1月30日(日)
東京国立博物館

映画館を出たら雪がちらちら降っていて、寒いとは思っていたけどまさか雪とはね。その後上野に回る気分がちょっと萎え、とりあえず、歌舞伎座近くのカフェでランチをして一休みして、でもやっぱり今日行かないと行けないかも、とよっこらしょっと腰を上げた。

2009年に亡くなった平山郁夫さんは、創作活動と同時に、世界各地で危機に瀕している、かけがえのない文化遺産の保護に尽力しました。
この展覧会では、平山さんの作品だけでなく、シルクロードを中心に平山さんが旅し、保存活動に関わった遺跡や仏像、壁画などの遺品を紹介し、文化財保護の重要性を訴えている。

驚くのは平山さんの足跡で、シルクロードの各国はもちろん、カンボジアやヨーロッパまで本当にいろんなところに足を伸ばしていらっしゃった。もちろん、創作活動の一環でもあったろうけれど、決して体の丈夫な方ではなかったと聞いているので、その旺盛な意欲には感心するばかり。


「バーミアン大石仏を偲ぶ」(2001年)

展示作品は、そういった旅行の成果として描かれた、シルクロードやアンコールワット、バーミヤンなど数々の遺跡の絵。平山さんの絵を生で観ると、日本画って岩絵の具なんだな、と改めて実感する。敦煌やバーミヤンなどの砂に埋もれそうな遺跡の風景の質感がすごくよく出ている。もちろんわざとそうしているんだろうけど、他の日本画家の作品ではあまりそういう手触りのようなものを感じたことはない。


「敦煌三危」(とんこうさんき)(1985年)

併せて展示されている仏教遺物は、ガンダーラやバーミヤン、敦煌、雲南、アンコールワットなどから発掘されたもので、同じ仏像と言っても時代や地域で微妙に顔かたちが違うのがよく解って面白い。
特にアンコールワットの石像類は、去年の旅行中に観たものを思い出していっそう興味深かった。

展覧会第二部に集中展示されているのは、奈良の薬師寺に奉納されている「大唐西域壁画」。
制作期間が20年以上に及ぶ、まさに平山さん畢生の大作。全部で7場面あり、玄奘三蔵の足跡をたどる壮大な作品。


第4場面 「西方淨土須弥山」(さいほうじょうどしゅみせん)


第6場面 「デカン高原の夕べ・インド」

参考までに写真を貼っておくけれど、実物はどれもとても大きく、呑み込まれそうな迫力がある。
実際に薬師寺で観たらどんな風なのかなあ。一度拝見したい。
2000年に奉納されて以来、寺の外に出るのは初めてだそうで、今後いつ見られるかわからない貴重な機会。この第二部だけでも足を運ぶ価値ありです。