8月1日(月) 国立新美術館
http://www.ntv.co.jp/washington/index.html

メトロポリタンやボストンに比べると日本での知名度は今一のような気もする、アメリカの首都ワシントンの美術館。
今回は印象派を中心とした出品で、印象派前夜とも言えるコロー、クールベ、マネあたりから、モネ、ルノワールはもちろん、アメリカの美術館らしく、アメリカ人のメアリー・カサットも。そしてポスト印象派のセザンヌ、ゴッホなどで締めくくるという展示。

数は80点あまりとそう多くはないし、版画も20点くらいあるので、油絵だけだと若干物足りない気もしなくはない。昨年のオルセー美術館のポスト印象派展ほどの有名作も見当たらない。とはいえ、印象派に関しては有名画家はほぼ網羅しており、一枚一枚の絵の水準は高くて見応えはあった。


エドゥアール・マネ 《オペラ座の仮面舞踏会》
マネらしい、黒の効いた1枚。
ちょっと不思議な絵でしょう。仮装しているのは女だけ。解説によると、この女達は高級娼婦。「椿姫」のヒロインみたいな。男の方は上流階級の紳士達。と言う退廃した空気まで漂ってくるような絵。
マネのこういう社会を斜めに見たような絵、好きです。


エドガー・ドガ 《舞台裏の踊り子》
舞台裏で踊り子に話しかける紳士はオペラ座の定期会員で、舞台裏に足を踏み入れる特権の持ち主。この時代、こういう紳士が踊り子のパトロンになっていたことも多い。この二人は?と言う一瞬のドラマが見える、ドガらしい絵。


フィンセント・ファン・ゴッホ 《薔薇》
タイトル見ないと薔薇と思えないけど……。そこがゴッホらしい?いやでも、ゴッホにしては清楚な色合いに見えるが、解説によると現在の色はかなり褪色しているんだとか。描かれた当時はもっと赤や緑がはっきりしていたらしいとのこと。花瓶や花の黄色っぽいところが赤かったのかな。だとすると随分違う印象になるだろう。


ポール・セザンヌ 《赤いチョッキの少年》
この展覧会でいちばんのお気に入りはこれ。
セザンヌの人物画というと、トランプをする男達を描いた一連の絵が思い浮かぶ。これも作風から言うと近いかな。ただしこの絵の少年はちゃんと雇ったモデルだとか。肖像画らしいポーズはそのせいか。遠くから見ても赤いチョッキが目に飛び込んでくる、鮮やかな絵。

これら油絵の他に、比較的目にする機会の少ない印象派の素描や版画もまとまって展示されていたが、特に版画は、興味深くはあるが、過日レンブラントのそれは緻密な版画を大量に観た後では申し訳ないが稚拙な作品としか見えず、専門家でもないので流してしまった。

アメリカの美術館のほとんどは民間のコレクターからの寄贈品で成り立っていて、ここもそう。そのせいかどうか、比較的無難な絵が多い印象。綺麗でわかりやすくて毒がない、と言うか。私みたいなすれっからしにはちょっと物足りないが、夏休みにお子さんと出かけるにはもってこいかと思われます。