3月21日
日本橋高島屋



招待券をもらっていたので、国立劇場の後回り道して行って来ました。
向井潤吉の絵をまとめて観たのは初めて。若い頃から晩年までの作品を一堂に集めた回顧展。
20代でヨーロッパに留学したときの、デューラーやルノワール、アングルなどの絵の模写もあり、確かな筆力には感心。
帰国後は戦争記録画なども製作、戦後になって向井の代名詞とも言える民家をモティーフにした絵に取り組み出す。

展示の3分の2くらいが民家の絵とその下絵とも言えるスケッチ画。
山間に立つ古い日本の茅葺き屋根の民家。半世紀くらい前はどこに行っても当たり前にあったであろう風景。でも今は、きっとこれらの絵に描かれた家も大半が失われているんだろうな。
向井はそう言う景色を絵に残すことに後半生の情熱のすべてを注いだのだろうか。
その情熱というか執着というかには敬服する。
絵も一枚一枚、それぞれ確かな技術と構成力、丁寧な筆使いで描かれていて、素晴らしい。

でもね。
さすがにこうして30枚、40枚と民家の絵を見続けると、よっぽどこういう家が好きな人ならいざ知らず、正直言って見飽きてしまうの。だってどれも基本的に同じなんだもん。茶色の家とまわりの緑の木立。家の形はもちろん一つ一つ細部は違うけどそう大きくは違わない、木立も緑だったり梅が咲いていたりはするけど、印象としてはワンパターン。失礼ながら、描いていて飽きなかったのかなあ、なんて思ってしまった。
もちろん、それぞれの絵はどれもとても素敵で、日本人ならなんだか郷愁を覚えるようなものなんだけど。
4,5枚ならともかく、最後の方はもうあまりじっくり見る気も失せてしまって、流してしまいました。ごめんなさい。


ところどころにあった、若い頃のヨーロッパの風景のスケッチ画が息抜きによかったです。こういう絵も描けたのに、民家一辺倒になったのは、何か理由があったのかしら。

なお、この展覧会は22日で終わってしまいましたが、世田谷の向井潤吉アトリエ館は、4月27日にリニューアルオープンだそうです。