10月5日
新国立美術館
http://www.habsburgs.jp/index.html

平日だが、そこそこ混んでいました。

「THE ハプスブルク」展って、よく考えれば変な名称。なんで"THE”をつけるんだか…。最近こういうわけのよく解らない名題の付いたのが多くて気持ち悪い。

それはともかく、これは
「日本とオーストリア・ハンガリー二重帝国(当時)が国交を結んで140年の節目にあたる今年、ウィーン美術史美術館(オーストリア)とブダペスト国立西洋美術館(ハンガリー)の所蔵品からハプスブルク家ゆかりの名品を核に選りすぐり、絵画の至宝75点に華麗な工芸品を加えた計約120点を展覧する大規模な美術展を開催いたします。」(チラシより)
との趣旨で、絶大な権力と領土を持ってヨーロッパに君臨したハプスブルク帝国の美術財産の一部を展示するもの。

なにしろ、「ベラスケスもデューラーもルーベンスも、わが家の宮廷画家でした」(同じくチラシより)なのである。
なるほど宣伝に偽りはなく、イタリア、スペイン、フランドル、ドイツ、と各地域の、ルネッサンスから18世紀くらいまでの時代を代表する画家の絵を集めてあって壮観である。

展示はまずハプスブルク家の人々の肖像画から。有名どころではマリア・テレジア、ミュージカルでおなじみになったエリザベート皇后なども。でも不思議と有名画家の絵はない。スペイン王室ならベラスケスやゴヤが肖像画を描いているんだけれど、オーストリアではあまり肖像画に頓着しなかったのか。


メラー「11歳の女帝マリア・テレジア」
中ではこのマリア・テレジアの幼いときの肖像の初々しさが目を引く。11才の時のものだが、聡明そうで大人びた様子。後年の恰幅の良い肖像画は歴史の本などで見た覚えがあるが、これを見ると若いときはなかなかの美人だったのでは。なにしろマリー・アントワネットのお母さんだもんね。

お次はイタリア絵画。ティツィアーノやジョルダーノの佳品が並ぶ。

珍しくはラファエッロの「若い男の肖像」という世俗画も。聖母子像のような宗教画じゃないラファエッロを観る機会って少ないと思う。

次がドイツ絵画になるんだけど、とたんに画風が暗いというか重いというかになるのは不思議。国民性なのか風土なのか、光の具合なのか。デューラーとかね、何とも陰気なのよ~(苦笑)。


クラナッハ(父)「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」
私が勝手に「狐目のクラナッハ」と読んでいる画家です。みんな目がちょっとつり上がってるの(笑)。こういう顔のモデルが好きだったのかしら。豪華な衣装(サロメの時代じゃなく、描かれた時代のおそらく流行の)に身を包んで、首を持って艶然と微笑むサロメ。怖いですねえ。

スペインに行くと、おなじみのベラスケス、エル・グレコ、ムリーリョなど。ゴヤも一枚。


上のチラシがベラスケス「皇太子フェリペ・プロスペロ」
有名な王女マルガリータの弟君。女の子のような服装なので、てっきりマルガリータの小さいときかと思った。これは2才くらいだが、病弱で4つの時に亡くなってしまったそう。どんなに高貴な家に生まれても、死神には逆らえないと言うことか。


ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」
ムリーリョやスルバランの絵はちょっと甘すぎる気がするのだが、これもそういう一枚。くりくり巻き毛のヨハネと子羊の取り合わせが何とも可愛い。

最後がオランダ・フランドル。ルーベンスやファンダイク、レンブラントも。


レンブラント「読書する画家の息子ティトゥス・ファン・レイン」
レンブラントらしい抑えた色調の中に息子への愛情がにじみ出るような、地味ながらしみじみとした暖かさのある絵。

ウィーン美術史美術館には世界に誇るブリュ-ゲルのコレクションがあるはずだが、あれはさすがに来ていない。残念。

フランス絵画が全くないのは、敵のブルボン王家の本拠地だから?コレクションにはあるだろうけど、今回はあえて外したのかも。

その他、工芸品などと共に、時の明治天皇が贈った画帳と蒔絵の棚なども展示。初めての里帰りだとか。蒔絵の品は手は込んでいるがパッと目には地味で、これを見たフランツ・ヨーゼフ1世などの目にはどう映っただろう。どうせならもっと華やかな琳派風のものの方が、外国の人には喜ばれたんじゃないかなあ、などと思ってしまった。

売店にはデーメルのお菓子や、アウガルテンの食器などウィーン縁の品や、ハンガリーの老舗カフェ、 ジェルボーのお菓子なども。どれもお高いので買いませんでしたが。
さらに何故か漫画家の池田理代子書き下ろしのポスト・カードも。そういえばこの前の「トリノ・エジプト展」では山岸涼子のポスト・カードがあったっけ。こういうの、流行なんですかね。全然意味ないと思うんだけど。