7月8日(日) 東京国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/Honkan/kikkawa_reika/index.html

吉川霊華という画家をご存じですか?

私は知りませんでした。この展覧会のチラシを手に取るまでは。
チラシを見て、何となく綺麗そうな絵だったので行ってみようかな、と思って見に行きましたら、まあビックリするくらい素敵な絵ばっかりで。

吉川霊華(1875-1929)は明治から昭和初期に活躍した日本画家で、「鏑木清方(かぶらき きよかた) や平福百穂(ひらふく ひゃくすい) らと結成した金鈴社(きんれいしゃ) という舞台を得て画壇にその名が知られるようになっても、帝展などの大きな展覧会からは距離を置き、孤高の芸術を拓きました。」(チラシより)
若い頃は画業よりもむしろ自分の学識を広げることに力を入れたそうで、その成果はその後の絵のテーマに主に日本と中国の古典を選んで取り組んだところにも現れているよう。

画風は、まさに清冽。繊細にして優美。
特徴はとにかく線が綺麗なこと。筆で描いてるのだろうけど、まるでペンで描いたように細い線を多用して、それが流れるように画面をサラサラと埋めている。そしてその線がとても生き生きしていて、衣服は風に軽やかになびき、雲は湧き、波がうねる。


《藐姑射之処子(はこやのしょし)》
1918 年(大正7 年)
彩色は必要最小限。一見水墨画かと思うようなのも。


《離騒(りそう)》(部分) チラシの絵も
1926 年(大正15) 個人蔵
背景の波の線、見えますか?


《美人弾琴(びじんだんきん)》
1904 年(明治37 年) 個人蔵
抱一を思わせるような清楚な美人画。品があって本当にきれい。


《南極寿星》
1925年(大正14)個人蔵
昔の経典によくある、絹地に金泥で書いたもの。金泥は墨と違って粘りがあるので細い線を描くのはずっと難しいのだとか。それでこんな細かい絵を描くというのだから、霊華の腕前がわかるというもの。

こんなすごい画家がいたなんて、そして埋もれてしまっているなんて、本当にもったいない。心が洗われるような思いのする展覧会。
私が行ったも日曜なのにがらがらだったけど、もっとたくさんの人に観ていただきたい。
7月29日(日)まで。