南座顔見世夜の部 [舞台]
12月19日(月)
今年の顔見世は吉右衛門さんも出ないし、演目もちょっと地味。。。なのでどうしようかなあ、と思ったけど、でもやっぱり行くことにした。去年は吉様だったから一等奮発したけど、今年は3階(笑)。
第一 楼門五三桐(さんもんごさんのきり)
石川五右衛門 我 當
久吉家臣左忠太 進之介
同 右忠太 壱太郎
真柴久吉 秀太郎
最初に配役を見た時は、我當の五右衛門?う~ん。なんて思ってしまったが、これが思いの外立派。元々声が良く通る人なので、堂々とした台詞回しも上手く、押し出しも良くて、変に二枚目の若い役者がやるのとは違う、古怪な味とでも言うのかひと味違う感じがして面白かった。
秀太郎の久吉も、上方和事らしいはんなりとした雰囲気。颯爽とした、と言うのではないが、我當ともども今日の顔見世にふさわしい上方風の山門になっていたのが嬉しい。
第二 源平布引滝
実盛物語(さねもりものがたり)
斎藤別当実盛 菊五郎
小万 時 蔵
御台葵御前 孝太郎
九郎助女房小よし 右之助
百姓九郎助 家 橘
瀬尾十郎兼氏 左團次
菊五郎の実盛を観るのは初めて。あまり実事のイメージの人ではないが、颯爽として明るく、義太夫狂言を堪能と言う感じではないが後味が良いのがこの人らしい。肚芸で見せるタイプの役者ではないから、あくまでカラッとさらっとした実盛。
左團次の瀬尾が前半の憎々しげな様子から、後半小万が実の娘とわかっての変化が鮮やか。捨てた娘と初めて会う孫への情が深く泣かせる。
孝太郎の葵御前に品があり上々。
しかしいつも思うが、この芝居ってよくよく考えればかなりえぐい話で、母親の片腕を拾ったり、初対面とは言え祖父を殺して首を切っちゃった太郎吉の将来は大丈夫なのか、とつい思ったりする(苦笑)。
第三 元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)
仙石屋敷
大石内蔵助 仁左衛門
磯貝十郎左衛門 愛之助
大石主税 壱太郎
大高源吾 亀 鶴
富森助右衛門 男女蔵
伴得介 右 近
堀部安兵衛 権十郎
桑名武右衛門 秀 調
鈴木源五右衛門 家 橘
吉田忠左衛門 團 蔵
仙石伯耆守 三津五郎
「元禄忠臣蔵」の中でもこの仙石屋敷は比較的上演回数の少ない段だが、私は結構好き。この段での仁左衛門の大石を観るのは二度目。
とにかく仁左衛門の台詞のうまさに改めて感服する。浪士一同の主君を思い仇討ちに至った気持ちをとうとうと述べる長台詞の心のこもった言葉に、仙石ならずとも胸を打たれて滂沱の涙。本当に仁左様の台詞は明瞭でかつ暖かく心に響く。
対する仙石の三津五郎も、官僚らしい冷静さとともに、義士達に寄せる共感を端々に見せて、情のある様子。率直な人柄が表れ、仁左衛門と良く渡り合った。
壱太郎の主税が健気さとまだ幼さの残る儚げなところを見せて上々。仙石に母のことを尋ねられて戸惑う様子にまだ子どもらしさがのぞき、最後の父との別れに際し懸命に振る舞う姿に泣かされた。
今月は国立劇場でも元禄忠臣蔵をやっていて、両方を観ることで全段ではないが事件の発端から終幕までを見通すことができて良かった。
第四 六歌仙容彩 喜撰(きせん)
喜撰法師 三津五郎
祇園のお梶 時 蔵
すでに定評ある三津五郎の喜撰。踊りはもちろん上手いし、洒脱で軽妙で滑稽味もあり、それは楽しい。難しい踊りに見せない芸の力がさすが。昔はこういうのは下手な人だったけどね~。上手いのに面白味がなくて(苦笑)。襲名後ほんと良くなって嬉しい。
時蔵もこの人らしいすっきりした色気を見せた。ふ~む、三津・時コンビって言うのもありか。
所化がベテランから若手まで豪華だった。
第五 らくだ
大坂野漠らくだ住居の場
家主幸兵衛内の場
元のらくだ住居の場
紙屑屋久六 翫 雀
らくだの宇之助 亀 鶴
丁稚長吉 壱太郎
やたけたの熊五郎 愛之助
おなじみの演目だが、今回は「上方版」とのことで設定は同じだが細部が多少違う。見慣れた方は熊五郎の妹が出てきたりするがそれはないし、逆にこっちは終幕で丁稚が出てきたりする。全般に上方版の方がテンポが良くて面白い気がした。
熊五郎はこちらの方が悪っぽい雰囲気。愛之助はそこを意識して、威勢良く見せようとするため台詞がやや早口になり過ぎなところが見受けられたが、可笑しさは十分。ただ、最後に久六と力関係が逆転していくところの面白さをもう少し出して欲しかった。
翫雀の久六は前半この人らしいとぼけた可笑しさ。気が弱く、泣く泣く熊五郎の言いなりになっている姿が笑える。それが最後酒を飲むうちに気が強くなってくる変化が魚宗みたいで面白い。
しかしなんと言ってもおかしいのはらくだの亀鶴で、もちろん死人の役だから台詞があるわけでなし、あくまで熊五郎や久六に動かされているように見せてさりげなく踊っているところが抱腹絶倒もの。まったく、せっかくの二枚目にあんなメークさせて、これが亀鶴の当たり役になっちゃったらどうするよ?と心配になるくらい可笑しかった。
家主夫婦は寿治郎と松之助でベテランの脇役らしい味わい。特に普段立ち役の松之助のおかみさんがまるでマツコ・デラックスみたいで可笑しい。
壱太郎の丁稚は筋とは関係なくおまけみたいなものだが、「酒三升持ってこい」の台詞から、忠臣蔵四段目の力弥の「いまだ参上つかまつりませぬ」をやってみせて場内大受け。短い出番で場をさらっていた。
それを見ていた久六が「親の顔が見たいわ」と言ってまた爆笑。
とにかく、最初から最後まで笑い続けの「らくだ」で、楽しく打ち出し。
今年の夜の部の終演時間は9時40分くらいで、去年より1時間も早い。それでも普通の公演よりはだいぶ遅いのだが、去年に比べると早いというかちょっぴり損した気分(苦笑)。
今年の顔見世は吉右衛門さんも出ないし、演目もちょっと地味。。。なのでどうしようかなあ、と思ったけど、でもやっぱり行くことにした。去年は吉様だったから一等奮発したけど、今年は3階(笑)。
第一 楼門五三桐(さんもんごさんのきり)
石川五右衛門 我 當
久吉家臣左忠太 進之介
同 右忠太 壱太郎
真柴久吉 秀太郎
最初に配役を見た時は、我當の五右衛門?う~ん。なんて思ってしまったが、これが思いの外立派。元々声が良く通る人なので、堂々とした台詞回しも上手く、押し出しも良くて、変に二枚目の若い役者がやるのとは違う、古怪な味とでも言うのかひと味違う感じがして面白かった。
秀太郎の久吉も、上方和事らしいはんなりとした雰囲気。颯爽とした、と言うのではないが、我當ともども今日の顔見世にふさわしい上方風の山門になっていたのが嬉しい。
第二 源平布引滝
実盛物語(さねもりものがたり)
斎藤別当実盛 菊五郎
小万 時 蔵
御台葵御前 孝太郎
九郎助女房小よし 右之助
百姓九郎助 家 橘
瀬尾十郎兼氏 左團次
菊五郎の実盛を観るのは初めて。あまり実事のイメージの人ではないが、颯爽として明るく、義太夫狂言を堪能と言う感じではないが後味が良いのがこの人らしい。肚芸で見せるタイプの役者ではないから、あくまでカラッとさらっとした実盛。
左團次の瀬尾が前半の憎々しげな様子から、後半小万が実の娘とわかっての変化が鮮やか。捨てた娘と初めて会う孫への情が深く泣かせる。
孝太郎の葵御前に品があり上々。
しかしいつも思うが、この芝居ってよくよく考えればかなりえぐい話で、母親の片腕を拾ったり、初対面とは言え祖父を殺して首を切っちゃった太郎吉の将来は大丈夫なのか、とつい思ったりする(苦笑)。
第三 元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)
仙石屋敷
大石内蔵助 仁左衛門
磯貝十郎左衛門 愛之助
大石主税 壱太郎
大高源吾 亀 鶴
富森助右衛門 男女蔵
伴得介 右 近
堀部安兵衛 権十郎
桑名武右衛門 秀 調
鈴木源五右衛門 家 橘
吉田忠左衛門 團 蔵
仙石伯耆守 三津五郎
「元禄忠臣蔵」の中でもこの仙石屋敷は比較的上演回数の少ない段だが、私は結構好き。この段での仁左衛門の大石を観るのは二度目。
とにかく仁左衛門の台詞のうまさに改めて感服する。浪士一同の主君を思い仇討ちに至った気持ちをとうとうと述べる長台詞の心のこもった言葉に、仙石ならずとも胸を打たれて滂沱の涙。本当に仁左様の台詞は明瞭でかつ暖かく心に響く。
対する仙石の三津五郎も、官僚らしい冷静さとともに、義士達に寄せる共感を端々に見せて、情のある様子。率直な人柄が表れ、仁左衛門と良く渡り合った。
壱太郎の主税が健気さとまだ幼さの残る儚げなところを見せて上々。仙石に母のことを尋ねられて戸惑う様子にまだ子どもらしさがのぞき、最後の父との別れに際し懸命に振る舞う姿に泣かされた。
今月は国立劇場でも元禄忠臣蔵をやっていて、両方を観ることで全段ではないが事件の発端から終幕までを見通すことができて良かった。
第四 六歌仙容彩 喜撰(きせん)
喜撰法師 三津五郎
祇園のお梶 時 蔵
すでに定評ある三津五郎の喜撰。踊りはもちろん上手いし、洒脱で軽妙で滑稽味もあり、それは楽しい。難しい踊りに見せない芸の力がさすが。昔はこういうのは下手な人だったけどね~。上手いのに面白味がなくて(苦笑)。襲名後ほんと良くなって嬉しい。
時蔵もこの人らしいすっきりした色気を見せた。ふ~む、三津・時コンビって言うのもありか。
所化がベテランから若手まで豪華だった。
第五 らくだ
大坂野漠らくだ住居の場
家主幸兵衛内の場
元のらくだ住居の場
紙屑屋久六 翫 雀
らくだの宇之助 亀 鶴
丁稚長吉 壱太郎
やたけたの熊五郎 愛之助
おなじみの演目だが、今回は「上方版」とのことで設定は同じだが細部が多少違う。見慣れた方は熊五郎の妹が出てきたりするがそれはないし、逆にこっちは終幕で丁稚が出てきたりする。全般に上方版の方がテンポが良くて面白い気がした。
熊五郎はこちらの方が悪っぽい雰囲気。愛之助はそこを意識して、威勢良く見せようとするため台詞がやや早口になり過ぎなところが見受けられたが、可笑しさは十分。ただ、最後に久六と力関係が逆転していくところの面白さをもう少し出して欲しかった。
翫雀の久六は前半この人らしいとぼけた可笑しさ。気が弱く、泣く泣く熊五郎の言いなりになっている姿が笑える。それが最後酒を飲むうちに気が強くなってくる変化が魚宗みたいで面白い。
しかしなんと言ってもおかしいのはらくだの亀鶴で、もちろん死人の役だから台詞があるわけでなし、あくまで熊五郎や久六に動かされているように見せてさりげなく踊っているところが抱腹絶倒もの。まったく、せっかくの二枚目にあんなメークさせて、これが亀鶴の当たり役になっちゃったらどうするよ?と心配になるくらい可笑しかった。
家主夫婦は寿治郎と松之助でベテランの脇役らしい味わい。特に普段立ち役の松之助のおかみさんがまるでマツコ・デラックスみたいで可笑しい。
壱太郎の丁稚は筋とは関係なくおまけみたいなものだが、「酒三升持ってこい」の台詞から、忠臣蔵四段目の力弥の「いまだ参上つかまつりませぬ」をやってみせて場内大受け。短い出番で場をさらっていた。
それを見ていた久六が「親の顔が見たいわ」と言ってまた爆笑。
とにかく、最初から最後まで笑い続けの「らくだ」で、楽しく打ち出し。
今年の夜の部の終演時間は9時40分くらいで、去年より1時間も早い。それでも普通の公演よりはだいぶ遅いのだが、去年に比べると早いというかちょっぴり損した気分(苦笑)。
今年も顔見世で京都まで遠征されたのですね。関西では歌舞伎公演が多くて、勘三郎も海老蔵も見に行かなかったのですが、やはり顔見世は見ておきたいと、21日に夜の部を見に行きました。元禄忠臣蔵は、最後の一日や豊綱卿しかみていませんが、仙石屋敷の問答が私には一番わかりやすくて納得できる台詞でした。3月には南座で秀山祭がありますので、楽しみです。1月3日は、文楽の2部を見に行きます。1部はチケットが取れませんでした。お会いできるといいのですが。
by nori (2011-12-24 02:31)
>まみずくさま
こちらでははじめまして。
風知草のおとみです。
顔見世にも来てくらはったんや~。3月も大歌舞伎ですよ。ぜひおこし下さいね。終演は9時40分になっていましたか。初日は10時でしたので、テンポアップになっているんですね。
御目のこえたお江戸の方には、顔見世独特のまだるさもお楽しみいただけたと思われます。
歌舞伎座がリニューアル中になってからこまめに上京しなくなりまして指くわえて上方で細々とと思っているうちに、雑食の幅が広がってしまいました。よろしくお願い致します。
文楽は、通ってます!
by とみ(風知草) (2011-12-24 09:39)
noriさん、
顔見世はやっぱり良いですね!行く前は正直あまり盛り上がらなかったんですが、見終わったら大満足でした。
「仙石屋敷」は上演回数は少ないですが、台詞のやりとりが見事でしたね。さすがは仁左様!
1月3日、私も文楽第2部に行きます。松竹座の昼の部を見てから駆けつけるのでひょっとすると遅刻かもしれませんが、ご挨拶できれば幸いです。
by mami (2011-12-25 00:14)
とみさん、
こちらにもお越し下さってありがとうございます!
私は実家が大阪なので関西遠征はしやすいのです。
顔見世は独特の雰囲気があってやっぱり特別です。(チケットも高いけど^^;)行けば後悔しないですねえ。
お正月の松竹座と文楽も行きますよ~。もちろん3月も!(2月はちょっと無理)
これからもよろしくお願いします。
by mami (2011-12-25 00:19)
mamiさん、こんにちは。
与三郎見たさにイヴの夜に一泊して夜昼と見てきました。
目的は与三郎なんですけど、菊五郎、時蔵、三津五郎に脱帽しました。
「らくだ」は、前に吉右衛門さんがくず屋のを見ましたが、吉右衛門のくず屋は無理がありすぎです。「くず屋実ハ赤穂の浪人」みたいな感じでしたが、翫雀さんは、ぴたりはまり役でしたね。クリスマスに見たので、壱太郎君の前掛けに大きなサンタの絵、サンタの髪飾りをつけてました。お酒にも、サンタがついてたかもしれませんが、遠くてわからず。
京都はきょうは雪だそうですが、一日違いで見られずに無念です。
by とみた (2011-12-26 12:39)
とみたさん、
「らくだ」、壱君のクリスマスバージョンご覧になったんですね。うらやましい!
翫雀さんはさすがに上手いですねえ。 吉右衛門さんのは贔屓の私でも「こ、これはあんまり……。」と冷や汗かいたくらいですから、ちょっと無理でしたかね(苦笑)でも 「くず屋実ハ赤穂の浪人」とは言い得て妙ですね!
仰るとおり、仁左様に菊五郎さん、三津五郎さん、時蔵さん皆さん素敵でした。やはり顔見世は見応えありますね。
by mami (2011-12-26 23:35)