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「通し狂言 霊験亀山鉾」 [舞台]

国立劇場大劇場
1710国立.jpg

久々の仁左衛門の国立出演は悪役二役。

藤田水右衛門・古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛 = 片岡仁左衛門(15代目)
大岸頼母 = 中村歌六(5代目)
石井兵介・石井下部袖介 = 中村又五郎(3代目)
石井源之丞 = 中村錦之助(2代目)
源之丞女房お松 = 片岡孝太郎(初代)
若党轟金六 = 中村歌昇(4代目)
大岸主税 = 中村橋之助(4代目)
石井家乳母おなみ = 中村梅花(4代目)
僧了善・縮商人才兵衛 = 片岡松之助(4代目)
丹波屋おりき = 上村吉弥(6代目)
掛塚官兵衛・仏作介 = 坂東彌十郎(初代)
芸者おつま = 中村雀右衛門(5代目)
石井後室貞林尼 = 片岡秀太郎(2代目)

何年か前、松竹座で見ている演目だが断片的にしか覚えてなくて、気分はほとんど初見(苦笑)。
仁左衛門の水右衛門は極悪人。血も涙もないとはこのこと。卑怯卑劣な手段で情け容赦なく善人側の人々を次々に手に掛ける。7月の「盟三五大切」の源五右衛門のような情状酌量の余地も全くない、真っ黒黒の悪人。それをにざ様は実に楽しげにやっていて、そのニヒルなほくそ笑みが惚れ惚れするほど格好いい。もう一役の八郎兵衛の方はちょっとコミカルな面もあるが悪人に変わりなく、芸者おつまに惚れてチャリめいたところも見せるが(この軽みがまた絶妙)、水右衛門に加担して悪事を働く。正直言うと、二役両方悪人より、一役は善人だったりした方が見る方は面白いのだが、今回はにざ様の悪の魅力たっぷりと言うことでまあ良いか。それにしてもにざ様、悪役好きなんだなあ、ほんとに楽しそうだったわ。

錦之助が絵に描いたようなクズ男。金なし力なし。でも女にはもてる。妻がいるのに仇討ちの旅に出たはずが芸者といい仲。あっさりにざ様に返り討ち。端から見るとどうしようもないクズなんだけど、許されちゃう優男。こういうのやらせたら今右に出る者がいないんじゃないかという錦之助さん。

孝太郎がその妻で、身分が低く源之丞の家から認められない悲しさと、それでも気丈に振る舞い、最後は夫に代わって敵を討つ心の強さを見せる。
雀右衛門が芸者おつま。こちらも源之丞につくし、敵捜しに協力して、結局殺されてしまうかわいそうな女。本水の中での仁左衛門との立ち回りも見せ活躍。

秀太郎が源之丞の母で、武家の後室らしい凜とした様子に自分を犠牲にして孫の病気を治す慈悲深さを見せてさすがに締める。
彌十郎が悪人と善人二役で幅の広さを見せた。
吉弥が水右衛門に加担する女将。色気もあり、小狡さもある様子がうまい。
又五郎が誠実な下僕でニン。
最後は歌六が裁き役で締める。

今回、雀右衛門に歌六、又五郎と播磨屋組が脇を固めたことで、仁左衛門に余裕が生まれたように見え、周りに花を持たせる部分もありながらなおかつ仁左衛門ががっつり美味しいところは持って行くという舞台だったように思う。
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