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三月大歌舞伎 昼の部 [舞台]

歌舞伎座

高麗屋の二ヶ月続きの襲名が終わって、ちょっと気の抜けたような今月。昼は中堅、夜はにざ玉と若手、と出演者もはっきり分かれた。

一、国性爺合戦(こくせんやかっせん)
獅子ヶ城楼門
獅子ヶ城内甘輝館
同    紅流し
同    元の甘輝館

和藤内  愛之助
錦祥女  扇雀
甘輝   芝翫
老一官  東蔵
渚    秀太郎

芝翫の甘輝が良い。髭もよく似合い、威風堂々。この人ほんとに良い役者顔だよね、と改めて。
扇雀の錦祥女は、情よりも知が先に立つ感じが新鮮。父母への孝に命を投げ出すのも、情に流されてというより、自分が死ぬしかないと冷静に判断して、と見えるのが面白かった。

秀太郎の渚は、たっぷりとした情と、凜とした武士の妻の風情がさすがに上手く、この芝居の核を成す。
愛之助の和藤内は悪くはないけど、やっぱり荒事の人じゃないなあ。小粒に見えてしまって。逆に言えば、ニンでもない役にしてはよくこなしていたけど。
芝翫と愛之助、逆でも良いような気もしたが、いつか観ることができるだろうか。

四世中村雀右衛門七回忌追善狂言
二、男女道成寺(めおとどうじょうじ)
白拍子花子        雀右衛門
白拍子桜子実は狂言師左近 松緑
明石坊          友右衛門

もう七回忌ですか。早いですねえ。冒頭で友右衛門が僧明石坊として口上を述べる。
雀右衛門は京都顔見世での娘道成寺を踊ったときに比べて、別に踊りが上手くなってるわけではないと思うけど(失礼)、量的にも半分な分余裕が感じられて、こちらもなんだか安心して見ていられる。そして何よりふっくらとした美しさが増していて本当に綺麗で可愛い。

松緑の方はもちろん踊りはきっぱりとして上手い。冒頭の白拍子の拵えが想像以上に可愛くて、おおっ、となった。狂言師左近となってからの踊りも清潔感があって、指先まで神経の行き届いた動きが美しい。やっぱりこの人の踊り好きだわ。

三、芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)
魚屋政五郎    芝翫
政五郎女房おたつ 孝太郎
錺屋金太     橋之助
お君       男寅
桶屋吉五郎    福之助
金貸おかね    梅花
納豆売り     松之助
大家長兵衛    橘三郎
左官梅吉     松江
大工勘太郎    彌十郎

このところ世話物にも積極的に挑戦している芝翫。菊五郎劇団の持ち物の印象が強い演目だが、持ち味は違うがこれはこれで面白かった。芝翫は重くなりすぎず、調子の良い江戸っ子の様子もありまずまず。根は良いのに酒に飲まれる政五郎の弱さと真面目さの両面を前半と後半でくっきり見せた。

孝太郎のおたつが良い。亭主思いでしっかり者の、でもよくあるかかあ天下みたいな気の強いおかみさんでなく、優しいよくできた女房。
気持ちよくさっぱり笑えて良い打ち出し。

昼の部は大御所も出ないし、かといって若手中心の花形公演でもない。話題性には乏しいが、中堅がそれぞれ責任を果たして、十分面白かった。
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