1月8日(日)
日本橋三越

もう会期が終わってしまったのだけど、紹介しておきますね。

荻須高徳(1901-1986)の生誕110年を記念した回顧展。没後25年でもありました。もうそんなになりますかねえ。
私にとっては、初めて現代の日本人洋画家で興味を持った画家でした。いや、日本人だからだったわけではないでしょう。むしろ、その日本人らしくない、完全にパリの画家になったかのような感覚が新鮮だったような気がします。
若い頃から、戦時中の一時期を除いてパリに住み続け、パリの街を描き続けた荻須。
私にとっては、若い頃憧れたパリの空気を伝えてくれる画家だったのかも。


〈広告のある街角〉1937年

荻須の絵は決して写生ではない。もちろん、描かれた場所へ行けば、荻須が描いた当時とあまり変わらない建物が今もあるかもしれない。でも荻須の絵に感じるのは、「そのもの」ではなくて、いかにも「そこにありそうなもの」。
あくまでも荻須がその場で感じた空気。エッセンス。


〈果物屋〉1930年

荻須の絵に人が描かれることは滅多にないけれど、その建物の中、店の奥、路地の裏には必ず人がいる気配がする。
そういう空気感を描くのが上手かった人だと思う。

パリを描いたと言えばユトリロが有名だが、屋敷にこもって(と言うか軟禁状態で)描いたユトリロよりも、本当の意味でパリを知っていた画家が荻須ではなかったか。


〈パンとケーキの店〉1980-84年

今回の展覧会では、パリの絵はもちろん、しばしば出かけたというヴェネチアの絵や、珍しい人物画、静物画なども出品。荻須の全容を見られるようになっていた。

久しぶりにまとまって荻須の絵が観られて、なんだかちょっと懐かしい気持ちになった。
実を言えば、最近の私はこういう洋画より日本画の方に趣味が移っていて、昔ほどこの展覧会を観てもときめかなかったのだけれど、まあそれはそれとして、良い絵はやっぱり良い絵なんだよね。