3月21日(金) サントリーホール

指揮: リッカルド・シャイー
ヴァイオリン: 五嶋みどり
オーケストラ: ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

プログラム
メンデルスゾーン: 序曲「ルイ・ブラス」op.95
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
                   (ヴァイオリン: 五嶋みどり)
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

シャイーと言えばコンセルト・ヘボウの印象が強く、いつの間にライプツィヒに行ってたんだろう、というくらいそういう情報に疎くなってしまっている。

ゲヴァントハウス管は言わずと知れた世界最古のオケ。メンデルスゾーンが指揮をしたとか、そういう伝統のあるオケ。私の中ではいかにもドイツらしいどっしりとしたオケの印象だった。

序曲の後、待望の五嶋みどりのソロでメンデルスゾーンの協奏曲。これが聴きたくてチケット買ったようなもの。
いや、これが素晴らしかった。期待を裏切らない名演。ただ美しい音とか、技術的に優れているとか言う次元ではない。神々しいほどに美しく気高い。張りつめた、一音たりともないがしろにしない、それでいて優美さも溢れる演奏。冒頭の耳にたこができるくらい有名なあのメロディがこれほど緊張感と情感を持って響いたのを聞いたことはない。そして第2楽章の歌心あふれる流麗さから第3楽章の快活さへのもって行き方の自然で流れる音楽の素晴らしさ。もう泣きそうだった。

みどりちゃんはいつも、この曲ってこういう音楽だったんだ!と思わせてくれる。一つ一つの音を確信を持って弾いている。曲へのアプローチの深さ、音楽に対する真摯さに感動する。メンコン、なんて安っぽく呼んじゃいけないんだ、と思えた今日の演奏。聴けて良かった。

前半でもう大満足だったが、後半はもっとすごかった。ショスタコの5番。
ゲヴァントハウス管は、あんなにみっしり厚い音なのに弦が一糸乱れずどころか合奏に聞こえないレベル。凄すぎる!弦の音は分厚いのになぜか透明感のある美音。これって矛盾するでしょう、普通。でもそう聞こえる。そして管楽器群ももちろんしっかりと豊か。ティンパニーのメリハリの効いた音が締める。
シャイーの棒のもと、タコ5だから盛り上がるのは当然だけどただやたらに熱いんじゃない、理知的で緻密で音の密度がやたらに高いので物理的に圧倒される思い。こんな風圧感じるタコ初めて。

これがシャイーの手腕によるものだとすれば、シャイーはアバド亡き今、黄金時代に入ったのかもしれない、とさえ思える。

ショスタコの後、アンコールはなかったが、もう十分満腹という感じ。う~ん、凄いもの聴けたなあ、と充実感いっぱいだった。たまにオケ聴きに行ってこういう大当たりに出会ってしまうとやっぱりコンサート通いは止められない。

しかし、ゲヴァントハウス管が、イタリア人の指揮者と、ショスタコを日本で演奏するなんて、30年前は想像できなかった。ショスタコどころか、チャイコでも日本の招聘元がうんと言わなかったと思うよ。時代は変わる。