1月30日(日)
http://www.shochiku.co.jp/kabukiza-movie/


久しぶりに映画館に足を運んだ。いったい何年ぶりだろう。昔は結構よく観たんだけど。
観たのは「わが心の歌舞伎座」という、ドキュメンタリー。
ご存じの通り、歌舞伎座は昨年4月末に閉館し、取り壊され、今新しい建物を建てる工事をしている。
その今は亡き第4代目の歌舞伎座を、歌舞伎俳優へのインタビューや数々の名舞台、また裏方さんたちの仕事ぶりや楽屋風景などで偲ぶ映画。

観る前は、実はそんなに期待もしていなかった。同じような番組は民放の安っぽいドキュメンタリー番組とかでも観たし、舞台は生で観たし。
でも、オープニング、カメラが舞台のせりから上がってきてあの懐かしい客席を映し出した途端、涙が出てきちゃった。自分でも、えっ?、と思うくらい懐かしくてね。まだ1年もたってないのに。

「この大屋根の下で私たちは夢を見ました」
と、倍賞智恵子さんのナレーションから始まり、
映画では、芝翫、吉右衛門、玉三郎、菊五郎など今歌舞伎の中心にいる役者さんたちが、歌舞伎座の思い出や歌舞伎に対する思い入れなどを語る。それぞれに興味深く心にしみる真摯な言葉の数々だったが、内容はここでは書かない。

だが、映画の公開直前になくなった富十郎さんの場面では、この間まであんなにお元気だったのに、と寂しさが募り、閉場式の後大ちゃんと愛ちゃんの手を引いて帰って行かれる姿に涙がとまらなかった。

また、梅玉さんが父の歌右衛門さんの思い出を語り、葬儀の後納骨の前に歌舞伎座に寄ったら、舞台に道成寺のセットができていて、客席に大向こうさんがいて声をかけて下さったという話には、他の劇場では考えられないなあ、と感激した。

舞台の場面はもちろん、楽屋や稽古風景など、歌舞伎座の日常の何気ない光景にもふと涙がこみ上げてきて、最初から最後までほとんど泣きっぱなし。

舞台と役者はもちろん、楽屋や奈落、実に様々な仕事をなさる裏方さんたち、そして劇場の案内係など、ほんとにいろいろな人の様子が映されていて、こういった人たちが歌舞伎座では誇りを持って働いて歌舞伎を支えていたんだと言うことが今更ながらにわかり、その歌舞伎座が今はもうないことに改めて寂しさがこみ上げてきた。
と同時に、わずか10年少しとは言え、あの劇場に足を運んで、少なからぬ思い出を作ることができたことに幸せも感じた。

こういう記録映画にありがちな、いかにも感動を押し売りするおうな安っぽさはなく、
「ありがとう、歌舞伎座。」
と、素直に言える、しみじみと心に染み入る良い映画でした。

ありがとう、そしてさようなら4代目歌舞伎座。
新しい歌舞伎座ができる日を心から楽しみにしています。

歌舞伎座に行ったことがない人は興味ないだろうけれど、名舞台の数々もほんのダイジェストだけど観られて歌舞伎へのとっかかりにはなると思う。もし、歌舞伎は観てみたいけど敷居が高くて、なんて思ってる人がいたらぜひこの映画を観てほしい。