9月21日
大丸ミュージアム
http://www.daimaru.co.jp/museum/tokyo/index.html
祝日の夕方、混雑しているかと思ったが拍子抜けするくらい空いていた。大行列のゴーギャン展に行く勇気のない方におすすめ(笑)。

これはコルシカ島にあるフェッシュ美術館コレクション展で、この美術館はナポレオン1世の叔父ジョゼフ・フェッシュ枢機卿(1763-1839年)個人のコレクションを基礎として設立されたのだそう。日本ではあまり知られていないがイタリア絵画コレクションだけでも、フランス国内ではルーブル美術館に次ぐ作品数となるのだそうです。

とは言っても、正直言ってそれほど有名な画家の絵は来ていない。ラファエロもダ・ヴィンチもミケランジェロも、フィリッポ・リッピもジョルジョーネもない。これでイタリア美術展と言っていいのか、と言うくらい地味な内容。
それでも行く価値があるのは、このボッティチェッリの絵が観られるから。


「聖母子と天使」(1467~70)
ボッティチェッリが師匠の工房から独り立ちした頃の、つまりまだ若い頃の作品だが、ボッティチェッリの特色はもう既にはっきり出ている。少女のようなあどけない聖母の顔、美少年の天使、柔らかな色調、聖母の頭にかかる透明なレースや天使と幼子イエスの頭の光輪の繊細さ。どれも溜息が出るような美しさ。これは生で直に観ないと全然判らない美しさです。
それからちょっと面白いと思ったのは、天使の羽根が白じゃなくてまるで鷹か何かのような茶色い羽根だったこと。それと背景を飾るのがクリスマスの装飾みたいに見えること。こういうことも、直接大きな絵で観ないと気がつかない物。


もう一つ、掘り出し物はこのベッリーニ「聖母子」(1460~80頃)
ボッティチェッリとそんなに時代的には変わらない。でもずっと素朴で自然な表情がとても印象的。中世絵画の硬い表情とは大違い。マリア様なんて、ご近所の若い奥さんみたいに身近で手に届きそうな親密さがある。ボッティチェッリのような華麗さはないけれど、心暖まる聖母子像。

展覧会後半はナポレオンとその一族に因む絵や彫刻など。美術じゃなく歴史の本なんかで見たことがあるような肖像画などが並ぶ。珍しいのはナポレオンのデスマスク。怖いけど、高い鼻がやっぱりなかなか好男子だったのかと思わせる。でもまあ、この辺の展示は、ナポレオンに興味がない人にはつまらないかも。

それでもボッティチェッリの絵が日本に来るのは本当に珍しいので、ルネサンス絵画好きなら見逃せない機会。
高速道路で渋滞に巻き込まれるよりは、こういうところでゆっくり休日を過ごすのも良いのでは。
9月28日まで。