7月26日(月)
遠征最終日。朝から暑い...。
この日は土用の丑の日。劇場に行く前にデパートにお弁当を買いに寄ったら、どこもウナギばっかり(笑)。
二日前に夜の部を観に行ったとき、何かと昼の部の宣伝をしていたので入りが悪いのかと思ったけど、平日にしてはそこそこ埋まっていたので安心した。問題はやっぱり文楽の方だな...。
一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
三笠山御殿
杉酒屋娘お三輪 孝太郎
豆腐買おむら 翫 雀
烏帽子折求女 段治郎
入鹿妹橘姫 春 猿
漁師鱶七実は金輪五郎今国 愛之助
澤瀉屋一門が大阪での公演に加わるのは珍しい。秋には新歌舞伎座で公演があるようだが、こういう風に他の一座に古典の演目で入るのはこの頃では少なかったと思う。
特にこういう丸本物では、スーパー歌舞伎の演技は通用しない。段治郎も春猿も、神妙に務めていたのは良かったが、まだまだチャレンジの域を出ていないレベル。でも歌舞伎役者としてはこちらが本筋なのだからこの経験を今後に生かしてほしいと思う。
二人に比べると格段の差を見せたのが孝太郎で、お三輪は二度目とのことだがすっかり手に入った様子。田舎の娘の純で一途な可愛らしさがよく見え、ただ求女に一目会いたい一途さに哀れさがにじんで上々の出来。この人は赤姫などよりこういう率直な役の方がニンに合っているようだ。
官女らにいたぶられて耐えに耐えていたものが、「婿取った」の声についに逆上する様子に気迫があり、鱶七に刺されて瀕死の中でまだ求女の姿を見たいと望む様子が哀れで涙を誘った。事切れる間際にうっすらと笑みを浮かべたように見えたのは気のせいだろうか。
鱶七は愛之助。線が細いのではと思ったがなかなか堂々とした様子できっちりと見せた。
豆腐買いは翫雀で、おおらかでユーモラスな様子で笑いを取った。
それにしてもこの段、いつも不思議なのは、橘姫と求女は夜にまた会おうといって別れたはずなのに、どーして直後に婿取りになるのか?..ということなのだが..誰も変って言わないんだよね(苦笑)。
二、大原女(おはらめ)
国入奴(くにいりやっこ)
大原女/奴 翫 雀
始めはおかめの面をつけて大原女の踊り。下にすごく着込んでいるので、ただでも細くない人が丸々して見える(笑)。踊りも愛嬌たっぷり。
一気に引き抜いて奴の姿になって、きびきびとした生きの良い踊りを見せた。この人ってほんとに奴さんが似合う体型よねえ。
三、元禄忠臣蔵
御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)
第一幕 御浜御殿松の茶屋
第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
同 入側お廊下
同 元の御座の間
同 能舞台の背面
徳川綱豊卿 仁左衛門
富森助右衛門 染五郎
御祐筆江島 笑三郎
上臈浦尾 竹三郎
中臈お喜世 孝太郎
新井勘解由 左團次
大阪では新歌舞伎はあまり人気がない。こういう、理屈をくだくだ言われると、なんやしらん辛気くさいわ、と思うのである。東京の人だってちょっとは思うかもしれないが、大阪の方がその度合いは強いと思う。大阪で「元禄忠臣蔵」の通しなんてまず出来ないよね、と思うもの。
とはいうものの、上方役者だが仁左衛門の綱豊卿は当たり役。殿様らしい品と知性、さらに色気もあって申し分ない。だがなんと言っても台詞運びの巧さがピカ一で、緩急自在に長台詞を操るのが舌を巻くような出来で耳に心地よいことこの上ない。ただ惜しむらくは、この人の持っている質としての明るさが、綱豊卿の抱える鬱屈を見えにくくしている嫌いがあり、この一点のみによって梅玉の綱豊の方により共感を覚えるのではある。
染五郎の助右衛門も三度目でかなり手に入ってきた様子。無骨な侍の一途さ、懸命さを出し、殿様相手にも必死に抗弁する様子に意地と健気さがあって上々。
孝太郎の喜世は行儀がよいが、もう少し愛妾らしいかわいさ色気が見えても良いか。
左團次の勘解由が初役とは意外。さすがに貫禄のある様子。
笑三郎の江島が御祐筆らしい才女の風情があってなかなか。
余談。
隣に座っていたおばさんたちが、染五郎を見て「この人のお父さん、誰やったかいな。ほらほら、あの」「白鷗?」「そんなおじいさんやなくて.顔は出てくるねんけど」
よっぽど教えてあげようかと思ったけど、横から口を出すのもはばかられ...。こういう時横で聞いてる方がいらいらしたりする(笑)。
5月の團菊祭の時は、團十郎と菊五郎の胸像だけが飾ってあったが、今月はいくつか増えていた。新橋演舞場では見かけないので、全部こっちにお引っ越しなんだろうか...それってどうよ?
遠征最終日。朝から暑い...。
この日は土用の丑の日。劇場に行く前にデパートにお弁当を買いに寄ったら、どこもウナギばっかり(笑)。
二日前に夜の部を観に行ったとき、何かと昼の部の宣伝をしていたので入りが悪いのかと思ったけど、平日にしてはそこそこ埋まっていたので安心した。問題はやっぱり文楽の方だな...。
一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
三笠山御殿
杉酒屋娘お三輪 孝太郎
豆腐買おむら 翫 雀
烏帽子折求女 段治郎
入鹿妹橘姫 春 猿
漁師鱶七実は金輪五郎今国 愛之助
澤瀉屋一門が大阪での公演に加わるのは珍しい。秋には新歌舞伎座で公演があるようだが、こういう風に他の一座に古典の演目で入るのはこの頃では少なかったと思う。
特にこういう丸本物では、スーパー歌舞伎の演技は通用しない。段治郎も春猿も、神妙に務めていたのは良かったが、まだまだチャレンジの域を出ていないレベル。でも歌舞伎役者としてはこちらが本筋なのだからこの経験を今後に生かしてほしいと思う。
二人に比べると格段の差を見せたのが孝太郎で、お三輪は二度目とのことだがすっかり手に入った様子。田舎の娘の純で一途な可愛らしさがよく見え、ただ求女に一目会いたい一途さに哀れさがにじんで上々の出来。この人は赤姫などよりこういう率直な役の方がニンに合っているようだ。
官女らにいたぶられて耐えに耐えていたものが、「婿取った」の声についに逆上する様子に気迫があり、鱶七に刺されて瀕死の中でまだ求女の姿を見たいと望む様子が哀れで涙を誘った。事切れる間際にうっすらと笑みを浮かべたように見えたのは気のせいだろうか。
鱶七は愛之助。線が細いのではと思ったがなかなか堂々とした様子できっちりと見せた。
豆腐買いは翫雀で、おおらかでユーモラスな様子で笑いを取った。
それにしてもこの段、いつも不思議なのは、橘姫と求女は夜にまた会おうといって別れたはずなのに、どーして直後に婿取りになるのか?..ということなのだが..誰も変って言わないんだよね(苦笑)。
二、大原女(おはらめ)
国入奴(くにいりやっこ)
大原女/奴 翫 雀
始めはおかめの面をつけて大原女の踊り。下にすごく着込んでいるので、ただでも細くない人が丸々して見える(笑)。踊りも愛嬌たっぷり。
一気に引き抜いて奴の姿になって、きびきびとした生きの良い踊りを見せた。この人ってほんとに奴さんが似合う体型よねえ。
三、元禄忠臣蔵
御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)
第一幕 御浜御殿松の茶屋
第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
同 入側お廊下
同 元の御座の間
同 能舞台の背面
徳川綱豊卿 仁左衛門
富森助右衛門 染五郎
御祐筆江島 笑三郎
上臈浦尾 竹三郎
中臈お喜世 孝太郎
新井勘解由 左團次
大阪では新歌舞伎はあまり人気がない。こういう、理屈をくだくだ言われると、なんやしらん辛気くさいわ、と思うのである。東京の人だってちょっとは思うかもしれないが、大阪の方がその度合いは強いと思う。大阪で「元禄忠臣蔵」の通しなんてまず出来ないよね、と思うもの。
とはいうものの、上方役者だが仁左衛門の綱豊卿は当たり役。殿様らしい品と知性、さらに色気もあって申し分ない。だがなんと言っても台詞運びの巧さがピカ一で、緩急自在に長台詞を操るのが舌を巻くような出来で耳に心地よいことこの上ない。ただ惜しむらくは、この人の持っている質としての明るさが、綱豊卿の抱える鬱屈を見えにくくしている嫌いがあり、この一点のみによって梅玉の綱豊の方により共感を覚えるのではある。
染五郎の助右衛門も三度目でかなり手に入ってきた様子。無骨な侍の一途さ、懸命さを出し、殿様相手にも必死に抗弁する様子に意地と健気さがあって上々。
孝太郎の喜世は行儀がよいが、もう少し愛妾らしいかわいさ色気が見えても良いか。
左團次の勘解由が初役とは意外。さすがに貫禄のある様子。
笑三郎の江島が御祐筆らしい才女の風情があってなかなか。
余談。
隣に座っていたおばさんたちが、染五郎を見て「この人のお父さん、誰やったかいな。ほらほら、あの」「白鷗?」「そんなおじいさんやなくて.顔は出てくるねんけど」
よっぽど教えてあげようかと思ったけど、横から口を出すのもはばかられ...。こういう時横で聞いてる方がいらいらしたりする(笑)。
5月の團菊祭の時は、團十郎と菊五郎の胸像だけが飾ってあったが、今月はいくつか増えていた。新橋演舞場では見かけないので、全部こっちにお引っ越しなんだろうか...それってどうよ?