1月24日(月)

今年も一、二部続けて観劇。入れ替え時間に浅草寺にお参りするのも毎年のこと。お守りをいただいて、おみくじを引いたらまた今年も凶だった。ここのおみくじは凶が多いと言うけれど、新年から縁起悪くてちょっと嫌な気分(苦笑)。

お年玉〈年始ご挨拶〉
この日の第二部は春猿さん。素顔見たの初めてかも~!このご挨拶、最初と最後以外は立ち上がって花道や中には客席まで降りてくる人もいるけど、春猿さんはお行儀良くずっと座ったままでした。浅草歌舞伎に出るのはなんと16年ぶりとか。浅草大好きだから(と、ちょっとごまをするふりをして)、来年もまた呼んでね~、と言っていました。

一、壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)
座頭沢市  片岡 愛之助               
女房お里  中村 七之助

去年だったか、歌舞伎座で三津五郎と福助で見ているが、その時はあんまり面白いと思わなかった。文楽で見慣れているせいか、生身の役者でやると最後が嘘っぽいんだよね~って。
それが、今回は予想外に面白かった。なんだろう、七之助と愛之助の二人の一生懸命さが沢市とお里の一途さに通じるようなところが感じられたのか。
前半の重苦しい展開が、最後の奇跡で一挙にハッピーエンドになって、二人が手を取り合って浮き浮き花道を帰っていくところが、コミカルな演技で笑わせながらも、しみじみ良かったねえ、と思える温かさがあって良かった。
七之助が甲斐甲斐しく夫の世話を焼く良くできた女房の雰囲気があってなかなか。前は綺麗だけど、硬くて色気のないお人形みたいな子だったけど、やっとここまで来たね。
愛之助も、善良でお里の幸せを思えばこそ身を投げてしまう優しさのある沢市を無理なく爽やかに演じて上々。

二、猿之助四十八撰の内 黒手組曲輪達引(くろてぐみくるわのたてひき)
   忍岡道行より   
   三浦屋裏手水入りまで    
浄瑠璃「忍岡恋曲者」   
市川亀治郎三役早替りにて相勤め申し候   

番頭権九郎/牛若伝次/花川戸助六  市川 亀治郎              
三浦屋揚巻  中村 七之助           
同 新造白玉  市川 春 猿             
白酒売新兵衛  市川 寿 猿            
三浦屋女房お仲  市川 笑三郎             
鳥居新左衛門  中村 亀 鶴      
紀伊国屋文左衛門  片岡 愛之助

音羽屋がよくやってる芝居なので、亀治郎がやるとはちょっと意外だったが猿之助四十八撰の中に入ってるのね。     
今回は大詰め水入りまで、序幕では権九郎に伝次まで早替わりで勤める奮闘振り。権九郎ではこれでもかという醜男メークと仕草で笑わせ、特に水からあがってきた後では福山雅治の歌に合わせてスタンドマイクで踊っちゃうサービス。どうせなら自分で歌えばよかったのに(笑)。普段ストイックな亀ちゃんがここまで弾けた演技をしてみせるとは思わなかったな。

だがその盛り上がりに比べると、後半の本筋、助六は意外に平凡。きちんとやってはいるのだが、助六の色気や粋、男気といったものがどれもいまいち物足りない。もちろん、菊五郎に比べるまでもないのだが、やはり全体に力が入りすぎているので余裕がなく、見て面白いというところまでは行かなかった。こういう粋や色気のいる役は、演技だけではなく、役者の持ち味が出てしまうのだろう。亀ちゃんもニンでないわけではないので、またの機会を待ちたいところ。

七之助の揚巻が美しく、豪華な衣装にも負けない艶やかさがあって立派。本物の「助六」ほどの見せ場はないが、大詰めでの啖呵など気迫を見せてなかなかの出来。

亀鶴の新左衛門が、堂々とした敵振りでなかなか。色悪の雰囲気もあって魅せた。ほんとに幅広い人だな。ぜひ来年は亀鶴にも一つくらい主役をやらせてほしい。

愛之助の紀文というのは、どっしりした貫禄という点では無理があるが、落ち着いた人情味のある様子を見せて爽やか。

春猿、寿猿、笑三郎の澤瀉屋が脇をしっかり固めてくれて、舞台のレベルは上がったと思う。ルテ銀の海老蔵公演キャンセルの、怪我の功名とでも言うべきか。(気の毒な男女蔵……。)