1月3日
昼の部に続いての観劇。
実は元旦から鼻風邪を引いてしまい、ちょっとしんどい。昼の部の「吉田屋」などでは薬のせいもあって、時々うつらうつらしてしまい、これでは夜まで持つのか、と心配になってしまったが、何とか根性でがんばる(笑)。

入れ替え時間に外に出てみたが、道頓堀界隈はバーゲンが始まっているせいもあって、まともに歩けないような人混み。東京にいると、なんでこんなに人が多いんだ!?とよく思うが、大阪もやっぱり多いわ。


通し狂言 霊験亀山鉾 亀山の仇討
(ネタばれあり)
仁左衛門の藤田水右衛門・八郎兵衛、秀太郎のおりき・貞林尼、翫雀の官兵衛、孝太郎のお松、愛之助の源之丞・袖介、薪車の金六・大岸主税、吉弥のおなみ、進之介の兵介、扇雀のおつま、段四郎の大岸頼母・仏作介、我當の藤田ト庵

南北作の仇討ちもので、関西では77年ぶりの上演という珍しい作品。もちろん初見。今月は国立劇場でも南北の作品が復活上演されていて、東西でいわば競演と言えようか。

なんと言っても仁左衛門の色悪ぶりが見物。自分を仇と狙う人々を卑怯な手を使って返り討ちにしていく、冷血無情な様子が憎々しげでありながら、ゾクゾクするような格好良さがある。
一方では二役の八郎兵衛でコミカルな軽妙さも見せ、さすがにバランスの取れた演技で、仁左衛門の魅力溢れる舞台。

また本水を使った立ち回りや、燃える火の中の棺桶から水右衛門が登場するなど見せ場も多い。
源之丞に芸者のおつまが偽りの縁切りをするところなどは「伊勢音頭」のパロディのような雰囲気も。
大詰めの仇討ちの場面では、背景に亀山の祭の鉾が並び見た目も華やか。
ただ話の運びを簡略化したためか、水右衛門と八郎兵衛の関係、水右衛門の実父ト庵の真情など、描き切れていない部分も多く疑問のまま残ってしまった点もあったのも事実。南北ならもう少し登場人物の内面に迫りそうな感じがするが、水右衛門がこれほどの悪人になったわけなどもさっぱりわからないことなどが、あまり上演されなくなった理由だろうか、と思ったりした。

秀太郎が悪役の小ずるいおりきと、武家の誇り高く慈悲深い後室の二役を演じ分けてさすがに上手い。
孝太郎が健気な妻女の様子があり上々。
愛之助が武士の源之丞、仇討ちのために商人に身をやつした源之丞、下人の袖介と事実上三役で活躍。商人姿での柔らかみが上手く出ておつまとのじゃらじゃらした感じがなかなかだったのは収穫。お松という妻がいながら芸者のおつまといい仲になっちゃういい加減さは近松風か。この人の福岡貢なんか早く観たいかも。
ト庵は良い人なのか悪い人なのかよくわからない役なのだが、我當は手堅い雰囲気。
翫雀が得意の三枚目の悪人。
扇雀が芸者の意気地と色気のある雰囲気があり、水右衛門相手に水の中での立ち回りも見せて奮闘。
段四郎も朴訥とした親父と懐深い武士の二役を演じてさすがに立派。そういえば今月は一人だけお江戸からの参加。昼の吉田屋喜左衛門では今ひとつ所在なさげだったが、夜の部では本領発揮と言うところ。

幕間狂言として藤十郎による「春寿松萬歳」が上演された。お正月らしいめでたい雰囲気の踊りで、藤十郎がここでもしっとりと美しいところを見せ、いささか陰惨な場面の続く間でちょうど良い息抜きと目の保養。