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十二月大歌舞伎 第一部 [舞台]

歌舞伎座

12月は恒例の三部制。一二部は愛之助と松緑、三部は中車と玉三郎の布陣。正直言うと、玉三郎と松緑も見たかったのだが。

源平布引滝
一、実盛物語(さねもりものがたり)
斎藤別当実盛  愛之助
女房小よし   吉弥
葵御前     笑三郎
郎党      宗之助
同       竹松
同       廣太郎
同       廣松
百姓九郎助   松之助
瀬尾十郎    片岡亀蔵
小万      門之助

月初に見たときは、愛之助の口跡が悪いというよりなんだかテレビ俳優の舞台みたいで、歌舞伎味が薄くて、大丈夫なのか愛之助?と心配になったほどまずかった。テレビだのミュージカルだの外部の仕事ばっかりやってるからじゃないの、とため息が出たが、楽近くに見たらかなり改善されていてほっとした。やはり芝居勘というか歌舞伎勘というかそういうものって毎日大舞台に出てないと身につかないんだろう。ニンとしては愛之助に合った役で、爽やかで颯爽とした裁き役の様子があって良い。子役に見せる優しさや、ユーモラスさもあり、持ち役にしてほしい。

笑三郎の葵が品と憂いがあって良い御台所。
亀蔵の瀬尾は初めて見たが前半の憎々しげな様子から、後半一転して孫への情愛を見せての壮絶な最期までしっかり見せた。兵馬返りもやって機敏さを見せた。
松之助と吉弥が達者。

河竹黙阿弥 作
二、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)
叡山の僧智籌実は土蜘の精  松緑
源頼光           彦三郎
侍女胡蝶          梅枝
坂田公時          萬太郎
巫子榊           新悟
太刀持音若         左近
石神実は小姓四郎吾     亀三郎
碓井貞光          橘太郎
渡辺綱           松江
番卒藤内          坂東亀蔵
番卒次郎          片岡亀蔵
番卒太郎          権十郎
平井保昌          團蔵

松緑の土蜘は再演だそうだが、初演は見ていない。花道を音もなく出てくるところからぞわぞわさせる。舞台中央に来ての台詞も底知れない雰囲気がある。ひんやりとした物の怪の冷たさを感じる。その一方で不思議な清潔感のようなものがあり、それは後シテで隈を取っても変わらない。蜘は蜘でも、泥臭さがないとでも言おうか。そこが逆にそら恐ろしい感じもして、面白い土蜘だった。もちろん、踊りはキレがあって上手いし、前シテの最後に低い姿勢のまま花道を入っていくスピード感も素晴らしい。本役としてこれからも演じてほしい。

彦三郎の頼光、貴公子然とした姿が清々しく、御大将としての格と貫禄もあって良い。
團蔵の保昌が眼光鋭く、いかにも一人武者の存在感たっぷり。
梅枝の胡蝶も品良く美しい。
左近の太刀持ち音若が凜々しく、きびきび。

間狂言はW亀蔵の共演。
小亀ちゃんこと亀三郎ちゃんも愛嬌たっぷりに達者なところを見せた。権十郎がまたも保父さん(笑)。
新悟の巫女榊がたおやか。

若手から中堅世代中心で古典をちゃんと見せられたのが収穫。
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