11月23日 山種美術館
http://www.yamatane-museum.or.jp/index.html

この秋に移転して新装オープンとなった山種美術館に行って来た。実を言うと、前のところには行ったことがなかったのだけど。
新しい場所は広尾。恵比寿駅から歩いて10分ほど。
恵比寿にはガーデンプレイスの方には行ったことがあるけど、こっちは初めて来た。なんだか高級そうなマンションとかが並ぶ地域。美術館でもなければ一生縁のなさそうなところだなあ。

新美術館は新しいビルの1階と地下1階部分。展示スペースは地下にあるが、思ったよりは狭い。

1階のエントランスにある壁画がなんか見たことがあるような、と思ったら加山又造の作品。今年の回顧展で同じシリーズだろうか、よく似た絵を見ていた。


さて、展覧会は速水御舟展。あまりよく知らなかったのだが、教育テレビの「日曜美術館」などでも取り上げられていた、大正から昭和初期にかけて活躍した日本画家(1894-1935)。若い頃から横山大観に賞賛されるなど天才肌で、しかし常に革新的で作風を変えていった様子が、ほぼ時系列に並べられた展示作品からもよくわかる。



代表作といわれる「炎舞」(1925)。まるで仏画の火炎を思わせる炎に引きつけられてくる蛾の乱舞。細密な描写を追求した時代の作で、蛾の羽根の模様などそれは細かく描いてある。ほの暗い炎と背景の闇と相俟って、ちょっと不気味な感じ。蛾が苦手なので、絵とは言えあまりしげしげ見る気になれず、早々に退散する(苦笑)。重要文化財なのに、ごめんなさい。


同じく重要文化財の「名樹散椿」。こちらは琳派風の作品。京都の地蔵院にあった五色八重散り椿という名木を描いた作。屏風絵なので大きくてインパクトが強い。金地と色とりどりの花が琳派らしい華やかな美しさだが、背景の金箔の色味を抑えてあるので派手派手しくはない。

でも私としては、小ぶりな絵の方が好みだった。大きい絵はなんだかちょっとのっぺりした感じだったのに比べ、小さい絵の方は繊細で優しい雰囲気。


「白梅」(1929)
「紅梅」と対になった作品。冴え冴えとした三日月と早咲きの梅の細い枝に冷たい早春の空気まで伝わるよう。


「桃花」(1923)
雛祭りに飾りたい(笑)。愛らしさ溢れる絵。


「秋茄子」(1934)
墨の濃淡にほんの少し花と虫の色が効いている。

30代半ばに大観らとローマ日本美術展覧会美術使節として渡欧。帰国後、これまであまり描かなかった人物画に取り組むなど新しい挑戦を始めようとした矢先に病気で急死してしまう。40歳の若さとは本人もさぞ無念だったろうし、日本の美術界にも損失だったに違いない。今はそれほど知名度があるとは思えないが、長生きしていたらもっと一般にも知られていただろうに、もったいない。

この展覧会の会期は11月29日まで。開館記念として午後7時まで開館。