森アーツセンターギャラリー
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浮世絵展は数々あれど、特定の絵師の特集とか、どこかの美術館のコレクション展とかがほとんどで、この展覧会のような描かれたものに注目したというのは珍しい。それも役者とか花魁とかの人物でなく、食べ物だ。

江戸時代というのは、それ以前に比べて食文化が格段に発達した時代で、今私たちが考える「和食」の基本ができあがったのがこの時代と考えていい。すなわち、そば、天ぷら、寿司、鰻、、、。こういった食べ物が上つ方のものでなく、庶民が口にできるものだったから、浮世絵にも描かれた。


「春の虹蜺」歌川国芳 天保7年(1836)
鰻を食べようとする女。


「縞揃女弁慶 松の鮨」歌川国芳
こちらは寿司。こどももほしいとねだるほど。 


「風俗三十二相 むまそう」月岡芳年
天ぷら。

他にも団子などのお菓子や、スイカなど果物も、現在と変わらない。
また、江戸時代は参勤交代や伊勢参りなど旅をする人が増え、各地の名物料理が知られるようになった。


「東海道五十三次 鞠子 名物茶屋」歌川広重
ここの名物はとろろ汁。

そしてこういう浮世絵だけでなく、絵の中に出てくる食べ物を再現した写真やその作り方のパネルも展示してあって、どれを見ても食べたくなってしまう。
江戸時代が身近に感じられて楽しい展覧会だった。