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秀山祭九月大歌舞伎 昼の部 [舞台]

歌舞伎座

1709歌舞伎座a.jpg
10回目を迎えた秀山祭。播磨屋らしい演目が並んだ。

一、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
毛谷村
毛谷村六助   染五郎
お園       菊之助
杣斧右衛門   吉之丞
お幸       吉弥
微塵弾正実は京極内匠   又五郎

発端の杉坂墓所の場はなく、いきなり六助と弾正の立ち会いから始まる形。
弾正は又五郎で、ふてぶてしい様子がうまい。

染五郎の六助は播磨屋に習った様子がよく見えるが、播磨屋よりさらに一段明るい。
もうちょっともっさりした感じもあってもいい気がするが、まさに気は優しくて腕は立つ、と言う六助の美徳がくっきり見えて気持ちいい。子供をあやす優しさが微笑ましい。態度が一変するお園に振り回される様子が可愛い。師の娘で許嫁とわかってからのいちいち照れた様子とか、ほんとに気のいい男なんだな、という感じ。弾正に騙されたとわかっての怒りに、一転して武人らしい凜々しさがあふれてお園でなくても惚れ惚れ。

菊之助のお園は女武芸者のキリリとした様子から、六助が親の決めた許嫁と知っての豹変ぶりがなんとも可愛くいじらしい。でも何故か姉さん女房っぽく見えちゃったのはどうしてだろうね。

吉弥のお幸が品のある後室で、登場の時のちょっと不思議なおばあさんの雰囲気も良く(切り餅の投げ合いがちゃんとあったのはうれしい)、上々の出来。まだ老け役にはもったいないが、今後増えるかもしれない。
子役も達者で、後味の良い舞台。

仮名手本忠臣蔵
二、道行旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいり)
戸無瀬   藤十郎
小浪    壱太郎
奴可内   隼人

藤十郎は、去年顔見世の時より体が動いてなくて少し心配。存在感はさすがにたっぷりだけれど。
壱太郎の小浪は可憐。
この二人で九段目をと思っていたが、もう無理かもしれないなあ。でも八段目だけでもやれて良かった。
隼人の奴は月初は腰が高くて踊れてなかったが、楽にはだいぶ良くなってキビキビした動きも良かった。まあ、手足が長くて奴向きの体型ではないけれど。

河竹黙阿弥 作
三、極付 幡随長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」
幡随院長兵衛    吉右衛門
水野十郎左衛門   染五郎
近藤登之助     錦之助
子分極楽十三    松江
同 雷重五郎    亀鶴
同 神田弥吉    歌昇
同 小仏小平    種之助
御台柏の前     米吉
伊予守頼義     児太郎
坂田金左衛門    吉之丞
慢容上人      橘三郎
渡辺綱九郎     錦吾
坂田公平/出尻清兵衛   又五郎
唐犬権兵衛    歌六
長兵衛女房お時   魁春

吉右衛門の長兵衛は何度見てもかっこいい。貫禄十分で、村山座で水野の子分をやっつける姿の颯爽とした様子に惚れ惚れ。だが何より素晴らしいのは台詞の調子。村山座や水野邸での啖呵はもとより、水野の屋敷に行くと決めた後の述懐や女房子供に聞かせる遺言の言葉の一つ一つが際立って胸に響き深く心に届いて震える。声色、調子、間、どこにも隙がなく聞き惚れるとはこのことか。今までも素晴らしかったが、今回は特に名調子に深みが増し、磨きがかかり、酔いしれた。ひたすら男として人間として大きく、だが家庭人としての悲しみもしっかり見せて、存在のすべてに圧倒された。

女房お時は魁春、このコンビはちょっと久しぶりかも。好きな組み合わせなのでうれしかった。控えめながらしっかりと情を伝える世話女房。着替えを手伝いながら、口に出さずとも交わす夫婦の情愛の深さに涙。

水野は染五郎だが、いかんともしがたい貫禄不足。まあ卑怯卑劣な旗本としてはあれくらいで良いのかもしれないけど、やはり水野は長兵衛と同格くらいの役者がやってくれないと、見ていて気分が悪い。こんな奴に殺されるのかよ!とかなっちゃう(苦笑)。
錦之助も最近増えてきた悪役だが、幕切れ、なんとなく播磨屋を見る目が「兄さん、かっこいいなああ」と言ってるように見えた(笑)。

又五郎が「公平問答」の公平から出尻へ早替わりで二役。全然違う役だし、何より公平の赤っつらから出尻へよく間に合うな~、と感心。そしてどちらも味があってうまい。
歌六の唐犬が渋い。

劇中劇の児太郎が何年か前のリベンジを果たした。ほんっとに下手だったんだよあの頃。よくここまで成長したなあ、と妙に感動してしまった。

吉之丞が持ち役だった舞台番から水野の家来に昇格していた。
その舞台番は吉兵衛に受け継がれ。
児太郎の件共々時の流れを感じる。


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