5月9日(月)
今月は観劇スケジュールが立て込んでいるので、この日は昼夜通しで観劇。昼の部は2階右袖、夜の部は3階正面にしてみた。3階席の方が足元が楽だし、舞台端が見切れないので良いかも。
通し狂言
一、怪談 牡丹燈籠(ぼたんどうろう)
大川の船の場より 幸手堤の場まで
伴蔵/萩原新三郎 市川 染五郎
お峰/お露 中村 七之助
宮野辺源次郎 中村 亀 鶴
お国 上村 吉 弥
酌婦お絹 澤村 宗之助
女中お竹/酌婦お梅 坂東 新 悟
馬子久蔵 片岡 亀 蔵
飯島平左衛門 市川 門之助
乳母お米 市村 萬次郎
船頭/三遊亭円朝 中村 勘太郎
(ちょっとネタバレあり)
仁左衛門と玉三郎のゴールデンコンビの当たり役に、若い染七が挑戦と言ったところ。その上、新三郎とお露も兼ねて、大奮闘。
二人ともよく勉強していて、特に七之助のお峰は玉三郎を彷彿とさせる口跡。前ににざ玉がやったときはお露をやっていて、生気の乏しい感じがやけに似合っていたけれど、今回はお峰が断然光っていた。貧乏だけど仲良く暮らしていた夫婦が、ふと魔が差してしまい、大金は手に入れたけれど、、、という女の心の迷いや悲しさ、強さと弱さがあり、また馬子相手や伴蔵との夫婦喧嘩などコミカルな場面も軽快にこなして上々。こんな役をこなせるようになったとは、七ちゃん、伸び盛りだねえ。
染五郎の方も危なげない出来で前半の気の良い下男といった様子から、後半、旦那ぶって見せながらも過去に怯える小心さと、保身のために女房を手にかける冷酷さの中に混じる悔恨と愛惜のないまぜになった複雑さを出して及第点。後半にもう少し尊大さなどが見えれば、お峰殺しへ向かう心の変化がわかりやすいか。
勘太郎の円朝は、もうほんとに勘三郎そっくり。声はもちろん、手つきや羽織を脱ぐ仕草などもお父さんの、ひいては本職の落語家のを勉強したんだろうなあ。円朝は明治の落語家なので頭はざん切り。メークした顔がちょっと三枝師匠にも似て見えて笑ってしまった。だけど、この役、この芝居に必要なのかな?とはいつも思うんですけど。
亀鶴の源次郎が根っからの悪人ではないのに、転がり落ちていく男を凄味さえ感じさせて見せた。
吉弥のお国は色気があってきれいだが亀鶴との釣り合いはちょっと辛い。とは言え、運に見放されても源次郎を見捨てない女の情の深さを見せ、この二人も根っからの悪人というわけでもないのよね、と言う風に見えたが故に、結局因果応報というか悪霊に憑かれたかのように差し違えて死んでいくのが哀れだった。
お露の乳母は萬次郎。乳母と言えば吉之丞、と誰もが認めるくらいだが(笑)、萬次郎のはやや滑稽味が強い幽霊。吉之丞のは淡々と無表情で「お嬢様~」とやるのがかえって可笑しくもあり怖くもあり、だが萬次郎のはこの人らしくややオーバーアクション気味で笑えた。
最後の殺しの場が、お峰を手にかけた伴蔵がお峰(の霊?)に川に引きずり込まれて、結局二人とも死んでしまうという終わり方。哀れだけれど、納得のいく幕切れ。
二、高坏(たかつき)
次郎冠者 中村 勘太郎
高足売 中村 亀 鶴
太郎冠者 澤村 宗之助
大名某 片岡 亀 蔵
なんだか今月の勘太郎には、こんなに勘三郎のDNA が入ってるんだねえ~、としきりに感じさせられた。この高坏もお父さんの得意な演目。踊りではすでに定評ある勘太郎、これも見る前からきっと良いものを見せてくれるだろうと期待したが、その通り。次郎冠者らしい愛嬌やおかしみがあり、もちろん踊りは達者。軽快で、リズム感が良くて、ほんとに楽しい!さすがにまだ勘三郎のような洒脱さには欠けるが、充分楽しませてもらった。ほんとにこの人は先が楽しみだ。
亀鶴の高足売りは、やや生真面目。もう少し三枚目風なおかしみ、柔らかさがほしいところ。
亀蔵が珍しい年寄り役。このメンツの中ではさすがに風格のある大名を剽軽さも交えて見せた。
宗之助も行儀良い出来。
気持ちよく笑えて楽しめる、打ち出しにぴったりな舞台だった。
<おまけ>
昼と夜の入れ替え時間、劇場にこもってるのもなんなので外へ出て、近くの喫茶店に。
「とうとう」というお店で、昼と夜は定食など食事ができ、間の時間は喫茶店という風でしたが、コーヒー紅茶ももちろんあるけど、上等な日本茶に手作りの和菓子がいただけます。私がいただいたのはイチゴのきんとん!確かにイチゴの香りと味がほんのりしておいしかったですよ。明治座近くで一服したい方、お薦めです。
今月は観劇スケジュールが立て込んでいるので、この日は昼夜通しで観劇。昼の部は2階右袖、夜の部は3階正面にしてみた。3階席の方が足元が楽だし、舞台端が見切れないので良いかも。
通し狂言
一、怪談 牡丹燈籠(ぼたんどうろう)
大川の船の場より 幸手堤の場まで
伴蔵/萩原新三郎 市川 染五郎
お峰/お露 中村 七之助
宮野辺源次郎 中村 亀 鶴
お国 上村 吉 弥
酌婦お絹 澤村 宗之助
女中お竹/酌婦お梅 坂東 新 悟
馬子久蔵 片岡 亀 蔵
飯島平左衛門 市川 門之助
乳母お米 市村 萬次郎
船頭/三遊亭円朝 中村 勘太郎
(ちょっとネタバレあり)
仁左衛門と玉三郎のゴールデンコンビの当たり役に、若い染七が挑戦と言ったところ。その上、新三郎とお露も兼ねて、大奮闘。
二人ともよく勉強していて、特に七之助のお峰は玉三郎を彷彿とさせる口跡。前ににざ玉がやったときはお露をやっていて、生気の乏しい感じがやけに似合っていたけれど、今回はお峰が断然光っていた。貧乏だけど仲良く暮らしていた夫婦が、ふと魔が差してしまい、大金は手に入れたけれど、、、という女の心の迷いや悲しさ、強さと弱さがあり、また馬子相手や伴蔵との夫婦喧嘩などコミカルな場面も軽快にこなして上々。こんな役をこなせるようになったとは、七ちゃん、伸び盛りだねえ。
染五郎の方も危なげない出来で前半の気の良い下男といった様子から、後半、旦那ぶって見せながらも過去に怯える小心さと、保身のために女房を手にかける冷酷さの中に混じる悔恨と愛惜のないまぜになった複雑さを出して及第点。後半にもう少し尊大さなどが見えれば、お峰殺しへ向かう心の変化がわかりやすいか。
勘太郎の円朝は、もうほんとに勘三郎そっくり。声はもちろん、手つきや羽織を脱ぐ仕草などもお父さんの、ひいては本職の落語家のを勉強したんだろうなあ。円朝は明治の落語家なので頭はざん切り。メークした顔がちょっと三枝師匠にも似て見えて笑ってしまった。だけど、この役、この芝居に必要なのかな?とはいつも思うんですけど。
亀鶴の源次郎が根っからの悪人ではないのに、転がり落ちていく男を凄味さえ感じさせて見せた。
吉弥のお国は色気があってきれいだが亀鶴との釣り合いはちょっと辛い。とは言え、運に見放されても源次郎を見捨てない女の情の深さを見せ、この二人も根っからの悪人というわけでもないのよね、と言う風に見えたが故に、結局因果応報というか悪霊に憑かれたかのように差し違えて死んでいくのが哀れだった。
お露の乳母は萬次郎。乳母と言えば吉之丞、と誰もが認めるくらいだが(笑)、萬次郎のはやや滑稽味が強い幽霊。吉之丞のは淡々と無表情で「お嬢様~」とやるのがかえって可笑しくもあり怖くもあり、だが萬次郎のはこの人らしくややオーバーアクション気味で笑えた。
最後の殺しの場が、お峰を手にかけた伴蔵がお峰(の霊?)に川に引きずり込まれて、結局二人とも死んでしまうという終わり方。哀れだけれど、納得のいく幕切れ。
二、高坏(たかつき)
次郎冠者 中村 勘太郎
高足売 中村 亀 鶴
太郎冠者 澤村 宗之助
大名某 片岡 亀 蔵
なんだか今月の勘太郎には、こんなに勘三郎のDNA が入ってるんだねえ~、としきりに感じさせられた。この高坏もお父さんの得意な演目。踊りではすでに定評ある勘太郎、これも見る前からきっと良いものを見せてくれるだろうと期待したが、その通り。次郎冠者らしい愛嬌やおかしみがあり、もちろん踊りは達者。軽快で、リズム感が良くて、ほんとに楽しい!さすがにまだ勘三郎のような洒脱さには欠けるが、充分楽しませてもらった。ほんとにこの人は先が楽しみだ。
亀鶴の高足売りは、やや生真面目。もう少し三枚目風なおかしみ、柔らかさがほしいところ。
亀蔵が珍しい年寄り役。このメンツの中ではさすがに風格のある大名を剽軽さも交えて見せた。
宗之助も行儀良い出来。
気持ちよく笑えて楽しめる、打ち出しにぴったりな舞台だった。
<おまけ>
昼と夜の入れ替え時間、劇場にこもってるのもなんなので外へ出て、近くの喫茶店に。
「とうとう」というお店で、昼と夜は定食など食事ができ、間の時間は喫茶店という風でしたが、コーヒー紅茶ももちろんあるけど、上等な日本茶に手作りの和菓子がいただけます。私がいただいたのはイチゴのきんとん!確かにイチゴの香りと味がほんのりしておいしかったですよ。明治座近くで一服したい方、お薦めです。