4月2日(月) 国立新美術館
http://cezanne.exhn.jp/

セザンヌ-パリとプロヴァンス展、として、生まれ故郷のプロヴァンスとパリを行き来したセザンヌの足跡をたどりながら画業を振り返る、といった趣旨の展覧会。趣旨はともかく、普通こういう展覧会にありがちな師匠や同時代の画家などの絵が1枚もなく、「100%セザンヌばっかり」というのはファンには嬉しい。

ごく初期以外は風景、身体、肖像、静物、というセザンヌが生涯通じて描き続けたモチーフに分けての展示。
珍しい20代くらいの絵は、へえこれがセザンヌ?と思うような、見慣れた絵とはまったく違う雰囲気の作品も。
それが30代後半くらいからは、どれを見ても「セザンヌだよね」って判る個性が身についている。面白いものだ。


サント=ヴィクトワール山
1886-87年
セザンヌは生涯に一体何枚サント=ヴィクトワール山を描いたんだろう?これもその一枚。前景の木が絵の枠に収まらず絶ちきられたようなのが、浮世絵に通じるような気がする。ゴッホやモネと違ってあまり日本趣味を感じさせないセザンヌだが。明るい夏の光に満ちて青々と見える風景が美しい。そういえば、セザンヌの風景画ってほとんど春夏のイメージだなあ。



りんごとオレンジ
1899年頃
リンゴもセザンヌの代名詞の一つ。繰り返し繰り返し、いろいろなものと組み合わせて描いた。無造作に描かれたようで入念に考えられた構図や色合い。大胆なようで繊細。セザンヌって知性派だと思うのよ。


青い花瓶
1889-90年
セザンヌの花の絵ってあまりないような気がする。色調も珍しい青系統。水浴図以外ではそう多くないのでは?今回心惹かれた絵の一つ。


赤いひじ掛け椅子のセザンヌ夫人
1877年頃
ぱっと見て、「あ、マティスっぽい」と思った。というか、マティスがセザンヌの影響を受けたと言うべきか。椅子や背後の壁紙の模様の感じがね。


座る農夫
1900-04年
以前は、セザンヌの中ではリンゴなどの静物画が好きだった。今は人物画の方が好き。と言っても、セザンヌは例えばレンブラントやゴヤの肖像画のように描かれた人物の内面まであぶり出そうとしない。人間を描いてもまるでリンゴと同じようにまるで「モノ」として描いているような距離感がある気がする。そのクールな感覚がすごく好き。でもかといって冷たくもない。人嫌いだったらしいセザンヌのモデルを務めるくらいの相手、やはり親近感があったのかしら。

会場ではセザンヌ晩年のアトリエを再現(国立新美術館ってこういうの好きだなあ)。
キュビズムへ限りなく近づきながら、あと一歩のところで踏みとどまったというのがセザンヌの印象。そんなセザンヌの全容が見られる素敵な展覧会。