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浅草歌舞伎 昼の部 [舞台]

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浅草歌舞伎の今のメンバーが今年で10年と言うことで一区切り、橋之助と莟玉以外が”卒業”ということになり、今年は言わば集大成、卒論として意欲的な演目が並んだ。

一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
十種香

八重垣姫 中村 米吉
武田勝頼 中村 橋之助
腰元濡衣 坂東 新悟
白須賀六郎 中村 種之助
原小文治 坂東 巳之助
長尾謙信 中村 歌昇

米吉は赤姫がよく似合う。おっとりと美しいのはもちろんだが、恋にイケイケなところが特に。この八重垣姫でも、死んだはずの許婚勝頼にうり二つの簔作に心奪われ、とは言えはしたない、と逡巡するもやっぱり、、、とじりじりと簔作(実は本物の勝頼)に積極的に迫っていくあたりが。米吉の姫を見ていると、ああ今も昔も町娘もお姫様も恋する女の子は同じだな、という変な感慨を持ってしまう。でもそれは、歌舞伎の世界を縁遠いと感じる現代の、特に若い客にはすごいアピール力だと思う。

対照的に新悟の濡衣は黒の着物がしっとりとよく似合い、大人の女の風情を感じさせる。悲しみに暮れながらも仕事はしっかりこなすできる腰元。

簔作・勝頼は難役。とにかく動きがほとんどない中風情で見せなくてはいけない。橋之助にはまだ荷が重かったか。ヴィジュアルは良くなってきたけど。

驚いたのは歌昇の謙信。まだこういう役が似合う年ではないはずだが、出てきたときに大きさを感じさせたのは立派。

二、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
源氏店

切られ与三郎 中村 隼人
妾お富  中村 米吉
番頭藤八 市村 橘太郎
蝙蝠の安五郎  尾上 松也
和泉屋多左衛門  中村 歌六

隼人は仁左衛門に習ったそうだが、しっかり勉強していて仕草も台詞回しも良く真似ていた。ぼんぼんらしさと二枚目の色気も出てきた。この頃は浅草以外でも舞台の中心に立つことが増え、ただの二枚目でなく存在感も増してきた。目の離せない若手の一人。

米吉が先ほどの赤姫からがらりと変わって美しいお妾さん。手も足も出ないかと思ったが、「いい女」の醸し出す色気とまではいかないが、ちょっと人生に投げやりな感じもあり、藤八や蝙蝠安へのあしらいなど世慣れた雰囲気があるのが上手い。

難しかったのが蝙蝠安の松也。いろいろ工夫して頑張ってるのはわかるけど、どうも違うとしか言いようが。。。いやほんとに難しいよね、この安。この先誰がやっていくんだろう。

橘太郎の藤八、歌六の多左衛門は大歌舞伎でも十分な助っ人。この二人のおかげでどれだけ舞台が面白くなったことか。でも正直言うと、歌六に安をお願いして、松也は多左衛門にした方がしっくりきたとは思うが、これも勉強。

三、神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)
どんつく

荷持どんつく 坂東 巳之助
親方鶴太夫 中村 歌昇 
太鼓打 中村 種之助
大工 中村 隼人
子守 中村 莟玉
若旦那 中村 橋之助
芸者  中村 米吉
白酒売  坂東 新悟
田舎侍 尾上 松也

三津五郎の追善でも演じたどんつくを巳之助が務める。メンバー全員揃っての賑やかで楽しい踊り。
巳之助はちょっと鈍でお間抜けなどんつくをおおらかに演じて笑いを誘う。
親方の歌昇は玉入れの大道芸も果敢にこなし(たまに失敗ww)、親方らしい落ち着いた雰囲気。
種之助の太鼓打ちと三人で踊るところが楽しく、見ていると笑みがこぼれてくる。
全員で一緒に出るのが最後と言うこともあって、和気あいあい、気持ちよい打ち出し。
これが夜の最後の演目だった方が良かったのに、とは思った。


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歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎 夜の部 [舞台]

一、鶴亀(つるかめ)
女帝 福助
亀 松緑
従者 左近
従者 染五郎
鶴 幸四郎

これもお正月らしいおめでたい踊り。
体が不自由な福助は座ったままだが、華やかな笑顔を振りまき、動く左手で扇を使い、それを観ているだけでありがたくおめでた気分がいやまさる。ありがたさプライスレス。
松緑親子、幸四郎親子の共演というのも珍しく、4人とも神妙。左近の清潔さが目を引く。染五郎と左近、共演は初めてかも。年も近いし、親同士同様これからも共演があると良いな。

二、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤左衛門祐経 梅玉 
曽我十郎祐成 扇雀
曽我五郎時致 芝翫
化粧坂少将 高麗蔵
近江小藤太 松江
八幡三郎 虎之介
梶原平三景時 錦吾
梶原平次景高 桂三
小林朝比奈 彌十郎
鬼王新左衛門 東蔵
大磯の虎 魁春

この頃すっかり工藤役者になった梅玉。本来十郎の人だが、年を経て座頭格の役が回ってきているということだろうが、やっぱりまだまだ十郎をやってほしいとも思う。

扇雀の十郎、芝翫の五郎はニンだが、この二人に限らずこの座組、平均年齢が高めなせいかいささかテンション低いというか、落ち着きすぎ。特に五郎にはもっとやんちゃさがあってほしい。

まわりでは魁春の虎が年輪の花を咲かせる。
東蔵の新左衛門も元気で、股立ちを取って足を見せていたのはびっくり。今月で86歳ですと。

三、息子(むすこ)
火の番の老爺 白鸚
捕吏 染五郎
金次郎 幸四郎
高麗屋三代の共演。
白鸚の老爺が絶品。かたくなで生真面目な老人の、長年会っていない息子を案じ、でもきっと真面目に立派になっていると信じる愛情の深さが言葉ににじむ。
息子は幸四郎。上方から舞い戻ってきたが身を持ち崩し、捕り方に追われる身の上。老爺と話すうちに父親と気がついても名乗ることもできない。老爺の言葉に反応して変わる表情に切なさ恋しさ後悔…と思いがくるくると現れては消える。それと悟っても親子と名乗りあえない二人の別れが切なく幕切れの「ちゃん…!」のひと言に万感がこもる。
染五郎の捕吏もきっちりとした芝居。
舞台装置は、貧しげな番小屋だけ。時折雪が舞う寒い晩という暗い舞台だが人の心の悲しさとぬくもりが感じられてほんのりと暖かい。


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四、京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)
月の前半は壱太郎、後半は右近が花子を務める。
壱太郎の花子はとにかく可憐。踊りはもちろん丁寧で清潔感のあるほんのりとした色気。その分、鐘への執着は弱めな感じ。

一方の右近、とにかく体が良く動く。切れが良くかつしなやか。そして色気たっぷりの艶やかさと華があるのがこの人の強み。時折鐘を見込む表情に凄味さえ。常に男の影を背負っている。
ただ個人的にはちょっと動きすぎの気もした。好みの問題かもしれないが。

壱太郎が同じ桜でも染井吉野のほんのりとした美しさなら、右近の方はぼってりとした紅枝垂れ。

いずれも何よりこの舞台で踊れる喜びが体中からあふれるよう。
その緊張感も高揚感も初役の今回しか観られないものだったかもしれない。これから一生かけて自分の花子を作っていく、そのスタートを見られたことを観客の一人として喜びたい。
勝四郎・巳太郎・傳左衛門ら演奏も強力バックアップ。眼福・耳福。


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歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎 昼の部 [舞台]

一、當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)
〈五人三番叟〉
三番叟 中村福之助 鷹之資 歌之助 玉太郎 虎之介
若手五人の賑やかな踊り。元気いっぱいで活きが良くて楽しい。正月最初に見るにはぴったり。
ただ、ずっと5人一緒にバタバタと同じような踊りが続くので、短い割には見飽きる。途中でソロとか二人ずつとか変化をつけた方が良かったのでは、と思った。
中ではやはり鷹之資の踊りが頭一つ抜けている。

〈英獅子〉
芸者 雀右衛門
鳶頭 鴈治郎
鳶頭 又五郎
打って変わって、粋な鳶頭と艶やかな芸者の踊り。絡みもついて華やか。こちらはさすが大人の芸。
しかし今月この三人がこの一幕だけとはもったいない。

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二、荒川十太夫(あらかわじゅうだゆう)
荒川十太夫 松緑
松平隠岐守定直 坂東亀蔵
大石主税 左近
杉田五左衛門  吉之丞
泉岳寺和尚長恩 猿弥
堀部安兵衛 中車

一昨年講談を原作として作られた新作歌舞伎が好評で早くも再演。赤穂義士外伝の一つで、堀部安兵衛の切腹の介錯をした十太夫の嘘から始まった苦悩を描いて、武士として人としての義とは真心とは、を訴えかけて感動を呼んだ。

主役でこの作品の発案者の松緑が、下級武士故の悲哀と安兵衛に義を尽くすために偽りを続ける苦悩を見せた。殿様の言葉通り、良い嘘もある、と納得させる熱い芝居。普段立ち回りや荒事の方で目を引いてきた人が、そういった派手さを封印して、台詞劇で感動させたことに瞠目した。また、平伏してる姿が美しい。背中で演技してるのが見えて良かった。

殿様の亀蔵が、弁舌爽やかで理をわきまえた名君ぶり。萎縮する十太夫を時に叱咤し、時に諭すようにして言葉を引き出していく、台詞術が見事。この人もこういう役が似合うと改めて知った。青果などの書き物をもっと見たい。綱豊卿など似合うと思う。

吉之丞の目付が、厳しい中にも懐の深い様子。時に師の吉右衛門を彷彿とさせるところもあった。

台詞のない左近が凜々しい主税。
安兵衛は初演では猿之助だったが今回は中車。勇猛で知られた安兵衛の豪胆かつ温かい人柄がにじむ。
和尚の猿弥がほのぼのとして最後をほっこりと締める。

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三、狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)
手拭い屋伊之助 幸四郎
女房おきわ  尾上右近
雇人又市  染五郎
博奕打ち福造 廣太郎
おそめ 青虎
寺男甚平 亀鶴
法印重善 錦之助

勘三郎のイメージが強い演目。北條秀司の作だと言うが、へえ北條がこんな喜劇を、と思うようなドタバタ。欺し騙されの男女の愛憎劇だが、あまり後味が良いとは言えない。なんで正月にやるかな。
幸四郎は元上方の役者で女房にぞっこんで、なよなよしてるようで執着心が強くて、、、と言う一筋縄ではいかない役。上方言葉もこなし、まあコメディもやれる人なので面白く見せた。

右近のおきわは亭主より間男の法印にベタ惚れの女で亭主を殺すのもいとわない。と言うとすごい悪女になるが、芝居では滑稽味の方を強く見せたいところが、さすがにまだ手に負えなくて、抜けた感じが乏しいのでまじに悪女になってるのが辛い。

錦之助の法印は女にだらしない破戒坊主、普段の二枚目が生きて、こんなのもできるんだな。
びっくりは染五郎。これまで美少年で売ってきたのをかなぐり捨てて、ドタバタコメディを実に楽しそうにやっていた。今まで隠してたのか!?という感じで驚いた~。これからこういうのももっとやってほしい。
あと、青虎のおそめ。滅多に女方しない人だけど、言っちゃなんだがブサカワなんだがめっちゃ可愛かったです。

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キュビズム展 [美術]

キュビズム展 国立西洋美術館

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パリ・ポンピドゥーセンターのコレクションを中心に、キュビズムの歴史を辿る展覧会。

キュビズムってどうも好きじゃない。ひと言で言えば平面と立体の組み合わせからなる絵、なんだろうけど、なまじ半端に具象絵画だから、これのどこに顔があってどこにギター(やたらとギターがでてくるのはなぜ)があるんだ、と頭を抱えてしまうのだ。

先駆けとなったセザンヌやアンリ・ルソーの絵画、プリミティヴアートと呼ばれたアフリカなどの彫刻を皮切りに、ピカソとブラックがキュビズムの扉を開ける。
確かに初期のブラックなど見るとセザンヌとの強い繋がりを感じる。

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ブラック「レスタックの高架橋」(1908)

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パブロ・ピカソ「女性の胸像」(1907)
これはまだほんとに初期の頃でわかりやすい。

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ジョルジュ・ブラック《果物皿とトランプ》(1913)
こうなってくると何が描かれてるのかさっぱり。

レジェなどになると平面より立体的な要素が強くなってきて、ちょっと面白いかなとも思う。
意外なところでシャガールやモジリアニもあって、どこがキュビズムという気もしないではなかった。

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モジリアニ「女性の頭部」
確かにプリミティブアートの彫刻に影響を受けてると思うけど。

シャガールの他にもロシア系の画家が数点。

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ラリオーノフ「春」(1912)
あまりキュビズムっぽくないけど、展示作品全体の中でこれがいちばん気に入った。

キュビズムが始まっていろいろ枝分かれして発展していく様子はなんとなく辿れた。だからといって、理解が深まったかというと素人にはやっぱり難しい。
でも思いがけずモジリアニやシャガールも見られたし見応えは十分。
カンディンスキーがなかったのは残念だったけど。
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国立劇場 初春歌舞伎公演 [舞台]

新国立劇場中劇場

半蔵門の国立劇場が建て替えのため閉場となってから初めての歌舞伎公演。今回の会場は初台の新国立劇場・中劇場。
本来歌舞伎用の劇場でないため花道はないし、天井も高く違和感はある。だが客席からは見やすいし、ロビーは明るく広々した感じ。まあ、巡業で行く地方の劇場の上等な感じと思えば良いか。
歌舞伎座などと違ってお正月の繭玉飾りなどもないのが殺風景な気がした。

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例年国立の初春公演は菊五郎劇団による復活ものが続いていたが、今年は人数も少なめ、演目も古典が並んだのはもう音羽屋さんに復活を手がける気力体力がないのかも、と想像するとちょっと寂しい。
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一・『梶原平三誉石切』
梶原平三景時 尾上菊之助
大庭三郎景親 坂東彦三郎
六郎太夫娘梢 中村梅枝
俣野五郎景久 中村萬太郎
青貝師六郎太夫 嵐橘三郎
囚人剣菱?助 片岡亀蔵

菊之助初役の梶原は岳父吉右衛門のをよく勉強したのが見える。また、元々ニンにも合っていて爽やかで情のある様子がぴったり。
まあ、吉右衛門さんのように幕開きの「しからば、ごめん」のひと言から客を酔わせるような台詞術はまだ持たない。だが回数を重ねれば持ち役になるだろう。

橘三郎の六郎太夫が良い。娘への情と、気骨・品格がある。
梅枝の梢は言わずもがな。可憐さと細やかな父への情を見せる。
そして彦三郎の大庭が大きくてふてぶてしさもありながら大名の格も見せて立派。
萬太郎俣野のやんちゃさもまずまず。
亀蔵の呑助の台詞に普通と違って酒の銘柄の固有名詞が入らないのは国立劇場の制限か?

二・『芦屋道満大内鑑―葛の葉―』
女房葛の葉/葛の葉姫 中村梅枝
信田庄司 河原崎権十郎
庄司妻柵 市村萬次郎
安倍保名 中村時蔵

梅枝初役の葛の葉、期待を上回る出来。古風な面差しが役にぴったり。
あの人外なのに人並み以上の情の濃さ細やかさ。哀れで優しくてはかなくて、でも強くて。人妻として母としての愛情と悲しみを体現する。曲書きも達者な筆跡。
時蔵の保名がまたぴったり。品良くさらりとした二枚目ぶり。
権十郎と萬次郎の庄司夫婦も丁寧。

『勢獅子門出初台』
最後は出演者総出で華やかに。
菊之助・彦三郎・萬太郎・吉太朗の鳶頭、時蔵・萬次郎・梅枝の芸者、亀三郎・眞秀・丑之助・大晴らちびっ子が手古舞と鳶を早替わりで。
菊之助と彦三郎のコンビで踊るというのも考えると珍しいが粋な様子。
時蔵の芸者が艶やか。梅枝と萬次郎もしっとり。
萬太郎と吉太朗の獅子舞も勇壮。
ちびっ子達も達者な様子を見せて楽しい。
そして最後に御大菊五郎も登場。お腰が悪いそうで動きは不自由そうだが声は元気で、とにかくいなせで格好いい。正月から親父様のお姿が拝めておめでたさひとしお。
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繡と織 華麗なる日本染織の世界 [美術]

繡と織 華麗なる日本染織の世界 根津美術館

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奈良時代から明治時代にかけての日本の布装飾、中で織りと刺繍に注目して名品を見せる展覧会。

刺繍の種類の説明など、文字で読んでもちょっとよくわからないところは正直あった。実際に刺繍やってる人ならわかるんだろうけど。

まず奈良時代から始まり、正倉院宝物にあるような、刺繍を施した裂がいくつか。かなり褪色していて、破片のようになっているものもあるが、それでも細かい刺繍があるのがわかる。

展示の中心になるのは江戸時代の能衣装。
どれもデザインそのものが素晴らしく、それを彩る織りや刺繍さらに染色との見事なコラボレーションにはため息しか出ない。
西洋では豪華な衣装というと金銀宝石などが使われるが、そういうのがなくてもこれだけ豪華なものが作れる。誇るべき日本の文化だと思う。

ただ、現代ではこういう技術は引き継がれているのかしら、と心配にもなる。
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癒やしの日本美術展 [美術]

癒やしの日本美術展 山種美術館

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今年最初のエンタメ外出は山種美術館へ。
若冲や蘆雪のほのぼのした絵に始まって、玉堂や竹喬の穏やかな風景画、栖鳳や土牛の愛らしい動物画などが並ぶ。

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長沢芦雪 《菊花子犬図》

蘆雪の仔犬は師の応挙の作品に倣ったものだが、とにかくもふもふしていて可愛いと言ったら。

また上に挙げたような有名画家のものはもちろん、あまりよく知らなかった戦後の日本画家達の作品、画像はないが例えば林功の「月の幸」などにも印象的なものが多かった。
山種美術館のいいところは、現代の画家を含めて作品を紹介してくれるところだと思う。

第二展示室では安田 靫彦や土牛らの宗教的な祈りのこもった作品を展示。時節柄心が洗われるようだった。

お正月に見るには最適な展覧会だったと思う。

あまりに久しぶりでブログのアップの仕方を忘れていて手間取ってしまった。
続くかどうかわからないけど、ひっそり再開しました。
よろしくお願いいたします。
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2020年も終わり [その他]

あっという間に大晦日です。
今年ブログを再開したものの、勤務先の短縮営業が終わって普通に戻るとやっぱり書く時間が取れず(って、昔はどうしてたんだろう、と不思議^^;)また休眠状態に入ってしまいました。
今後もどうなるかわかりませんが、とりあえず、今年一年を振り返ってみます。

まず、観劇関連から。
何しろ3月から7月まで歌舞伎も全休、他のコンサートなどもほとんどなくなり、こんなに生の舞台や演奏から遠ざかったのは大人になってから初めてだと思う。
そんな中でのベスト10.

①俊寛 11月国立
②魚屋宗五郎 10月国立
③新薄雪物語 3月歌舞伎座
④ひらかな盛衰記・源太勘当 10月国立
⑤素襖落 1月歌舞伎座
⑥引窓 9月歌舞伎座
⑦かさね 9月歌舞伎座
⑧文七元結 2月歌舞伎座
⑨熊谷陣屋 12月南座
⑩三人吉三 12月国立

播磨屋さんはもちろん、音羽屋、高砂屋、松嶋屋といった大御所の底力を感じた年。特に秋以降歌舞伎が再開されてからの舞台には、みなさんの舞台に立てる喜びと意気込みをひしひしと感じることとなりました。

展覧会関連
①東博 桃山展 とにかく質量とも圧倒的。桃山という決して長くはない時代にこれだけのものが、という感動。
②千葉市美術館 帰ってきた!どうぶつ大行進
待ってました、リニューアル!期待に違わず。
③三菱一号館 画家が見たこども展 とにかく好きな絵が多かったので

ポーラ美術館のモネとマティスも良かったし、三井記念のコレクション展、都美の浮世絵展、etc、展覧会も休止されたものが多い中、観られたものには充実したものが多かった。

音楽関連もとにかく軒並み中止。秋以降聞けたのはウィーンフィルと庄司紗矢香。でもこの二つだけでも今年の音楽への飢餓感を埋めてくれるに十分だった。

来年はどうなるか全く見通しが立ちませんが、少しでも今年より良くなりますように。
くれぐれも健康に気をつけて新しい年をお迎え下さい。

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モノクロームの冒険 [美術]

根津美術館
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/past2020_n06.html
既に終了。

水墨と白描の展覧会。
墨だけで色を使わず描く世界は、西洋画では版画でもなければ見られないと思う。墨の黒と言っても濃淡の幅の広さ、筆の細さ太さ、など単に白黒というどっちかではなくある意味実にカラフルとも言える。

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赤壁図屏風(部分) 長沢芦雪筆
水面、岸壁、樹木、それぞれを墨の濃淡で描き分けた蘆雪の傑作。

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梟鶏図 狩野山雪筆
この作品、山雪の絵の中でもとびきり好きで今回出品されていて嬉しかった。朝を告げる鶏と夜に生きる梟、どちらも表情がなんとも言えずユーモラス。ほんの少しの彩色が効いている。

一方、線で描くのを主としたのが白描。
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伝 住吉具慶筆 源氏物語画帖「花宴」
墨だけでなくこの作品のように部分的に彩色を施すものも。あまり濃淡や筆の肥痩はつけず線描の美しさで見せる。

水墨画も白描も余白が重要で、西洋画のように隅々まで塗り尽くすことがない。それによって風通しが良く、伸びやかで、見ていて心が広々としてくる気がするので好きだ。

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日本美術の裏の裏 [美術]

サントリー美術館
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2020_2/index.html
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リニューアル記念展覧会の第2弾。
今回もコレクションを工夫した展示で見せてくれる。「生活の中の美の“愉しみ方”に焦点をあて」た内容。

例えば第1章空間を作る では屏風絵に描かれた四季や風景で飾られた部屋に景色が見える。

第2章 小をめでる はミニチュアの道具類。本物そっくりに作られた精緻な道具や器は職人が本気で作った逸品。昔から日本人はミニチュア好きなんだな。
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雛道具 七澤屋 一式

第3章 心でえがく はいわゆる下手でゆるい絵巻類。「かるかや」物語など、絵と内容のギャップがなんとも言えない。

第4章 景色を探す は器。偶然にできる焼きむらや釉薬の流れなど、どの角度から見るかで景色の変わる器をめでる。

第5章 和歌でわかる 有名な和歌で描かれた世界を器焼き物の柄に工夫して表す。見る人もそれと理解できる。昔の人は和歌をよく知っていたんだなあ。

第6章 風景に入る 池大雅の風景画に小さく描かれた人物になりきってみる。広重の東海道五十三次の旅人に見える景色は。など絵の中に自分が入ったつもりで描かれた景色を見ると違う風景が見えてくるかも。
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青緑山水画帖 池大雅

美術品をただ並べてみせるのではなく、どう見たら楽しいか、を提案してくれる。勉強という堅苦しさではなく楽しみ方を指南してくれる展覧会。


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