかな?とちょっと思っていたが、意外と違和感なくすんなり。青果や綺堂の理屈らしいのだと駄目かもしれないが、人情味溢れる長谷川のは、ちょっと大衆演劇みたいな趣もあって面白く観られた。
吉右衛門茂兵衛は前半は情けないふらふらの相撲取り。お蔦に問われ、ぼつぼつと身の上を語るのが決して同情を買おうとしているようではなく、淡々と語る様子にかえって哀れさが溢れる。母親の居所を「なあに、そこは、お墓さぁ」と言うところ、さらっと言っているのに、泣けて泣けてしょうがなかった。
そしてお蔦に金や櫛を恵んでもらい、感激する姿に誠実さがこもってまた涙。きっとこれまで人から親切にされたことなんてなかったんだろうなあ。。。
後半は一転して貫禄あるヤクザの親分風。しかし、船頭ら堅気の人に対する腰の低さには誠実さが見え、一方根吉ら儀十一味には貫目ある様子で圧倒する。しかりつけられた根吉たち、芝居と判っていてもびびりそうな迫力。
儀十らをやっつけてお蔦一家を逃がした後の幕切れの万感のこもった名台詞にまたハラハラと涙がこぼれる。十年間暖め続けたお蔦への恩と淡い憧れもしくは恋心。やっと会えた、でももう多分会うことのない切ない別れ。約束を果たせなかった我が身への悔い。全てがあの「しがねえ姿の横綱の土俵入りでござんす」に詰まっていて、誰にでもある思うようにならなかった人生への悔いと、それでも忘れてはいけないことの大事さを、腕を組んでお蔦たちの行方を黙って見送る茂兵衛に見る思いがした。
芝雀のお蔦は、あまり酌婦のすれた感じがないのはこの人らしい。口は悪いが気の良い、根は優しい女と言う風情。人によるともっとやけっぱちな雰囲気を出すが、これくらいの方が、後半で出ていったままの亭主をずっと待ち続けていた一途な女に無理なくつながって良かったと思う。茂兵衛に助けられて逃げるとき、何度も何度も振り返り、お辞儀をする姿に誠実さが見えて暖かい気持ちになった。
錦之助の辰三郎は気の弱いくせに悪事を働いてしまう二枚目という様子がぴったり。
歌六の儀十が出番は少ないが貫禄十分。渋い悪役ぶり。
歌昇の根吉は目一杯背伸びして悪ぶってる青年という感じ。大阪弁て言う「いきり」って感じ。さすがにちょっと若過ぎか。でもそのがんばってる感じが可愛かった~(笑)
桂三、由次郎の大工船頭コンビがのんびりと良い感じ。
今月の公演は、播磨屋一門に芝雀さんや錦之助さんなど、いつもご一緒の面々ばかりで和気藹々の雰囲気。
歌昇君はじめ若手の成長も著しく、チームワークもますます良くなって、まさしく吉右衛門劇団と言っても良いくらい。昼夜どの演目も、誠意に満ちた、とても気持ちよい舞台でした。
こんぴら、楽しかったです。
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