5月25日
森アーツセンターギャラリー
http://www.asahi.com/boston/

宣伝文句は「名画のフルコース」。
古くはレンブラントやベラスケスから、エル・グレコにヴァン・ダイク、コローやマネを経て印象派のモネにドガにゴッホ、そしてマティスやピカソ、と名前を並べただけでも誰でも知ってる巨匠がずらり。

展示は、よくある時代順や国別ではなく、「肖像画」「宗教画」「風景画」と言った風にテーマごとにまとめてあって、例えばレンブラントの大振りな肖像画の近くにマネのモデルとの親密さを感じさせる小ぶりな絵があって、200年の美術界の時間の流れを感じたりする。


レンブラント「ヨハネス・エリソン師」。レンブラントがまだ20代にして人気画家だった頃の力作。夫人の肖像画と対で展示されていた。まだ後年の「レンブラント光線」は見えないが、細部まで目が行き届いた、レンブラントの力量が見える。


マネ「ヴィクトリーヌ・ムーラン」。ムーランはマネのお気に入りのモデルで、代表作「オランピア」や「草上の昼食」にも登場しているとか。そう言えばこの顔には見覚えが。


宗教画ではエル・グレコ「祈る聖ドミニクス」が静謐さで目を引いた。

”描かれた日常生活”のコーナーでは、ドガやルノワール、モネなどが身近な人々を描いた絵など。

中でこれはミレー「馬鈴薯植え」。「種を蒔く人」などと並んでミレーの人気作品。よく見ると後ろの木陰には籠に入って眠る赤ちゃんが。そばのロバが見守っているみたいで優しい。

展示数で多いのは印象派、特にモネ。モネの風景画だけで一部屋を当てて特集的に展示してあった。積み藁、ルーアン大聖堂、蓮と言った有名シリーズからもちろん出品。


モネ「ジヴェルニー近郊のセーヌ川の朝」。他のモネの絵に比べるとぱっと目には色数が少な目だが、その分落ち着いた雰囲気で穏やかな朝の空気が感じられる佳品。実物は空や水面の白いところがもう少しピンクがかった朝焼けの雰囲気。


セザンヌ「池」。同じ水辺でもセザンヌになるとこうなる。人物はただの点景なのかそれとも中心なのか、もうはっきりとわからない。空や草木を映して、よく見ないと水面とはわからない水の表面。
セザンヌの絵って、どうしてか好きなんだなあ。


そしてゴッホ「オーヴェールの家々」。死ぬ年に描かれた絵。でも絵に暗さはなく、タッチは力強い。


静物画では、花の画家として有名なファンタン・ラトゥール「卓上の花と果物」。印象派世代とほとんど同じというのがちょっと信じられないような古典的な絵だが、ラトゥールの花は本当に綺麗で好き。

これだけ揃うと逆にイタリアやドイツの画家が少ないのがかえって目に付いたりするが、「名画のフルコース」という看板に偽りはなし。数は約80点と多くはないのだが、壁埋めの駄作が一枚もない、秀作揃い。満腹になります。