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三谷文楽「其礼成心中」 [舞台]

8月20日(月) パルコ劇場

それなり心中.jpg

人気脚本家の三谷幸喜が書き下ろした新作文楽。
近松の名作「曽根崎心中」を受けての「裏版"曽根崎心中"」。

普通の文楽のように上手に床があるのではなく、舞台正面上部に大夫と三味線が並び、その手前で人形が動く。時々スポットライトなども使って照明に工夫があるのも古典とは違うところ。

詞章はわかりやすい現代語。時折カップル、ライバル、カミングアウト、などのカタカナ語も織り交ぜるが意外にも違和感は少ない。これは作曲の清介の手柄だろう。大夫の語りと三味線がしっかりした義太夫節になっていて、無理なく文楽の作品となっていたのに感心した。
それにやはり言葉が大阪弁なのが大きい。文楽はやはり上方文化なんだな~、と改めて感じた。

ストーリーは三谷らしいコメディだが、テレビや映画の作品に比べると淡い可笑しさにとどまったのはまだ三谷に文楽への遠慮があるのかも。

出演者は中堅若手。
義大夫は呂勢・清志郞、千歳・清介が中心。場面ごとに交替とはいえ、2時間の演目を1日2回公演。かなり大夫にはきつかったと思うが、気迫でノリの良い語りを聞かせた。

人形の方は人数が少ないため一人二役の人も。
主な役は一輔の半兵衛、玉佳のおかつ・九平次、幸助の六助・近松、紋臣のおせん、紋秀のおふく他。
基本はあくまで伝統的な文楽の人形の動きだが、若い二人のラブシーンや、終盤の水中シーンでの動きなどは普通では見られないものも取り入れて新鮮。
みな本公演ではまだまだ主役はやれない人たちだが、あらこんなに上手いんだわ、とちょっとビックリ(失礼)。みなさん文字通り体当たりの熱演という様子で、古典だとちょっと行儀悪いかな、と言うような動きもこの芝居だとすんなり自然に受け止められる。
幕切れ、階段を登っていくような半兵衛とおかつの姿が、かわいくてなんだか宝塚っぽ~い!とか、ちょっと笑えた。

斬新、とか、突飛、と言うほど現代風ではなく、かといって擬古典というのでもない。初めて文楽を見る人には目新しく、古くからの文楽ファンも安心して観ていられる、上手いところに落ち着いたという印象。物語も、文楽で大事な「人の情」が伝わる暖かい内容で、笑ってちょっとほろっと来て、気持ちよく見終わることができた。

最後には文楽ではまずないカーテンコールも。やっと頭巾をとって顔を見せた人形遣いさんたちの晴れやかな表情が心に残り、大夫さんたちが手を振ってくれる様子になんかほっこり。

ぜひ大阪でも上演してほしいな。

出演
竹本千歳大夫 豊竹呂勢大夫 豊竹睦大夫 豊竹靖大夫 
鶴澤清介 鶴澤清志郎 鶴澤清丈 鶴澤 清公 
吉田 幸助 吉田 一輔 吉田 玉佳 桐竹 紋臣 桐竹 紋秀 吉田 玉勢 吉田 簑紫郎
吉田 玉翔 吉田 玉誉 吉田 簑次 吉田 玉彦 吉田 玉路 吉田 簑之
タグ:文楽
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コメント 2

そらへい

文楽というと、古典にこり固まっていそうに思いますが
人気脚本家の新作もあるんですね。
大阪でもこういうのどんどん演じて
橋本市長にとやかく言われないようにすべきですね。
by そらへい (2012-08-27 20:47) 

mami

そらへいさん、
数は少ないですが、文楽も新作はちょこちょこやってます。
でも三谷さんのように他の世界で名が売れてる方がはじめから文楽のために作られたのは珍しいですね。
ぜひ大阪でもやって、若いお客さんを呼んでほしいです!
by mami (2012-08-28 10:51) 

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