平成中村座12月夜の部 [舞台]
12月25日(日)
考えてみたらこの日は世間はクリスマス。ま~ったくなんのそれらしいイベントもなく中村座で一日過ごす(苦笑)。
入れ替え時間は腰を伸ばすためにも外に出て、近くの待乳山聖天に参ってみた。思ったより小さいけど、天井には立派な龍の絵があって、来年の初詣にはよさそう。
開場時間より早く戻ってきて前で待っていたら、ぽつぽつと雨が。傘なくて困ったな、と思っていたら時間前なのに建物の外の敷地内の屋根のあるところまで入れてくれた。心遣いが嬉しかった。
一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
葛の葉(くずのは)
女房葛の葉/葛の葉姫 扇 雀
安倍保名 松 也
信田庄司 亀 蔵
8月に亀治郎でも観たがあちらは京屋型とのこと。扇雀は成駒屋型とでも言うのだろうか。いちばん違うのは最後の引っ込み。こちらは引き抜いて狐の衣装になって引っ込む。前に扇雀がやった時は確か宙乗りもしていたが、今回は小屋に設備がなかったのだろう、それはしなかった。
扇雀はどこが悪いというわけではなく、やることはやっているのだが、なんだか今ひとつ心に響かない。どこか理詰めでやっている感じがしてしまうんだな。だから間違ってはいないんだけど、情が薄く感じられる。また、この葛の葉のような役では、もう少し古風なじんわりした味わいが欲しい気がした。
松也が抜擢に応えて良く務めた。気品のある二枚目振りが良い。顔が亡くなったお父さんに似てきたように見えてハッとした。
亀蔵はこちらでは実直な父親の風情。今月はこの人もいろんな役をやったなあ。
二、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
関守関兵衛実は大伴黒主 勘太郎
傾城墨染実は小町桜の精 菊之助
小野小町姫 七之助
良峯少将宗貞 扇 雀
夜の部でいちばん見応えがあったのはこれ。
なんと言っても勘太郎の関兵衛の踊りが舌を巻くうまさと面白さ。本当に勘太郎の踊りは観ていて胸のすくような気持ち良さがある。その上関兵衛の大きさ、おおらかさ、太味な風情もあり、さらに大伴黒主と顕してからは古怪な不気味さもあり、今月いちばんの出来。
来年2月には勘九郎を襲名するので、今月これが勘太郎としての最後の舞台。襲名後がますます楽しみ。
墨染と小町を同じ人がやる場合もあるが今月は別。
七之助の小町姫は赤姫の衣装もよく似合い、品の良い美しさが目を引く。ほんと綺麗になったなあ。宗貞に会ってからのところはもう少し色気も欲しいところ。
扇雀の宗貞は、すっきりした二枚目で行儀良い。扇雀は立ち役の方が私は好き。
菊之助の墨染に、怪しさと色気があり、今月唯一の女形だが息を呑むほど美しい。関兵衛との廓でのやりとりが色っぽくも淡いおかしみがあってみせる。終盤、小町桜の精と顕してからは人ならぬもののただならぬ気配が怪しげで、しかし儚さもあり、勘太郎との踊りも美しさの中に緊張感もあり、立派。
先月の道成寺も思えば人ではなかった。そういういわば超人的な美しさを感じさせる凄味さえ備わってきた、最近の菊之助である。
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
両国橋の場
松浦邸の場
同 玄関先の場
松浦鎮信 勘三郎
大高源吾 菊之助
お縫 七之助
宝井其角 彌十郎
この松浦侯は吉右衛門の当たり役で、ほんとに屈託なく楽しめるお芝居。
こういう、お客を楽しませる役は勘三郎の得意とするところ。ただ、吉右衛門と比べてしまうからかもしれないが、この人はお殿様役者ではない。生まれついての大名の鷹揚な味は薄い。せいぜい旗本だな、と言ったらご贔屓は怒るだろうが。
とは言え、其角やお縫いに怒っていたかと思えば、討ち入りと聞いて途端に機嫌が直る、お天気屋のちょっと困った、でも気の良い殿様を本人も楽しげに演じていて、観客も大喜び。
彌十郎の其角が暖かく、源吾やお縫いへの優しさがほんわかとした様子で良かった。
七之助のお縫いも可憐で、心細げな風情がぴったり。
菊之助は今度は源吾で、序幕ではみすぼらしいなりの中に秘めたものがある芯の通った様子。終幕では凛々しい討ち入り装束で、主君への忠義に溢れる姿が潔く美しい。
とにかく文句なしに楽しい演目で理屈抜きに楽しめた。
今月の中村座は勘三郎の復調振り、勘太郎の勢い、七之助の進歩を感じたが、でもやっぱりいちばんは菊之助の大活躍。菊ちゃん凄いな。正直言って勘太郎がかすんだ。来月の雪姫も楽しみ。
ところで、
感想とは離れますが、前の記事でこのブログ700本目になりました。我ながら良く続いてるなあ。これも読んで下さる方がいらっしゃるからです。これからもよろしくお願いします。
考えてみたらこの日は世間はクリスマス。ま~ったくなんのそれらしいイベントもなく中村座で一日過ごす(苦笑)。
入れ替え時間は腰を伸ばすためにも外に出て、近くの待乳山聖天に参ってみた。思ったより小さいけど、天井には立派な龍の絵があって、来年の初詣にはよさそう。
開場時間より早く戻ってきて前で待っていたら、ぽつぽつと雨が。傘なくて困ったな、と思っていたら時間前なのに建物の外の敷地内の屋根のあるところまで入れてくれた。心遣いが嬉しかった。
一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
葛の葉(くずのは)
女房葛の葉/葛の葉姫 扇 雀
安倍保名 松 也
信田庄司 亀 蔵
8月に亀治郎でも観たがあちらは京屋型とのこと。扇雀は成駒屋型とでも言うのだろうか。いちばん違うのは最後の引っ込み。こちらは引き抜いて狐の衣装になって引っ込む。前に扇雀がやった時は確か宙乗りもしていたが、今回は小屋に設備がなかったのだろう、それはしなかった。
扇雀はどこが悪いというわけではなく、やることはやっているのだが、なんだか今ひとつ心に響かない。どこか理詰めでやっている感じがしてしまうんだな。だから間違ってはいないんだけど、情が薄く感じられる。また、この葛の葉のような役では、もう少し古風なじんわりした味わいが欲しい気がした。
松也が抜擢に応えて良く務めた。気品のある二枚目振りが良い。顔が亡くなったお父さんに似てきたように見えてハッとした。
亀蔵はこちらでは実直な父親の風情。今月はこの人もいろんな役をやったなあ。
二、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
関守関兵衛実は大伴黒主 勘太郎
傾城墨染実は小町桜の精 菊之助
小野小町姫 七之助
良峯少将宗貞 扇 雀
夜の部でいちばん見応えがあったのはこれ。
なんと言っても勘太郎の関兵衛の踊りが舌を巻くうまさと面白さ。本当に勘太郎の踊りは観ていて胸のすくような気持ち良さがある。その上関兵衛の大きさ、おおらかさ、太味な風情もあり、さらに大伴黒主と顕してからは古怪な不気味さもあり、今月いちばんの出来。
来年2月には勘九郎を襲名するので、今月これが勘太郎としての最後の舞台。襲名後がますます楽しみ。
墨染と小町を同じ人がやる場合もあるが今月は別。
七之助の小町姫は赤姫の衣装もよく似合い、品の良い美しさが目を引く。ほんと綺麗になったなあ。宗貞に会ってからのところはもう少し色気も欲しいところ。
扇雀の宗貞は、すっきりした二枚目で行儀良い。扇雀は立ち役の方が私は好き。
菊之助の墨染に、怪しさと色気があり、今月唯一の女形だが息を呑むほど美しい。関兵衛との廓でのやりとりが色っぽくも淡いおかしみがあってみせる。終盤、小町桜の精と顕してからは人ならぬもののただならぬ気配が怪しげで、しかし儚さもあり、勘太郎との踊りも美しさの中に緊張感もあり、立派。
先月の道成寺も思えば人ではなかった。そういういわば超人的な美しさを感じさせる凄味さえ備わってきた、最近の菊之助である。
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
両国橋の場
松浦邸の場
同 玄関先の場
松浦鎮信 勘三郎
大高源吾 菊之助
お縫 七之助
宝井其角 彌十郎
この松浦侯は吉右衛門の当たり役で、ほんとに屈託なく楽しめるお芝居。
こういう、お客を楽しませる役は勘三郎の得意とするところ。ただ、吉右衛門と比べてしまうからかもしれないが、この人はお殿様役者ではない。生まれついての大名の鷹揚な味は薄い。せいぜい旗本だな、と言ったらご贔屓は怒るだろうが。
とは言え、其角やお縫いに怒っていたかと思えば、討ち入りと聞いて途端に機嫌が直る、お天気屋のちょっと困った、でも気の良い殿様を本人も楽しげに演じていて、観客も大喜び。
彌十郎の其角が暖かく、源吾やお縫いへの優しさがほんわかとした様子で良かった。
七之助のお縫いも可憐で、心細げな風情がぴったり。
菊之助は今度は源吾で、序幕ではみすぼらしいなりの中に秘めたものがある芯の通った様子。終幕では凛々しい討ち入り装束で、主君への忠義に溢れる姿が潔く美しい。
とにかく文句なしに楽しい演目で理屈抜きに楽しめた。
今月の中村座は勘三郎の復調振り、勘太郎の勢い、七之助の進歩を感じたが、でもやっぱりいちばんは菊之助の大活躍。菊ちゃん凄いな。正直言って勘太郎がかすんだ。来月の雪姫も楽しみ。
ところで、
感想とは離れますが、前の記事でこのブログ700本目になりました。我ながら良く続いてるなあ。これも読んで下さる方がいらっしゃるからです。これからもよろしくお願いします。
ブログで700本の記事の達成おめでとうございます。歌舞伎、文楽の記事を楽しみに読ませていただいております。18日に平成中村座の夜の部を見に行きました。浅草に行ったのも初めてだったので、浅草の人出に驚き、スカイツリーをみて感激し、しっかりとお上りさんをしました。平成中村座をみるのも初めてで、前の方は席が広いのかとチケットを取ったら、座イスだったので、足が痛くて往生しましたが、常設の劇場とは違う雰囲気が味わえました。1月3日の文楽の2部、席は8列4番です。お声をかけていただければ幸いです。
by nori (2011-12-29 23:21)
noriさん、いつもお読みいただきありがとうございます。
中村座にいらしたんですね~!芝居小屋らしい雰囲気も楽しめる良いところですよね。
浅草は年中人が多いですが活気があって、仲見世をぶらぶらするだけでもなんだか楽しいです。ぜひまたいらして下さい。
3日もお目にかかれたら嬉しいです。
by mami (2011-12-30 00:47)
mamiさま、
記事700本目達成、おめでとうございます!
菊ちゃんの道成寺、おっしゃる通り人を超越した世界に到達していましたよね。菊ちゃんの存在感が中村座でもしっかり輝いていたようで、何よりです。
2012年の初芝居は新橋演舞場夜の部を予定しています。吉右衛門丈と鷹之資くんの連獅子、とても楽しみです!
今年もブログを通じてお付き合いくださいまして、まことにありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
by ★とろりん★ (2011-12-31 13:48)
とろりんさん、こちらこそ、今年もお付き合いいただきありがとうございました。
今年の菊ちゃんの充実ぶりには目を見張りました。これからも目が離せませんね~!
1月演舞場の連獅子は演目が発表になった時から楽しみで仕方ありません!
来年もカンゲキライフ続けて行きましょうね!
by mami (2011-12-31 21:07)