1月25日(火)
三菱一号館美術館
http://mimt.jp/aokishi/


出光美術館から歩いて移動。丸の内界隈はすっかりおしゃれな街になって、お店のウィンドウを見ながら歩くだけでも何となく楽しい。もっとも中には入れなさそうなお店ばっかりだけど。

三菱一号館美術館は去年オープンしたばかりの時に行って、あまりにお粗末な設備にがっかりしてできるなら行きたくない美術館。でもカンディンスキーとあっては行かないわけにはいかない。好きなんです、カンディンスキー。

今回の展覧会は、ミュンヘンの「レンバッハハウス美術館」所蔵の、カンディンスキーの比較的若い頃、「青騎士」グループを結成して抽象画へと踏み出すあたりの作品と、その青騎士のメンバーの作品展。

とまあ、美術史的には非常に重要な時代だろうけれど、素人美術好きとしてはそういう小難しいことは考えない。この頃のカンディンスキーの具象から抽象への移り変わりの面白さ、生き生きとした色彩の楽しさを存分に味わえる。

抽象画の先駆者などと言われるとつい構えて見てしまうが、カンディンスキーの絵は色使いが明るく綺麗で、どれも見ていて楽しい。


「花嫁」(1903)まだまだ具象の頃の絵。大きな点描で、ラファエロ前派やヴュイヤールのような雰囲気も。なんだか童話か昔話の挿絵みたいですよね。


「ガブリエーレ・ミュンターの肖像」 画家仲間でパートナー(はっきり言えば愛人)の肖像。極めて珍しいカンディンスキーの人物画。上の「花嫁」みたいなある程度デザイン化された人物像はあるが、こういう肖像画は初めて見たかも。丁寧な筆致にミュンターへの愛情が表れているよう。


「ムルナウ近郊の鉄道」(1909) まだ具象だけど、対象の形がかなり単純化されている。可愛くないですか?


「秋I」のための習作(1910) こうなるとかなり抽象化されてきたけど、まだかろうじて対象の山や家は判別できる。

そして、チラシの絵が「印象 III(コンサート)」 シェーンベルグのコンサートを聴いて触発されて描いたという作品。真ん中の黒い塊はグランドピアノを表しているらしい。取り囲む丸は聴衆。言われてみると、ああなるほどね、と思わないでもないが、かなり抽象化が進んでいる。
カンディンスキーは、このほかにも次の「コンポジション」や「即興」など、音楽に関係する絵を多数描いている。確かに、音楽の印象を具象的に表すのは難しい。


「コンポジションVII のための習作」(1913) さ、これでいよいよ、「抽象画の父、カンディンスキー」の完成(?)。一般にカンディンスキーというとこういうイメージですよね。

カンディンスキーは1944年没なので、その後まだ30年以上の画業があり、「抽象画」の先駆者としての地位を確立していくが、今回の展覧会では1912年に「青騎士」を設立したあたりまでなので晩年の作品はない。
カンディンスキーというと、「わけのわかんない抽象画の人」くらいにしか思ってない人には、初期の作品はかえって新鮮かも。思い込みを外して見ると、カンディンスキーの絵は、色は綺麗だし、わかんないなりに楽しいし、なんだか可愛い(笑)。私は結構、若い頃のも晩年のも好きなのでこの展覧会も楽しく観られた。

さらに今回は仲間の「青騎士」のメンバー達の絵も見られて、こちらは機会が少ないので貴重。


フランツ・マルク「虎」(1912) 虎が描かれているのははっきりしているが、幾何学的なアプローチが斬新。


ヤヴレンスキー「スペインの女」 マティスを思い起こさせる強烈な色彩感。青騎士とフランスのフォーヴに関係があるのか、詳しくは知らないが、時代的には近いから何らかの影響がお互いにあったのかしらと思わせる。

ミュンターはカンディンスキーとの仲が破局し「青騎士」グループの活動が終わった後も、彼らの作品を多く所持して戦争中も地下室に隠して守り抜き、晩年このレンバッハハウス美術館に寄贈した。複雑な心境を思うとちょっと切ないような。

ともあれ、カンディンスキーってよく知らないな、と言う人にも見ていただきたい展覧会。 2/6まで。