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御名残三月大歌舞伎・第三部 [舞台]

3月22日

いよいよ後40日となった歌舞伎座。休日と言うこともあって超満員。
お食事時間がいつもの幕間より遅いので(と言っても、普段の自分の夕食時間くらいなんだけど)、開幕前に歌舞伎座名物「めで鯛焼き」を買おうと思っていたら、すごい行列!あっさり諦めて2階の売店へ行って、どら焼きを買いました(笑)。

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菅原伝授手習鑑
一、道明寺(どうみょうじ)
菅丞相  仁左衛門               
覚寿  玉三郎              
奴宅内  錦之助              
苅屋姫  孝太郎           
贋迎い弥藤次  市 蔵             
宿禰太郎  彌十郎             
土師兵衛  歌 六             
立田の前  秀太郎            
判官代輝国  我 當

十三代目仁左衛門と、十四代目守田勘弥の追善狂言として上演。十三代目さんの晩年の舞台は間に合って何度か見ているが、勘弥さんは見たことがない。なにしろ三十七回忌ですから。2階のロビーには懐かしの写真や縁の品を展示してあって、写真を見ると典型的な二枚目から立ち役、老け役と幅の広かった方のよう。昨年亡くなった又五郎さんなんかもそうだが、昔の役者は守備範囲の広い人が多かったように思う。近頃は兼ねる役者さえ少なくなってきてるもんね。
考えてみると、由緒ある守田姓を名乗る役者もいまいないのもちょっと寂しい。いまさら玉三郎も継がないだろうし。

勘弥の養子である玉三郎が、覚寿に初役で挑戦。老女役は「ぢいさんばあさん」のるんでやっているので初見ではないが、玉三郎もいよいよこういう役をやる歳になってきたのかなあ、といささかの感慨はある。
さすがに気品のある、武家の後室としての気概のある毅然とした様子があり立派。殺された立田の遺体がくわえた布を見て、太郎が犯人と気づくところが上手い。そして娘の仇を討つ気丈さと、娘を失い、甥と別れる辛さも見せて胸を打つ。
ただ、老女というのを強調して、階段の上り下りなどの不自由さを意識しすぎているように見えて、かえって目についてうるさい気がしてしまった。若い人が年寄り役をやる難しさだろうが。

余談だが、玉三郎の発声や台詞廻しが、何となく吉之丞に似ている感じがして面白かった。まさか吉之丞に習ったはずはないが……。

仁左衛門の菅丞相はもう何度目だろうか。さすがにしっくりと身に付いていて、気品あふれ、清潔な人柄が黙っていても表れ出るよう。終盤の、別れを惜しみ、しかし悲しみを押し殺して、苅屋姫と目を合わせようとせずにしかしやっぱり最後に振り向いてしまう、その切なさに涙を誘われる。花道の引っ込みは無言の中に悲痛さをにじませて、こちらも身じろぎもせずにただただ見入ってしまった。

文楽でこの役を当たり役にしていた玉男さんは、「菅丞相は心では泣いても顔は泣いてはいけない」と仰っていた。それは、菅丞相は覚寿に心配を掛けないよう明るい顔で出立しようと思っているから、と言うことだが、当代仁左衛門は花道を歩みながら泣いていると思う(本当に涙が出ているかどうかはわからないけど)。でもそれでも良い。泣く方が当たり前じゃないの、死んだ後は神様に祭り上げられる菅丞相だけど、ここではまだ人間で父親なんだもの、と納得してしまう仁左衛門の素晴らしい、心の入った菅丞相だった。

孝太郎の苅屋姫に不孝を責め、別れを嘆き悲しむ哀れさと、品のよい美しさがあって上々。
秀太郎の立田の前も手に入った役で、妹をいつくしむ優しさと、夫の悪行を止めようとする必死な様子が見えてさすがに上手い。秀太郎のこういう武家女房の役、好きだなあ。忠臣蔵のお石とかね。

彌十郎の宿禰太郎が頭の悪そうな乱暴者と言った風情が良く出た。それにしてもいつも思うが、なんでこんなのが立田の婿になってるんだろう?
歌六の土師兵衛はきっちりとやっているが、どうもこの人は悪人という感じが薄い気がするなあ。
錦之助の水奴はニンじゃないのに気の毒。
我當の輝国がさすがに凛々しい風情で場を締めた。

文珠菩薩花石橋
二、石橋(しゃっきょう)
樵人実は獅子の精  富十郎         
童子実は文珠菩薩  鷹之資               
男某  松 緑              
修験者  錦之助             
寂昭法師  幸四郎

「石橋」ものはたくさんあるが、これは富十郎親子にあてて作られた新作らしい。詞章に矢車とか入っていたし。
確か鷹之資の初御目見得も「石橋」の文殊菩薩じゃなかったっけ。立ってるだけが精一杯だったあの時からもう何年だろう。すっかり大きくなって、この舞台でもしっかりと踊れるようになっていて、観客としても感慨深い。
富十郎もそれほど激しい動きはないが、元気な姿を見せてくれてうれしい。後シテで獅子の精となってもさすがに毛振りはしなかったけど。
 
間狂言では松緑と錦之助が滑稽さを見せて上々。
幸四郎が寂昭法師で付き合う。そう言えば今月は幸四郎は脇役ばっかりであまり見せ場がなく気の毒。
  

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