10月2日(日) 山種美術館
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

歌舞伎座建替え記念という展覧会。
もう取り壊されてしまった歌舞伎座には、そうそうたる日本の画家たちの作品があった。ロビーに掛けられて誰でも見られたものもあれば、貴賓室などにあって一般の目には触れなかったものもある。そういった、歌舞伎座所蔵の絵などと共に、歌舞伎役者自身が描いた絵や、GHQ統治時代のマッカーサーの書簡や、検閲された台本など歌舞伎座に縁のある資料などを展示した展覧会。

質量共に洋画より日本画が圧倒的に良い。
貴賓室に大事に飾られていたという大観の富士の絵や、栖凰や玉堂の風景画、深水や松園の美人画など、歌舞伎座と関係なく見ても美しい。


川端龍子「青獅子」
歌舞伎座の階段の所に掛けてあった。懐かしい。こんなに大きな絵だったっけ、と思ってしまった。

一方、やはり歌舞伎座ならではの、役者を描いた作品も、六代目歌右衛門の道成寺を描いた長谷川昇の絵などあってほ~、と思う。

こちらは五代目歌右衛門を描いた岡田三郎助≪道成寺≫

楽しいのは、役者自身が描いた書画。大きなものはないが、色紙や短冊のようなものにさらさらっと描いたようなのが、かえって力の入っていない本人の気質が伺えるようで味があって良い。
中には初代吉右衛門が句を書いて八代目幸四郎が絵を添えた扇などあって、舅と婿の共作ね、となんだか微笑ましい。
それにしても、昔の役者さんは字も達者なら、俳句や絵を嗜むなど、本当に文化人だったんだなあ。

個人的には、作家の木村荘八が「歌舞伎もの十八番」として、有名な演目の登場人物を描いた絵が作家の手慰みと言うには良く特徴を捉えていて、でも「上手く描こう」なんて思ってない風情なのが何とも粋で楽しかった。

木村荘八「連獅子」

歌舞伎好きはもちろんだが、そうでない人も楽しめる展覧会だと思う。