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柿葺落四月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

御園座

一、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり )
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三  中村 吉右衛門
六郎太夫  中村 歌六
梢     中村 雀右衛門
山口十郎  中村 歌昇
川島八平  中村 種之助
岡崎将監  中村 米吉
森村兵衛  中村 吉之丞
剣菱呑助  嵐 橘三郎
飛脚早助  澤村 宗之助
俣野五郎  中村 又五郎
大庭三郎  市川 左團次

演目が発表になったときは正直「え、また石切梶原」。。。って思った。でも見終わるとやっぱり良いものは何度見ても良いんだなあ。

播磨屋の石切梶原はなんであんなに面白いのかね。泣ける話でもないし、感動的でもない。ただただ吉右衛門梶原の台詞の面白さと愛嬌だけ。でもそれで十分。歌舞伎の、それも義太夫もののエッセンスがギューッと詰まった一幕。冒頭花道での「しからば、ごめ~ん」だけでも痺れる。そしてあの刀の目利きをする時のキラーンと光る目の輝きのまるで少年のような愛おしさ!刀の柄に下げ緒を黙々と巻く手つきの美しさ。試し切りの前に指ならしで指をパキパキする面白さ。なんか、やることなすこと可愛い。さらに今回は今までより、六郎太夫や梢の台詞にうなずいたり微笑んだりと言った表情が細やかになっていたような気がする。

周りは揃って鉄板の布陣。
左團次の大庭が敵役の大名らしいふてぶてしさと貫禄。
又五郎の俣野がいかにも頭の足りなさそうな様子で上手い。
歌六の六郎太夫が滋味深く娘思いの父。反面、源氏に与する気概も見せる。
雀右衛門の梢はいじらしく可愛げたっぷり。
橘三郎の呑助は、ご当地ネタも盛り込んでサービス。

高麗屋襲名公演ではあったが、内容の充実という点ではこれがいちばんの演目だった。

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
武蔵坊弁慶  幸四郎改め松本 白鸚
富樫左衛門  染五郎改め松本 幸四郎
亀井六郎   大谷 友右衛門
片岡八郎   市川 高麗蔵
駿河次郎   大谷 廣太郎
常陸坊海尊  松本 錦吾
源義経    中村 鴈治郎

1月は幸四郎が弁慶で勧進帳を出した。今回は父の弁慶に息子の富樫。
新白鸚の弁慶は個人的に感心しないので期待もしていなかったが今回も従来通り。
期待したのは幸四郎の富樫だったが、すっきりと行儀は良く姿も美しいが、気迫があまり感じられず型を追うに終わっていてがっかり。1月の叔父に比べるのは気の毒としても、どこを見てたんだ、とは思う。あんな手で押したら開きそうな関所じゃどうしようもない。

鴈治郞の義経というのはあまりニンではなさそうだが、さすがに1月の染五郎に比べると安心して見ていられて、伊達にキャリアを積んでるわけじゃないな、と妙に感心した。

三、夕霧 伊左衛門 廓文章(くるわぶんしょう)
吉田屋
藤屋伊左衛門   染五郎改め松本 幸四郎
扇屋夕霧     中村 壱太郎
阿波の大尽    中村 寿治郎
吉田屋喜左衛門  中村 歌六
吉田屋女房おきさ 片岡 秀太郎

松嶋屋ではなく、紀伊國屋の藤十郎に習ったという。結構いろいろ違って面白かった。

幸四郎の伊左衛門はアホボンの魅力炸裂。可愛すぎ。あの可愛さは反則。あざといわ~。自分が可愛いこと知ってて、どうやったらなお可愛く見えるか、ってこれでもかと見せつけてくる。あー可愛い。アホやけど可愛い。たまらん。
もうすぐ夕霧が来そうとなって、どうして迎えようかと襖の陰に立ったり柱の横でポーズしたりのいろいろが面白おかしい。ほんと可愛いけどどうしようもなくアホ。あれに身請けされても幸せにはなれんな。勘当解けても藤屋潰れるわ(^_^;)

壱君の夕霧が儚げで、でも華があって綺麗。伊左衛門相手に姉さん女房みたいな感じ。数年前浅草でやったときから格段の進歩。最後の打ち掛けは山城屋着用の藤の柄。

松嶋屋のと違い、喜左衛門夫婦の出番が少ないのは物足りなかった。せっかく歌六さんひでりん出てるのにな。でも最後はひでりんの合図で大阪締め。
いつもの型のでおきさが「若旦那やと思うて声かけたら○○屋さんどしてん。まあまんざら知らん仲でもないし」とか言うところがぐだぐだしてて好き。特にひでりんのが。これがないとつまんないな。

冒頭の吉田屋の店のものに播磨屋のお弟子さん達が出ていたが、普段この演目にかかわることがないので、珍しい気がしてしまった。もしかしたらこれが最初で最後かも?

新しい御園座は座席も広めで、2階からも見やすく、音も悪くない。聞くところではチケットが売れてないとかで営業面は相変わらず上手くなさそうだが(切符代も高いし)、せっかくいい小屋ができたのだからうまく使ってほしいな。
     
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