2月20日(月) Bunkamuraザ・ミュージアム

日付が遡りますが、文楽の千秋楽に行く前に見てきました。
ラブレター展、と言う名称はちょっとどうかという気はしますが、フェルメールと、同時代のオランダ、フランドルの画家の絵を手紙をモチーフに集めた展覧会、と言うところ。
あ、と言っても別に手紙の絵ばっかりではないです。ではないけど、手紙以外にも、本とか、読み書きとかにまつわる絵がいくつかあったのが興味深かったです。
17世紀、市民が台頭してきて、印刷の普及などもあり、読み書きできる層が広がってきた時代。手紙がコミュニケーションのツールとしてもっとも大事だった時代(それはつい最近までだったのだけれど、遠い昔のよう)を思わせる絵の数々。

中心はもちろんフェルメールで、一度に3枚見られるのは珍しい。


手紙を読む青衣の女
解説によれば、壁の地図も手前の座る人のいない椅子も、愛する人の不在を暗示するという。すれば手紙は遠くにいる夫か恋人からの手紙であろう。一心不乱に手紙を読む女性の横顔が美しく、穏やかな光に映し出される室内の風景が静謐。


手紙を書く女
上の絵が読む方ならこちらは書く方。でもその手を止めて真っ直ぐこちらを見ている。フェルメールの絵では珍しい方ではないかしら、大抵横顔だったり視線をそらしていたり、のような気がするけど。
裕福らしい豪華な服装の描写も綺麗。全体的に暗めな中に顔と衣装だけが浮かび上がる。表情は穏やかに微笑んで愛らしい。やはり書いているのはラブレターだろうか。


手紙を書く女と召使い
上の二作よりさらにドラマチック。一心に手紙を書く女。床には投げ捨てられた手紙。恋人からの手紙に腹を立てて破り捨て、返事を書こうとしているのだろうか。横には女が書き終わるのを待つ召使いが手持ち無沙汰に外を見ている。解説には女が手紙を書いているのは「彼女が心を鎮めようとしているからか、あるいは愛人と和解しようとしているからであろう。」とあるけれど、さてどうだろう。

フェルメールの絵はどれも日常の一コマを切り取って、一瞬のドラマを鮮やかに見せる。一見何気ない情景に、様々な暗示をしのばせ物語を紡いでいる。なかなかに手強い画家である。

フェルメールに限らずこの時代の絵は、置かれた小道具が読み解く鍵になるものが多くて、解説を読まないとよくわからないことも多い。それにまた教訓めいた主題が隠されていたりするとお手上げ。その辺がこの時代の絵画が今はあんまり人気がない一因かも。でもそういうことを抜きにして見ても写実性に優れ手見応えのある絵は多い。
この展覧会は数は少ないので、空いているとそう時間がかからずに見終わってしまうが、解説を丁寧に読みながら見ると面白いかも。(実は私は解説読むのが苦手だが)自分が絵から受けた印象と解説のストーリーが逆だったりすると、ええ~、とかなってそれはまたそれで面白かったです、はい。