7月20日
出光美術館
http://www.idemitsu.co.jp/museum/index.html


休日の午後に行ったが、それほどの混雑ではなかった。
出光美術館がルオー作品を収集していることは聞いていたが、これほどのコレクションを持っているとは知らなかった。
確か松下電工ミュージアムにもルオーが多くあるようだが、キリスト教に馴染みの薄い日本でルオーの人気があるのは、不思議と言えば不思議な感じもする。
今回は、ルオー没後50年を記念しての、収蔵作品からの回顧展。
初期から晩年までほとんど網羅する充実した内容。

中でも目玉としては、連作銅版画「ミセレーレ」と、同じく連作油彩画「受難(パッション)」の展示(一部展示替えあり)。
「ミセレーレ」の方は、第一次世界大戦後、その災禍を目にしたルオーの怒りと鎮魂の祈りがこめられたような作品群で、見ていて同じ版画のゴヤの「戦争の惨禍」を思い出した。ゴヤほどストレートではないけれど。

一方「受難(パッション)」は題名からも判るとおり、聖書の中の場面から取られている。
版画ならともかく、これだけの油絵のオリジナルシリーズがフランスではなく日本にあるというのは驚き。
キリスト教徒ではないので、物語が全部理解できるわけではないが、一見まるで描きなぐったような絵の中にルオーの深い信仰が見えるような気がして、心を打たれた。

ルオーの絵の中には、主題はなんであれ、いつも「悲しみ」が見えるような気がする。
宗教画と並んで生涯描き続けたサーカスを取り上げたものもそう。でもその悲しみの中にも、例えば道化師への深い愛情も感じられる。

「正面を向いた道化師」(1939年)
宗教画はやはりちょっと理解しにくいので、こういう絵の方が素直に好き。

ルオーが若い頃ステンドグラスの修行をしていたのは有名で、独特の黒い描線はその影響と言われているが、その中のきらめくような色使いが本当にステンドグラスのようで美しい。
晩年の絵など、絵の具を幾重にも塗り重ねて、画面が盛り上がっているほど。だがそのちょっと乱暴なマティエールにもかかわらず、絵には透明感さえ感じられるのがルオーの面白さだと思う。