SSブログ

国立劇場12月歌舞伎公演 [舞台]

12月の国立劇場は播磨屋を中心とした公演。

tirasi.jpg

無題.jpg

一・今様三番三(いまようさんばそう)
晒し三番叟の外題で昨年壱太郎が巡業で出していたが、その前は40年くらい間が空くという珍しい舞踊。
雀右衛門は如月姫を務め、引き抜きあり、晒しを振っての踊り、ちょっとした立ち回り風味もあり、と楽しませる。
歌昇と種之助が姫を怪しんで捕らえようとする侍。白塗りの歌昇に赤っ面の種之助、それぞれが個性を見せる。特に幕切れの種之助の力強い様子が頼もしい。
雀右衛門と三人でせり上がってきたところは一幅の絵。フィギュアにしたいくらい。

二・隅田春妓女容性(スダノハルゲイシャカタギ) ~御存梅の由兵衛
初代吉右衛門の当たり役で、こちらも白鸚が演じて以来やはり40年ぶりくらいの上演。「御存」とつくくらいだから昔は人気作品だったのだろうが、何故か途絶えていた。筋は、御所五郎蔵的な、古主の縁に繋がる人を助けるために奔走する由兵衛が金策に困って過ちから人を殺め、、、と言った話だが、御所五郎蔵の他に、法界坊やら帯屋やら十六夜清心やらから取ってきたような場面が挿入され、さらには小さん金五郎、長吉長五郎、と言うような名前も他の作品を思い起こさせる。並木五瓶作だがパロディか?と思うような作りで、それでも場面ごとにぶつ切りにはならずになんとか繋がっているし、娯楽作品とは言えないがそれほど肩が凝らずに楽しめる。

吉右衛門の由兵衛は侠客と言っても幡随院のような恰幅の良さはなく、あまり大物感はない。それだけにむしろ吉右衛門にはやりにくかったのではないかな、と感じる節もある。主要場面の長吉殺しも、悪人をバッサリやるのとは違い、金を借りようともみ合ううちに思わず、と言った様子で(ここは夏祭浪花鑑の長町裏のよう)むしろ長吉に同情が集まる。由兵衛の見せ場はむしろその後の、家に戻った由兵衛の苦悩、源兵衛との立て引き、女房小梅との切ない情の交わし合い、の丁寧な心理描写にある。明確な台詞回し、揺れる表情で由兵衛の心の内を描き出して見せてさすがに唸らせる。
最後は敵の源平衛を一騎打ちでやっつけてやっと溜飲を下げて、「本日はこれ切り」での幕。

菊之助は小梅と弟直吉の二役。途中では早替わりも見せる。小梅では元芸者の粋な女っぷりの良さと、夫への深い情を見せ、直吉では姉のために金の工面に苦労する誠実な様子と、二役ともニンに合って良い出来。菊之助もすっかりチーム播磨屋に馴染んで溶け込んでいるのもうれしい。

歌六の源兵衛が敵役ながら渋くて格好いい。ニヒルな悪人といったところか。吉右衛門の由兵衛と伍して格負けしない押し出しの良さ。(幕切れ、播磨屋より強そう、とつい思っちゃった)

雀右衛門が売れっ子芸者のしっとりとした美しさ。
錦之助は定番の優男だが、今回は元武士のキリッとしたところもちょっと見せて、お、今回は強いんだ、と思ったら後は案の定詰めの甘いいつものクズ。似合いすぎ。
又五郎が悪人に加担する乞食で軽薄さと可笑しさを見せてさすがに上手い。

東蔵が珍しく裁き役的な武士で貫禄を見せる。
歌昇が三枚目敵風で、コミカルさを見せて新しい引き出しを持った。
米吉が可愛らしくいじらしい。こういう役はもう安心して見ていられる。
桂三も安定のダメ男の敵役。
種之助は出番は短いが芸者役でなかなか良い感じ。これから女形増えるかな。

ともかくチーム播磨屋の鉄板のアンサンブルを堪能できた。
今年も一年播磨屋さんがお元気で、素晴らしい舞台を見られて幸せ。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇