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近頃読んだ本 [読書]

この週末は観劇予定がないので、久しぶりに読書の記事を。
ただし、お正月にごろ寝しながら読んだ時代小説類は省きます(笑)。

数学的にありえない〈上〉

数学的にありえない〈上〉

  • 作者: アダム ファウアー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 単行本


数学的にありえない〈下〉

数学的にありえない〈下〉

  • 作者: アダム ファウアー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 単行本

いわゆるサイエンス・ミステリーというのでしょうか。所々に数学や物理用語なども出てきますが、そこが理解できなくても別に支障はありません。ノン・ストップ・アクションといった感じで一気に読ませますが、後で考えると結構無駄な描写や無茶な展開もあって、こじつけが過ぎる感じも。「それは”ありえない”だろ!」とつっこみたくなるところがいっぱい。映画化されたら面白そう。

鼻/外套/査察官

鼻/外套/査察官

  • 作者: ゴーゴリ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/11/09
  • メディア: 文庫

昨年創刊された話題の光文社の古典新訳文庫のシリーズから。
荒唐無稽なゴーゴリが落語調の文体になって、新鮮かつ面白い!ロシア文学は堅苦しいと思っている人にお勧めしたい。
なお同シリーズでは「カラマーゾフの兄弟」も刊行中。全巻出揃ったら読んでみたい。

双六で東海道

双六で東海道

  • 作者: 丸谷 才一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本

丸谷さんのエッセイは何を読んでもはずれはないけれど、これも著者の多面にわたる博学ぶりが披露されて、感心するばかり。しかも決して堅苦しくない。艶笑物の話題もいっぱい。

以上は比較的新しい本。
次のは図書館で見つけた古い本。
芥川比呂志 「肩の凝らないせりふ」
某雑誌で名エッセイと紹介してあったが、確かに役者の副業と言うにはもったいない、きちんとした日本語の文章。内容的には演劇評・役者評なども含まれるので、書かれた当時(昭和40年代後半)からの演劇ファンでないとわからないものもあるが、若い頃の思い出話などもあり、芥川さんの飾らない人柄が偲ばれ、文字通り肩の凝らない読み物として十分楽しめた。
しかし芥川さんと私の好きな作家の堀田善衛が慶應で同級生だったとは、知らなかったなあ。


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宮本輝「にぎやかな天地」 [読書]

宮本さんのここ数年の作品に共通するのは、どれも登場人物に透明感があって美しいことです。美しいというのは、外見ではなく、心根が。
「森の中の海」しかり、「約束の冬」しかり。
現実の世の中は、こんないい人ばっかりじゃないよ、と言う気もするけれど、読後ほんとうに心が洗われたような気になります。

この「にぎやかな天地」もそうでした。
主人公はフリーの編集者・聖司。ある日懇意の顧客から、日本の発酵食品をテーマにした本の作成を依頼され、鮒鮓、醤油、鰹節といった伝統食品の老舗の取材を始める。
物語はこの取材の過程で出会う人々との関わり合いと、聖司本人の家族にまつわる話、ほのかな恋、などが絡まり合いながら進んでいく。

登場人物のほとんどが、過去に悲しい経験をしている。
聖司の父は、聖司が生まれる前に不慮の事故で亡くなった。
また聖司の亡くなった祖母は若い頃幼い男の子を置いて離婚し、再婚後聖司の母を生んでいて、その子が偶然近くに住んでいたことがわかる。
また、聖司の親しい料理研究家は、子供の頃父親が若い女と心中していた。

などなど、こう並べて書くと暗く悲しい人ばかりのようであるが、そうではない。
どの人もいたずらに運命を恨まず、淡々としかししっかりと前を見据えて生きている。
悲劇が長い年月を経たあとで、思いもよらない幸福や人間的成長に結びつくとき、人はその不幸の意味を改めて思うであろう、と著者もあとがきで述べている。
人間が成長するってどういうことなんだろう。
きっと、自分で成長するぞ、と思って出来ることではないんだろう。
でも日々の生活の中で出会ういろいろなことや人が、いつの間にか作用して人格を作り上げていくのだろう。
目に見えない糀や黴が、上等な醤油や鮒鮓を作り上げるのに重要な作用をするように。

すぐに出来ることではないけれど、自分も心がけをよくして、少しでもこんな「美しい人」に近づけたらなあ、と思いました。


にぎやかな天地 下


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あ・じゃぱん [読書]

「あ・じゃぱん」 矢作俊彦
第二次世界大戦で敗戦後、日本が東西に分割されて、西は資本主義、東は社会主義国家となり、西の京都御所にいた昭和天皇の崩御をきっかけに「壁」が崩壊して、、、。
主人公はアメリカ人の黒人ジャーナリスト。父親が終戦後GIとして日本に駐在していた日本贔屓の関係で日本語を学び、取材の傍ら、父の思い出の「ハナコさん」を探すが…。

という奇想天外のストーリーに、田中角栄、中曽根康弘、ヘミングウェイなど、実在の人物名がばんばん出てくる。しかもあり得ない状況設定で。
10年近く前に出版された本だけど、当時名誉毀損などで訴えられなかったのかしら?
実際に起きた事件、どこかの国の聞いた話、様々な要素をモザイクのように継ぎ合わせて、いかにもありそうな「戦後日本の歴史」ができあがっている。
中でも可笑しいのは、西日本では標準語が大阪弁になっていて、昔の標準語「東の日本語」を学んだ主人公は理解できずに苦労するのだ!
とにかく抱腹絶倒な大作である。

歴史・政治パロディであるとともに、チャンドラーの「さらば愛しき女よ」へのオマージュでもある。
なにしろ最終章で初めて明かされる主人公の名前が…。
矢作さんは最新作「The Wrong Goodbye」でもチャンドラーへの傾倒ぶりを発揮している。


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