8月30日 サントリー美術館
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/10vol03/index.html

ここ数年、いちばん好きな陶磁器は、ときかれたら「色鍋島!」と答えている。若い頃は洋陶磁器の方に目が行ったし、和磁器に目が行くようになってからも有田の華やかな絵付けに惹かれていた時期もある。でも今は断然鍋島。いつから、何で、といわれてもよくわからないけど、特に色鍋島のシンプルな中に華やかさと品のある絵柄にぞっこんなのである。といっても実際にはまだほとんど手に入れていないけれど。

というわけで、この展覧会。予告を見たときからずっと楽しみにしていた。なかなか鍋島だけを取り上げた展覧会って無いんだもの。
今回の展覧会は、佐賀藩の藩窯として発達した鍋島の「技」「色」「構図」「モチーフ」の側面からデザインの魅力を紹介するもの。5件の重要文化財をはじめ、鍋島の魅力を余すところなく見せてくれる。

鍋島というといちばんはじめに思い浮かぶのはこういう図柄かな。

色絵柴垣桜文大皿
染付の青の濃淡と絵付けの組み合わせが美しい。

でもこういう染付だけのもある。

青磁染付雪輪文皿
青磁の緑と染付の青だけ。これでこんなに上品で優しげな美しい絵が出来る。いいなあ、これ!


青磁染付七壺文皿
同じく青磁と染付の組み合わせなんだけど、柄がね、何とも大胆でしょう。壺を並べただけなのに、こんなにお洒落。とてもモダンなデザイン。


色絵蔬菜文皿
こちらはまた絵付けなんだけど、絵をよく見て下さい。野菜ですよ。茄子だの豆だの瓜だの。なんてことない庶民的な題材でも鍋島にかかるとこんなに素敵なお皿になっちゃうんですね。

でも、今回の展示の中で、いちばん技術的にすごいと思ったのはこれです。

染付雲雷文大皿
内から外へ雷文を少しずつ大きくしながら描いていって、全くずれがないなんて。コンピューターじゃなくて、手描きですよ、これ。あり得ないくらいすごくないですか?
柄は地味なんだけど、よく見るとあんまり手が込んでいて、口をあんぐり、という感じで見とれてしまいました。

鍋島の特徴の一つは文様が破綻なくきっちりと描かれていることだそうで、他の焼きものなら「遊び」や「偶然の生む面白さ」として許されるようなものがないのが優品とされたそうです。やはり藩窯として徳川将軍家へ贈られたというのもその性質の理由かもしれません。

展示されているのは江戸時代の秀作ですが、参考出品として現代の十四代今泉今右衛門氏の作品も見られます。こちらはまた、伝統を生かしながら現代のセンスを溶けこませた、とてもモダンで美しいものでした。

ミュージアム・ショップではその今右衛門氏の作品も売っていましたが、もちろん私などに手の出るお値段ではありません。展示品のコピーもあって、小皿5客揃えが綺麗で一瞬考えましたがさすがに思いとどまりましたわ(笑)。

どれを見ても、わあ、こんなのほしいなあ、なんて思ってしまうのが問題ですが(苦笑)、ともかく、とっても目の保養になる展覧会です。