5月3日

連休で帰省中、何も予定がなかった一日、奈良の當麻寺(たいまでら)に初めて行って来た。
学生時代、何の授業だったのかももう忘れたのだが、折口信夫の「死者の書」と中将姫伝説の話を聞いて、いつか當麻寺に行ってみたいね、と友人と話していたのがそのままになって、以来30年近くなんとなく気になっていた。
で、今年は平城宮遷都1300年記念の行事で奈良がクローズアップされていて、「そういえば、當麻寺行ってなかったな」、と思い出したわけ。

大阪から當麻寺には、阿部野橋から近鉄南大阪線で行く。この路線自体はじめて乗った。途中、道明寺という「菅原伝授」にゆかりの駅名があって「へえ、この辺なのか」と芝居好きには興味深い。もっとも電車から見た範囲では、今は何の変哲もない郊外の町という雰囲気だが。

各停しか止まらない小さな「当麻寺」駅を降りて、寺までは徒歩で15分くらい。もっと門前町が開けているかと思ったがそれほどでもない。
事前にほとんど何も調べずに行ったので、着いて意外だったのは思ったよりずっと大きいお寺だったこと。伽藍配置の本堂、金堂などいくつもの建物があり、中でも東西二つの塔が天平時代の創建当時のものが残っているのはここだけという由緒あるもの。へえ、こんな立派なお寺だとは知らなかったなあ。

ともあれ、まずは牡丹園が有名な中之坊へ。この建物の天井に、昭和以降の画家たちが寄贈した絵が張りつめられていて百枚天井絵として知られている。普段は写仏をする人しか中に入れないが、連休中は特別にお住職の「絵解き説法」が行われてそれを聞くと入れてもらえるので、せっかくだから参加した。
説法は住職がこのお寺の由来と、中将姫が描いた「曼荼羅図」の写しを見ながら解説してくださるもので、特に「曼荼羅図」の説明のところは独特の節回しがついた「絵解き説法」と呼ばれている、昔からこのお寺に伝わる説法なのだとか。

中将姫が蓮の糸で刺繍して描いたというこの「曼陀羅図」の原本は損傷がひどいそうで非公開。鎌倉時代に作られた現存する最古の写しが期間限定で公開されていて、宝物館ではこちらを運良く拝見できた。

お目当ての天井画は、前田青邨を始として、平成になってからも新たに中島千波、上村淳之など有名画家の絵があって、一枚一枚見るだけでも時間がいくらあっても、という感じ。100年後には重要文化財になりそう。異色なのは片岡鶴太郎の絵も。

絵を見た後はお庭に出て、有名な牡丹園を拝見。
歌舞伎で獅子が出てくる舞台にはぼたんが付き物で、紅白という印象だが、ここでは色とりどりのぼたんを観ることができる。








日差しよけの傘もなんだか風流。


白い藤棚も見頃だった。


中将姫が剃髪した髪で「六字名号」を刺繍した故事に因んだ「髪塚」。6月16日には毛髪の供養法会があるそう。

中之坊を出て、本堂などを拝観した後、さらに西南院へ。ここもお庭が綺麗。


入り口の受付の人が「ハンカチの木が咲いてますよ」と教えてくれた。初めて見たかも。ひらひらした花がハンカチみたいだからこの名前なのかな?


庭内の見晴台から東西両塔が見える。


池に写るのは西塔。


ここのお庭は芍薬がいっぱい。「立てば芍薬、座れば牡丹。。。」というあれですね。花に疎いので違いがよくわかっていなかったが、葉の形が全然違う。


水琴窟。じっと耳を澄ますと、ピアノの高音のようなキンキンという澄んだ音がかすかに聞こえる。

お次は奥院。


ここのお庭は、石仏や石像を配した浄土庭園。

なんだかんだと2時間半くらい中で過ごした。
仏像もたくさんあったが、中でも金堂の弥勒菩薩像は日本最古の粘土でできた像だとか。もちろん国宝。
他にも、梵鐘とか石灯籠とか厨子とか、いろいろ「日本最古」といわれるものがたくさんあって驚いた。その割には法隆寺だの薬師寺だのといった超有名なお寺に比べると知名度が低いような。私が行った日も、ぼたん祭などやっていておそらく普段よりはずっと人が多いのだろうけど、それでもそんなに混雑している感じではなくゆっくり拝観できたので、ちょっとした穴場のような感じ。


なお今年は平城京遷都1300年祭記念として、特別拝観行事もいろいろあるみたい。これから奈良に行く方は要チェック。
http://www.taimadera.org/