8月1日(日) 

ポンピドー・センター所蔵作品展
シャガール―ロシア・アヴァンギャルドとの出会い~交錯する夢と前衛~
http://www.fujitv.co.jp/events/chagall/index.html
東京藝術大学大学美術館

シャガールはピカソと並んで20世紀を代表する画家の一人。日本でもとても人気があって、何年かに一度は展覧会をやっているような気がする。
なので下手をすると、またシャガール展か~、ということにもなりかねない。
それで、かどうか知らないが、今回は、若い頃のシャガールとも接点のあるロシア・アヴァンギャルドの作品と並べてみるという趣向。

紹介されているのはゴンチャローワとラリオーノフの夫妻に、マレーヴィチ、カンディンスキーなど。
実のところ、カンディンスキー以外はあまりなじみがない。


ゴンチャーロワ「収穫物を運ぶ女たち」
ゴンチャーロワの作品って、昔見た民話とか昔話の本の挿絵を思い出させる。ほら、「大きなかぶ」とか。ネオ・プリミティヴィスムと呼ばれるのだそうだが、そんな難しげな絵じゃなくて、素朴な感じ。


シャガール「ロシアとロバとその他のものに」
こちらは同じ頃にシャガールが描いた、ロシアへの郷愁に満ちた絵とのこと。フォーヴィズムやキュビズムの影響を受けている。
シャガールの絵って、時々こういう「怖い絵」があるよね。首が180℃回ってたり、人間より大きな鶏がいたり。


カンディンスキー「アフティルカ 赤い教会の風景」
まだ抽象画を描き始める前。黒い描線がはっきりしていて、ルオーの絵を思い起こさせる。色がとてもきれいでステンドグラスみたい。


シャガール「彼女を巡って」
さてしかし、1920年代くらいから結局シャガールは他の画家たちとは離れて独自の道を歩み出す。
これは45年の作。41年にパリからアメリカに亡命し、そこで最初の夫人ベラを亡くして悲嘆に暮れていた頃の、ベラへのオマージュ。


「日曜日」
52年頃、再婚して幸せを取り戻した頃の絵。色にも幸福感が戻ってる。

そして今展覧会の見物は、64年にアメリカのメトロポリタン歌劇場がこけら落とし公演「魔笛」の舞台装置と衣装をシャガールに委嘱した際の、それらの原画である。
パリ・オペラ座の天井画をシャガールが描いているのは知っていたが、メトロポリタンとも縁があったとは今回初めて知った。
モーツァルトの「魔笛」のお伽噺のような世界はシャガールの絵とマッチして、現実離れした不思議な情景を作り出していた。


「夜の女王」


「怪物」
怪物と呼ぶにはあまりにラヴリー(笑)。

しかしこういう原画から実際に衣装や装置を作り出すパタンナーや大道具の人は大変だっただろうなあ。
初演時の写真が白黒しか展示されていなかったのが残念。この時の出演者が、ニコライ・ゲッダにヘルマン・プライ、ルチア・ポップとそうそうたる顔ぶれ。このプロダクションの映像は残っていないのかしら。一度見てみたいな。

この「魔笛」関連以外のシャガールの油絵は約20点と決して多くはないが、「魔笛」だけでも見る価値はある。
ロシア・アヴァンギャルドの作品とともに、今まであまり知られていないシャガールが見られるなかなか面白い展覧会。