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夏休み文楽特別公演 第三部 [舞台]

7月25日(日) 国立文楽劇場

第二部はほぼ満員だったのに、第三部になるとがたっと人が減ってしまった。う~ん。なんだかもったいないよなあ。

0710文楽.JPG

菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
 寺入りの段 睦・喜一朗
 寺子屋の段 綱・清二郎 津駒・寛治
玉女の松王丸、文雀の千代、和生の源蔵、勘壽の戸浪

最近は歌舞伎では「寺入り」をやらないことが多いが、やっぱりここから入らないと、あとの千代の悲しみが浅くなると思う。
武家女房を遣わせたら天下一品の文雀の千代、「寺入り」では悲しみを内に秘め、覚悟は決めながらも気持ちの揺らぐ様子が見える。子供を残して去っていくときに一瞬の逡巡がよぎるのが手に取るようにわかる。
「寺子屋の段」後半で戻ってきてからは、悲しみを存分に見せながらも、節度を守る姿に哀れさが余計ににじむのが、さすがにうまい。ほんっとに文雀さんのこういう役は見応えがあって素晴らしい。

玉女の松王丸も大きさと腹の据わった様子が立派。首実検は丁寧に見せ、小太郎の最期の様子を源蔵に聞いて大泣きするところは豪快にたっぷりと見せた。この頃、勘十郎に比べてちょっと後れを取っている感もある玉女だが、こういう役はさすがに手中にしていて安定している。がんばってほしいな。

和生の源蔵も、律義で誠実な人柄と、それ故に弟子を手にかけざるを得ない苦悩を見せて巧い。
勘壽の戸浪もしっかり者の世話女房の風情で、夫とともに菅秀才を守ろうとする一途な様子。

義太夫は、寺子屋の段の綱大夫と清二郎が、松王と源蔵のそれぞれの苦悩と対立を緊迫感を持って語ってさすがに大きい。
津駒と寛治も、真実が明らかになってからの松王夫婦の悲しみを切々と聞かせて上々。寛治の「いろは送り」が哀愁に満ちた音色で泣かせた。

日本振袖始(にほんふりそではじめ)
 大蛇退治の段 呂勢・咲甫・相子・靖 清治・清志郞・清馗・清丈・龍爾
勘十郎の岩長姫(大蛇)、簑二郎の稲田姫、玉也の素戔嗚尊

近松の原作で、歌舞伎では去年玉三郎の大蛇で上演されたのを見ているが、文楽では長らく上演されず、今回清治が補綴補曲しての復活らしい。
勘十郎の岩長姫が、酒を飲んで酔っ払っていくのが一つの見物で、衣装も頭も次々に換えながら踊りの動きを見せていくが、迫力もありながら乱れない所作がさすがに美しくて立派。

正体を現して大蛇になってからは黒衣で八つの龍のような大蛇の頭を動かす。小道具さん手作り(!)という頭は、「ネバーエンディング・ストーリー」の龍を小さくしたような感じ。なかなかの迫力だった。

呂勢と咲甫の掛け合い(この頃多いね、この組み合わせ)は勢いがあって面白く、清治による曲も三味線と鼓の掛け合いが派手な手で演奏されて聴き応えがあってさすが。

これだったら、鑑賞教室などに出しても喜ばれそう。来年は第一部でどうでしょう。

第二、三部と観てから、そういえば嶋大夫さんを見てないと思ったら第一部にご出演でしたか。今月は聞き逃して残念でした。

しかし、この頃は大夫の人数が増えたからか、あるいは老年化のせいか、一段を一人の大夫で語り通すことがほとんどなくなったのはいささか寂しい気もする。
全部の大夫に出演機会を与えるとなると、現状のようになるのだろうけれど、将来を考えるとどうなんですか。ますます大夫の力が弱体化しそうで、良いのか、これで?と思ってしまうけれど。たとえば日替わりで務めるとかすれば、あるいは集客にも貢献しないかな。
タグ:文楽 文雀
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