1月18日 浅草公会堂

今年で9回目というお正月の浅草歌舞伎。今年は愛之助と獅童が抜けてちょっと寂しくなった代わりに、若手の松也君が初参加。でもこの顔ぶれ、というか人数だと演目選定も難しそうだなあ、という感じがした。

第一部のお年玉ご挨拶は七之助。きちんと座ったままで真面目に演目や2月の松竹座の宣伝などしていた。

一・一條大蔵譚 曲舞・奥殿
亀治郎の一條大蔵卿、七之助の常磐御前、勘太郎の吉岡鬼次郎、松也のお京、亀鶴の勘解由、男女蔵の播磨大掾広盛
珍しい「曲舞」から。通常上演される「檜垣」の後の場面で、お京がもう大蔵卿の屋敷にかかえられている。そこへやってきた広盛と勘解由が舞にかこつけて大蔵卿を斬ろうとするが、逆に上手くあしらわれて失敗する、という場面で、大蔵卿の舞が中心となるので、芝居と言うより所作事に近い感じも。亀治郎は踊りが巧い人なので、あくまで阿呆の振りをしながら踊って、なお広盛らをうまくかわす、というのを危なげなくやっていた。亀鶴と男女蔵も三枚目の悪人の雰囲気が出てなかなか楽しめた一幕。しかし男女蔵は浅草歌舞伎ではいつもこういう悪役か年寄り役で可哀想な気がする。

「奥殿」ではまず勘太郎の鬼次郎に律儀な武者の様子があって、上等な出来。
七之助の常磐はややもの堅い雰囲気だが、品があって美しく、鬼次郎夫婦に真情を訴えるところも切々とした味があり上々。
若い松也にお京はどうかと思われたが、これが結構好演で、忠義一筋の武家の女らしい凛々しい様子があり、なかなか良かった。
亀治郎はここでは作り阿呆と本来の姿との行き来にやや苦労しているようだったが、まあ合格点は出せていたと思う。難しいのはやはり阿呆の方の天真爛漫といった風情で、力が抜けてないといけないこちらで力が入ってしまっているのは、仕方ないかもしれない。どうしたって去年観た吉右衛門に比べてしまうのだが、それは気の毒というものだろう。

二・土蜘
勘太郎の土蜘の精、亀鶴の保昌、松也の頼光、七之助の胡蝶
勘太郎は前半の僧と偽っての場面で、不気味さや凄みというところはまだ不足だが、さすがに切れのいい動きを見せて踊り巧者ぶりで魅せた。後半の隈をとってからも糸をまきながらの立ち回りなど気迫を感じさせる出来でさすがに面白く観ることができた。
亀鶴の保昌に凛々しい風情があり、松也、七之助も行儀のいい様子。
終盤、勘太郎が撒いた糸を後見が片づける前に勘太郎が踏みつけてしまって片づけられなくなり、足に絡まるのではないかと見ていてちょっと冷や冷やした。あれって後見も大変。手際よくさささっと糸を巻いていく様子にいつも感心する。