11月28日(日)
山種美術館
http://www.yamatane-museum.or.jp/exh_current.html



「日本美術院の画家たち─横山大観から平山郁夫まで─」と題された展覧会。
明治31年に岡倉天心により創設された日本美術院は、現代に至るまで日本美術界を牽引してきた。美術院の画家たちの歴史をたどること、すなわち明治以降の日本画の流れを観ることと言っても良い。
この展覧会では、山種美術館所蔵のこうした画家たちの作品をずらりと並べて見せてくれる。
出品されている画家は、古いところでは横山大観、菱田春草、小林古径、前田青頓、速水御舟、奥村土牛、小倉遊亀、平山郁夫などそうそうたる顔ぶれ。

展示はほぼ年代順で、最初に大観の「富士山」。大観って、いったい生涯に何枚富士の絵を描いたのかしら。これはほぼ白黒の割と地味な絵。
その後に春草の「月四題」のうち「夏」と「秋」。どちらもぼんやりとした月が浮かぶとても上品な絵。
今回の目玉の一つが古径の「清姫」全8枚の三年ぶりの一括展示。(チラシの上下がそのうちの2枚)
「清姫」は題名からもわかるとおり、安珍清姫の伝説を描いた幻想的な絵。私は最後の「入相桜」の絵が、情念に燃え上がった清姫を弔うかのような静謐さが漂っていて好き。

そのほかにも大家の絵では御舟の「翠苔緑芝」、小倉遊亀の「舞う」、前田青頓の「紅白梅」、土牛の「鳴門」等々。どれも見応えがあって面白い。遊亀の絵など、80歳近くなって描かれたとは思えない瑞々しさと艶やかさがある。土牛の絵も一面を埋め尽くす水面の渦が躍動的でありながら引き込まれそうな怖さもある。


御舟「翠苔緑芝」


土牛「鳴門」

さらにこれらの大家の後に、昭和生まれの比較的若い(といっても今ではもう現代の大家だろうけれど)、後藤純男、松尾敏男、小山硬、といった作家の絵も並べられていて、私などは申し訳ないが名前もろくに知らない方たちだったが、どれもここにあって見劣りのしない力作で、現代に生きる日本画の面白さ、すばらしさを感じることができた。こうした人たちの絵はそれこそ院展にでも行かないと一般の人の目に触れることはあまりないので、こういう展覧会で展示されるのは良い機会だと思う。

最後に昨年惜しくも亡くなった平山郁夫の絵もミニ特集的にまとめて展示されていた。

図録がなかったのがちょっと残念だが、山種美術館らしい企画の、充実した内容の展覧会。