10月20日 東京国立博物館
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比較的空いている、平日の夕方を狙って入館。入場待ちの列はなかったが、それでも中はそこそこ混んでいて人気ぶりがうかがわれる。土日なんてどうなることやら。

天皇陛下御即位20年記念として、御物や正倉院、三の丸尚蔵館など宮内庁が所蔵する名品を、前後期に分けて展示する特別展。
第1期は「永徳、若冲から大観、松園まで」と題して、近世の日本画や工芸品を見せてくれる。


第1室ではのっけから永徳の「唐獅子図屏風」の迫力ある絵に圧倒される。一昨年の「狩野永徳展」でも観たが、これが皇室所蔵とは知らなかったな。今回は面白いことにこれと並べて、永徳の曾孫常信による「唐獅子図屏風」も展示してあり、桃山時代と江戸時代の絵の雰囲気の違いが何となく感じられる。常信の獅子の顔が、なんだか宗達の風神雷神に似ていてちょっと可愛い。

「老松白鳳図」
第1期の目玉はなんと言って若冲の「動植綵絵」全30幅の一括展示。大人気で、列がなかなか先へ進まない。
若冲の代表作ということだが、実物は初めて観た。とにかくこれまでの日本画の常識を覆すような、全面にびっしりと描き込まれた密度の高さに圧倒される。しかも、端っこの花びら一枚おろそかにしない、細密で高い技巧を駆使した絵の連続で、リアルを越えた超リアルとでも言おうか、まあどれもこれも「うへ~」と感心すると言うより呆れるような凄さ(笑)。上の白鳳にしても、羽根の透ける様子が一枚一枚描かれていて実物はそれはそれは細かい。(尾羽の先のハート形がラブリー)。

でも正直言うと、これを30枚じっくり観ていると、目も疲れるし、なんだか息苦しささえ覚えるほど。
次の部屋に行って、応挙や基一の風通しの良い絵を観ると、やれやれという気さえしてしまった(苦笑)。
若冲はそれは凄いと思うし、何度観ても面白いとは思うけど、好きかというとそうでもないなあ。少なくとも自分の部屋に飾りたいとは思わないかも。(そんな部屋ないけど)

明治以降になると、大観や玉堂、松園らの絵とともに工芸品も多い。

大観は大きさの点でも圧倒されるような「朝陽霊峰」が素晴らしい(上図は左双のみ)。後年のもっと簡素化された富士の絵の方が私は好みだけれど、御下命を受けて製作されたと言うこともあってか、力が入っている感じ。

工芸品では並河靖之の七宝の壷や、香川勝廣らの短刀拵えなどが溜息が出るほど美しい。
でもそういった細工の細かい手の込んだ作品が多い中に、河井寛次郎の壷があって、そのすっきりとした造形がかえって目を引いた。大体、民芸派の河井の作品が皇室の所蔵品の中にあるというのもなんだか不似合いで面白い。

全部見終わったのが閉館5分前。まだ入り口は開いていたのでもう一度第1室に戻ってがらがらの部屋で永徳と若冲をざっと再見。さっきは人だかりで見えなかった岩佐又兵衛の「小栗判官絵巻」もなんとか見ることができた。
第2期も楽しみ。でも混雑しそうだな~。