3月13日(日) サントリーホール

世の中が地震でひっくり返ってるときに、コンサートになんか行っていいのか?
と言う気がしないでもない。
でも逆に、こういう時だからこそ、被災していない人間は、普通通りの生活を心がけるべきなんじゃないか、と言う気持ちの方が強い。じゃないと、社会全体が縮こまって経済だって停滞してしまう。

とか何とか理屈はなんとでもつけられるが、要は、聴けるものは聴きたい。ただそれだけのことです。

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)
チョン・ミョンフン(指揮)
チョ・ソンジン(ピアノ)

プログラム
チャイコフスキー : ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23 [ピアノ : チョ・ソンジン]

ドヴォルザーク : 交響曲 第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」

前半はチャイコのピアコン。
ピアノのチョ・ソンジンは韓国人で弱冠16歳だが、09年の浜松国際コンクール優勝の経歴の持ち主。
この大曲をしっかりまとめてきたのは立派。とは言えそれ以上の感動をもたらすほどではなく、まあまだまだ未完の大器というところか。ミョンフンとオケも、あれ、チェコ・フィルってこんなもんだっけ?とちょっといぶかしく思うほど平凡な出来だった。

ところが、後半の「新世界」となるとまるで別人のようにオケが鳴り出す。あら、チャイコではソリストに遠慮してたのかしら?と思ったくらい。
チェコ・フィルの新世界となれば、ウィーン・フィルのウィンナ・ワルツくらい十八番中の十八番だもの。文字通り、目をつぶっても弾けるんだろう。
厚みがあるのに重くない豊かな弦に透明感のある明朗な管の響きがのって、それはそれは素晴らしい音。
ミョンフンの指揮も、メリハリが効いて躍動感に溢れ、ドヴォルザークの美しいメロディーを歌うところは目一杯歌い、この手垢がつくくらいメジャーな曲の魅力を余すところなく描き出した。
いや~、ほんとに素晴らしい演奏でした。今更新世界でこんなに感動すると思ってなかった。

アンコールは珍しい、同じドヴォルザークの交響曲第7番から第3楽章を途中から。渋い選曲だけどこれも素敵な演奏。

終演後は鳴り止まない拍手にいったん引っ込んだミョンフンとオケのメンバーの一部がもう一度ステージに戻ってきてくれた。

思えば、彼らこそ遠い日本で地震にあって怖い思いをしているだろうに、反対に聴衆を元気づけるような素晴らしい演奏をしてくれたことに、心の底から感謝したい。ほんとうにありがとう。
万が一に備えて、水のペットボトルに飴とクッキーをバッグに入れて、ちょっとした覚悟を持ってでかけた甲斐は十二分にあった。

音楽ってやっぱり良いな。渇いた心に染みわたる。
一日も早く、被災した人たちがまた音楽を聴ける日が来ますように。
18日には仙台公演も予定されているが、あるのだろうか(19日の川崎公演は、ホールが使用できなくなって中止とのこと)。仙台ではやっても来られない人も多いだろうが、行ける人は是非行ってほしい。きっと元気が出るから。