12月20日(火)
引き続き昼の部。昼と言っても、顔見世は10時半開演という早さ。正直朝の部という感じ。役者さんも大変だろうなあ。
第一 早や二十年も御贔屓の御愛顧あつき御言葉に當るを祝ふて
寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤左衛門祐経 我 當
曽我十郎祐成 孝太郎
曽我五郎時致 愛之助
大磯の虎 吉 弥
化粧坂少将 壱太郎
八幡三郎 萬太郎
近江小藤太 亀 鶴
鬼王新左衛門 進之介
小林妹舞鶴 秀太郎
角書きの「早や二十年」というのは、南座が改装されて今年で二十年目と言うこと。もうそんなに経つのか。ほんとに早いなあ。
南座で工藤と言えば先代仁左衛門のものだった。それを今は息子の我當が引き継いでいる。なんだか嬉しい。
我當はここ数年膝の具合が悪いようで、立ち座りに苦労していてこの工藤でも黒衣がつきっきりで介錯していた。だがそこを除けば、声は朗々として貫禄も十分で、さすがに立派な工藤。昨日の五右衛門もだが、やはり台詞が良いのが役者は一番大事だ。
五郎の愛之助、十郎の孝太郎とも似合いの役で、愛之助はやや力が入りすぎの嫌いもあるが、隈も似合って本役の趣。孝太郎もはんなりとした和事の柔らかみがあってなかなか。
しかし愛之助って、去年も外郎売りで五郎やったんだよね。
秀太郎の舞鶴が上方らしいおっとりとした味で華やかさの中に古風な味わいを見せた。久吉と言い舞鶴と言い、こういうのはもうこの人にしか出せない味わい。
第二 お江戸みやげ(おえどみやげ)
お辻 三津五郎
阪東栄紫 愛之助
お紺 梅 枝
市川紋吉 吉 弥
角兵衛獅子兄 萬太郎
鳶頭六三郎 権十郎
女中お長 右之助
常磐津文字辰 竹三郎
おゆう 翫 雀
三津五郎と翫雀のコンビでの上演は今年4月が初演。三津五郎の方がすっかり役になじんできた様子。あまりやらない女形のしかも老け役だが、田舎のしっかり者が酒で気が大きくなって若い役者の逆上せてしまう可笑しさと可愛さを見せて、最後はホロリと泣かせるうまさ。翫雀との息もぴったり。
翫雀の方はこういう喜劇はお手の物。気の良い、さっぱりとした味が気持ちいい。ほんとに上手いな、この人は。
愛之助と梅枝というコンビは新鮮。梅枝の方が背が高そうなのはなんだが、見た目も綺麗でなかなかお似合い。
竹三郎の継母がいかにも意地悪そうで上手い。
萬太郎の越後獅子がもうけ役。
第三 隅田川(すみだがわ)
斑女の前 藤十郎
舟長 翫 雀
実は初見。なぜか今まで縁がなくて。
歌右衛門生前は専売特許状態でほとんど他の人はやらず、その後は藤十郎や雀右衛門もやっている大曲。
派手な踊りとも言い難く、素人にはちょっと難しいかなあ。
藤十郎は子を思う母の必死さ、その子が死んだと聞いた悲痛と狂乱を、押さえた表現の中に気品と共に見せてさすが。
翫雀も素朴さと人の良さ、班女の前への思いやりある様子を見せた。
でも藤十郎にはもっと華やかで賑やかな踊りが似合う。上手い下手じゃなく性質が陽な人だから、もっとぱっと舞台が明るくなるようなのの方が良い。
とは言うものの今隅田川一幕もたせらるのはこの人くらいなのかな。玉様はやらなそうだし…。
第四 与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
木更津海岸見染の場
源氏店の場
与三郎 仁左衛門
妾お富 時 蔵
鳶頭金五郎 三津五郎
和泉屋多左衛門 左團次
蝙蝠安 菊五郎
仁左衛門の与三郎は当代随一。前半の育ちの良さが、後半身を持ち崩しても残り、それが何とも言えない色気となる。ただ立っている、座っている、その仕草の一つ一つに隙がなく美しい。夜の大石とはまったく違う役なのに、どちらも役の頂点とも言える美学を見せる仁左様。ただただ感服。
時蔵も色気があり美しく、仁左衛門と似合い。まあ、この人のすっきりとした綺麗さは、ヤクザのおかみさんにはちょっと見えないのが難点ではあるが。
菊五郎の蝙蝠安は、超弩級のご馳走。何しろ菊五郎は与三郎もお富もやっている人なのだ。それが安なんて、顔見世でなければ考えられない。そしてまた、単なる刺身のつまでなく、本役になりそうな味のあるうまさなのはさすが。小悪党で小汚いのにどこか憎めない、世話物の江戸っ子やらせたら菊五郎の右に出る人はいないね。
でも私は時蔵の相手は仁左衛門より菊五郎の方が好き。なのに何故蝙蝠安…(爆)。安が横から「こいつは俺の女だ!」と言い出しそうで可笑しかった。
三津五郎の鳶頭にいなせな感じがありぴったり。
左團次の多左右衞門も本役。貫禄と懐の深さを見せた。
幕切れは、戻って来た与三郎とお富がよりを戻して幕のかたち。間、こっちの方が筋は通るが、多左右衞門が兄と知ってお富が驚愕するところで幕になるバージョンの方が、この先どうなっちゃうの?と言う余韻のようなものがあって好き。
引き続き昼の部。昼と言っても、顔見世は10時半開演という早さ。正直朝の部という感じ。役者さんも大変だろうなあ。
第一 早や二十年も御贔屓の御愛顧あつき御言葉に當るを祝ふて
寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤左衛門祐経 我 當
曽我十郎祐成 孝太郎
曽我五郎時致 愛之助
大磯の虎 吉 弥
化粧坂少将 壱太郎
八幡三郎 萬太郎
近江小藤太 亀 鶴
鬼王新左衛門 進之介
小林妹舞鶴 秀太郎
角書きの「早や二十年」というのは、南座が改装されて今年で二十年目と言うこと。もうそんなに経つのか。ほんとに早いなあ。
南座で工藤と言えば先代仁左衛門のものだった。それを今は息子の我當が引き継いでいる。なんだか嬉しい。
我當はここ数年膝の具合が悪いようで、立ち座りに苦労していてこの工藤でも黒衣がつきっきりで介錯していた。だがそこを除けば、声は朗々として貫禄も十分で、さすがに立派な工藤。昨日の五右衛門もだが、やはり台詞が良いのが役者は一番大事だ。
五郎の愛之助、十郎の孝太郎とも似合いの役で、愛之助はやや力が入りすぎの嫌いもあるが、隈も似合って本役の趣。孝太郎もはんなりとした和事の柔らかみがあってなかなか。
しかし愛之助って、去年も外郎売りで五郎やったんだよね。
秀太郎の舞鶴が上方らしいおっとりとした味で華やかさの中に古風な味わいを見せた。久吉と言い舞鶴と言い、こういうのはもうこの人にしか出せない味わい。
第二 お江戸みやげ(おえどみやげ)
お辻 三津五郎
阪東栄紫 愛之助
お紺 梅 枝
市川紋吉 吉 弥
角兵衛獅子兄 萬太郎
鳶頭六三郎 権十郎
女中お長 右之助
常磐津文字辰 竹三郎
おゆう 翫 雀
三津五郎と翫雀のコンビでの上演は今年4月が初演。三津五郎の方がすっかり役になじんできた様子。あまりやらない女形のしかも老け役だが、田舎のしっかり者が酒で気が大きくなって若い役者の逆上せてしまう可笑しさと可愛さを見せて、最後はホロリと泣かせるうまさ。翫雀との息もぴったり。
翫雀の方はこういう喜劇はお手の物。気の良い、さっぱりとした味が気持ちいい。ほんとに上手いな、この人は。
愛之助と梅枝というコンビは新鮮。梅枝の方が背が高そうなのはなんだが、見た目も綺麗でなかなかお似合い。
竹三郎の継母がいかにも意地悪そうで上手い。
萬太郎の越後獅子がもうけ役。
第三 隅田川(すみだがわ)
斑女の前 藤十郎
舟長 翫 雀
実は初見。なぜか今まで縁がなくて。
歌右衛門生前は専売特許状態でほとんど他の人はやらず、その後は藤十郎や雀右衛門もやっている大曲。
派手な踊りとも言い難く、素人にはちょっと難しいかなあ。
藤十郎は子を思う母の必死さ、その子が死んだと聞いた悲痛と狂乱を、押さえた表現の中に気品と共に見せてさすが。
翫雀も素朴さと人の良さ、班女の前への思いやりある様子を見せた。
でも藤十郎にはもっと華やかで賑やかな踊りが似合う。上手い下手じゃなく性質が陽な人だから、もっとぱっと舞台が明るくなるようなのの方が良い。
とは言うものの今隅田川一幕もたせらるのはこの人くらいなのかな。玉様はやらなそうだし…。
第四 与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
木更津海岸見染の場
源氏店の場
与三郎 仁左衛門
妾お富 時 蔵
鳶頭金五郎 三津五郎
和泉屋多左衛門 左團次
蝙蝠安 菊五郎
仁左衛門の与三郎は当代随一。前半の育ちの良さが、後半身を持ち崩しても残り、それが何とも言えない色気となる。ただ立っている、座っている、その仕草の一つ一つに隙がなく美しい。夜の大石とはまったく違う役なのに、どちらも役の頂点とも言える美学を見せる仁左様。ただただ感服。
時蔵も色気があり美しく、仁左衛門と似合い。まあ、この人のすっきりとした綺麗さは、ヤクザのおかみさんにはちょっと見えないのが難点ではあるが。
菊五郎の蝙蝠安は、超弩級のご馳走。何しろ菊五郎は与三郎もお富もやっている人なのだ。それが安なんて、顔見世でなければ考えられない。そしてまた、単なる刺身のつまでなく、本役になりそうな味のあるうまさなのはさすが。小悪党で小汚いのにどこか憎めない、世話物の江戸っ子やらせたら菊五郎の右に出る人はいないね。
でも私は時蔵の相手は仁左衛門より菊五郎の方が好き。なのに何故蝙蝠安…(爆)。安が横から「こいつは俺の女だ!」と言い出しそうで可笑しかった。
三津五郎の鳶頭にいなせな感じがありぴったり。
左團次の多左右衞門も本役。貫禄と懐の深さを見せた。
幕切れは、戻って来た与三郎とお富がよりを戻して幕のかたち。間、こっちの方が筋は通るが、多左右衞門が兄と知ってお富が驚愕するところで幕になるバージョンの方が、この先どうなっちゃうの?と言う余韻のようなものがあって好き。