4月7日 歌舞伎座

東京の桜はもうほとんど終わりだが、今朝は小雨混じりのお天気でちょっと肌寒い。桜が散った後では花冷えとも言わないのか。

一・本朝廿四孝 十種香
時蔵の八重垣姫、橋之助の簑作・実は勝頼、秀太郎の濡衣、我當の謙信、錦之助の白須賀六郎、團蔵の原小文治

何度観ても、面白いと思ったことのない演目。いくらなんでも話がねえ。会ったこともない許婚の絵姿に生き写しだからと言って、そんな簡単に親も裏切る恋をするか~?なんて思ってしまう。

時蔵の八重垣姫は、さすがに赤姫らしい気品と美しさは十分。だがその上品さが邪魔をして、簑作実は勝頼に一目で恋に落ちてしまう一途さが弱いか。いきなり腰元に仲立ちを頼むような積極的なお姫様に見えない。
橋之助の勝頼も、品があり二枚目の風情はよいが、なんだか所在なさげな感じ。
秀太郎の濡衣は、しっとりとして、亡き偽の勝頼を慕う様子が十分だが、ちょっと柔らかすぎるので、姫に勝頼との仲立ちをする代わりに重宝の兜を盗めと迫るところに気迫が足りない。

何とも主役三人の色が薄いので、訴えてくるものが感じられず、ただ絵面的に美しいだけという感じで終わってしまった。

そもそも、この場だけの上演というのも物足りない理由のひとつ。どうせなら、続く「奥庭」までやってもらわないと、中途半端でいけない。

二・熊野(ゆや)
玉三郎の熊野、仁左衛門の平宗盛、七之助の朝顔、錦之助の従者
長唄舞踊だが、元が能から来ているのを、玉三郎があらたに作り直したという。玉三郎らしい高尚趣味が全編に行き渡っていて、踊りと言っても一貫して能掛かりなゆったりした雰囲気。
玉三郎は確かに美しかったが、正直言って私のような、能に馴染みのないものには、退屈でまったく面白くなかった。玉三郎は、これと言い、去年12月の「鬼揃紅葉狩」といい、能掛かりがお好きなようだが、歌舞伎ファンは歌舞伎舞踊を観たくて歌舞伎座に来るのであって、能が観たければ能楽堂に行けばいいのだと思う。こういう、踊りなのか芝居なのか能なのか、わけのわからないものを見せても、なんだか自己満足で終わっていて、ファンを置き去りにしているように思う。
付き合う仁左衛門も気の毒だが、さすがに気品があり立派。だが始めのところで、熊野の暇乞いを許さないような我が儘な男には見えない。
七之助が、ハッとするほど美しい様子を見せたのだけは収穫。

三・刺青奇偶(いれずみちょうはん)
勘三郎の半太郎、玉三郎のお仲、仁左衛門の鮫の政五郎
長谷川伸作の新歌舞伎。「一本刀土俵入」とか、こういう渡世物が得意ですね。
勘三郎は、根は真っ直ぐで純情なのに、博打から足を洗えない哀しい男を好演。やっぱりこの人は、時代物の武士などより、こういう役が上手い。
特に、病に倒れたお仲に刺青をされるシーンでは、半太郎のお仲を思う情の深さがひしひしと伝わって感動的。

玉三郎も先程とはうって変わって、薄幸の女の風情が上手い。序盤では多少コミカルな様子を見せるが、こういった場面でのこの人の台詞廻しは独特で、少し伝法な感じが面白い。病身となって、半太郎のことを案ずる様子が真摯で哀れさと暖かさがあり、二人の夫婦愛に涙を誘われた。

仁左衛門の政五郎がさすがに大きく立派で、舞台を締めた。

亀蔵が半太郎と争う小悪党の熊介で、さすがに味があり上手い。
高麗蔵が半太郎を尋ねてくる昔の徒弟だが、一瞬の出番で、へ?と言う感じ。わざわざ高麗蔵が出なくても…と言う役どころじゃないだろうか。

今月昼の部は、はっきり言って低調で、これなら3階席で良かったなあ。

帰りに銀座あけぼので桜餅といちご大福をお土産に買う。桜餅、大好きなんだが季節物なので、出回る時期には毎週のように食べてしまう。
これはいちご大福
あけぼのでは、雨の日に買い物をすると、「雨の日にご来店感謝の粗品です」と言って、おまけにお菓子を下さいます。たくさん買った人ならいざ知らず、私みたいに2個しか買っていない者にもくれました。感激。
雨の日のあけぼのは、要チェックです。