平成中村座11月夜の部 [舞台]
11月20日(日)
前日と打って変わって良い天気。浅草はいつ行っても人がいっぱい。
今日の席は2階、右側真ん中あたり。思ったほど舞台端も見切れなくて、良いかも。
一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若 勘太郎
出雲の阿国 七之助
奉行板倉勝重 彌十郎
勘三郎の襲名披露公演でも上演された、中村屋には縁の演目に息子達が挑む。話としては他愛のないものだが、眼目は踊り。勘太郎の抜群の体の切れに目を見張る。きびきびとした動きに、ぶれない下半身。そういや、勘太郎の踊りを観るの久しぶりか、ますます上手くなったねえ。今月に限れば、勘三郎の「お祭り」よりこっちが踊りとしては見応えあった。
今月は演舞場で菊之助と松緑、中村座で勘太郎、と若手花形の勢いを感じることができて幸せ。
七之助の阿国は、まるでお人形のような美しさ。逆に阿国にしては上品すぎないかと言う気もする。もう少し洒落っ気や芝居っ気が欲しい。
二、伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
沼津
呉服屋十兵衛 仁左衛門
お米 孝太郎
池添孫八 彌十郎
雲助平作 勘三郎
昨年南座顔見世以来の仁左衛門の沼津。この時は我當の平作、秀太郎のお米という三兄弟共演が話題だった。今回は息子の孝太郎がお米、そして平作に勘三郎が付き合う。
仁左衛門は全てサラサラと事を運んでいく。運ぶという言葉も合わないくらい。それでいて十兵衛の情の篤さや色気、男気は溢れんばかり。
序盤での平作との何気ないやりとりだけで十兵衛の人柄が十分にわかる。
そしてお米に一目惚れしての、浮き浮きした様子の可愛いこと。なのに、嫁にと言って断られてしょぼんとした様子が何とも母性本能をくすぐる。
そして二人が肉親とわかってからの持って行き方の濃さと緊張感は半端ないのだが、そこでもやはりごく自然にさりげなく最後のクライマックスに進んでいく。
死にかけた平作を前にしての慟哭に情が溢れて、こちらも号泣。
まさに円熟の極み。
それに比べると、勘三郎の平作はまだまだ作為が鼻につく感じがしてしまう。いや上手いんだ。上手いんだけど、いかにも年寄り臭い足の運びとか、序盤の十兵衛とのやりとりで客を笑わせるところとか、「やってる」って感じがしてしまうんだよな。まあ、まだ若い人が老け役をやる難しさが出てる感じ。
孝太郎のお米が上出来。みすぼらしいなりの中に元はならした傾城の華と色気が隠しきれない様子があり、夫を思う切なさ、自分の置かれた境遇への嘆きに身をよじるようなクドキがよい。
昼の局も良かったけど、今月は大役二つ良くこなしたよねえ。
孝太郎とか松緑とか、言っちゃなんだけど美形で売ってきたんじゃない人がこつこつ実力を蓄えて花開いていくのを見るのは本当に嬉しい。実力がつくと、不思議と舞台映えする顔になってくるんだよね。今月、二人ともほんとに綺麗だもの。
冒頭の棒鼻の場面で小山三が場をさらってたなあ。91歳で若妻妊婦役!もう歌舞伎界の宝だよね。出てくるだけでみんなが幸せ。
三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
浜松屋より勢揃いまで
弁天小僧菊之助 七之助
南郷力丸 勘太郎
赤星十三郎 新 悟
浜松屋伜宗之助 国 生
忠信利平 彌十郎
日本駄右衛門 橋之助
七之助の菊之助、私は去年の時の方が良かったと思う。たぶん今回は自分らしさをより出そうと工夫してるんだろうな、と思うがそれが煩い。滑稽味がありすぎ。まあ、見方によっては面白味が増したとも言えるだろうが、緩急の付け方とか、まだ自分のものにできていない感じ。
とは言え、前半のお嬢様の様子はうっとりするほど綺麗で可愛くて素敵だったなあ。
それが男とばれて赤い襦袢一枚になった時、もろ出しにした脚の色っぽいことよ。
一方勘太郎の南郷は去年よりも一回り大きくなって立派。江戸前のすぱっとした男らしさが小気味良い。弁天の兄貴分の貫禄もあり、惚れ惚れする格好良さ。
橋之助の日本駄右衛門は大きさ貫禄とも十分で錦絵のよう。
勢揃いでは、新吾の赤星が柔らかみを見せて周りに見劣りしなかったのは立派。
今月は、ともかく勘三郎が無事に復帰して1ヶ月の本公演を休むことなく出演してくれたのがなにより。
まだ半年中村座は続くし、2月には勘太郎の勘九郎襲名という大きな行事も控えている。無理しないでと言っても難しいだろうが、がんばりすぎないでスローペースで良いのでやっていっていただきたいと思う。
前日と打って変わって良い天気。浅草はいつ行っても人がいっぱい。
今日の席は2階、右側真ん中あたり。思ったほど舞台端も見切れなくて、良いかも。
一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若 勘太郎
出雲の阿国 七之助
奉行板倉勝重 彌十郎
勘三郎の襲名披露公演でも上演された、中村屋には縁の演目に息子達が挑む。話としては他愛のないものだが、眼目は踊り。勘太郎の抜群の体の切れに目を見張る。きびきびとした動きに、ぶれない下半身。そういや、勘太郎の踊りを観るの久しぶりか、ますます上手くなったねえ。今月に限れば、勘三郎の「お祭り」よりこっちが踊りとしては見応えあった。
今月は演舞場で菊之助と松緑、中村座で勘太郎、と若手花形の勢いを感じることができて幸せ。
七之助の阿国は、まるでお人形のような美しさ。逆に阿国にしては上品すぎないかと言う気もする。もう少し洒落っ気や芝居っ気が欲しい。
二、伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
沼津
呉服屋十兵衛 仁左衛門
お米 孝太郎
池添孫八 彌十郎
雲助平作 勘三郎
昨年南座顔見世以来の仁左衛門の沼津。この時は我當の平作、秀太郎のお米という三兄弟共演が話題だった。今回は息子の孝太郎がお米、そして平作に勘三郎が付き合う。
仁左衛門は全てサラサラと事を運んでいく。運ぶという言葉も合わないくらい。それでいて十兵衛の情の篤さや色気、男気は溢れんばかり。
序盤での平作との何気ないやりとりだけで十兵衛の人柄が十分にわかる。
そしてお米に一目惚れしての、浮き浮きした様子の可愛いこと。なのに、嫁にと言って断られてしょぼんとした様子が何とも母性本能をくすぐる。
そして二人が肉親とわかってからの持って行き方の濃さと緊張感は半端ないのだが、そこでもやはりごく自然にさりげなく最後のクライマックスに進んでいく。
死にかけた平作を前にしての慟哭に情が溢れて、こちらも号泣。
まさに円熟の極み。
それに比べると、勘三郎の平作はまだまだ作為が鼻につく感じがしてしまう。いや上手いんだ。上手いんだけど、いかにも年寄り臭い足の運びとか、序盤の十兵衛とのやりとりで客を笑わせるところとか、「やってる」って感じがしてしまうんだよな。まあ、まだ若い人が老け役をやる難しさが出てる感じ。
孝太郎のお米が上出来。みすぼらしいなりの中に元はならした傾城の華と色気が隠しきれない様子があり、夫を思う切なさ、自分の置かれた境遇への嘆きに身をよじるようなクドキがよい。
昼の局も良かったけど、今月は大役二つ良くこなしたよねえ。
孝太郎とか松緑とか、言っちゃなんだけど美形で売ってきたんじゃない人がこつこつ実力を蓄えて花開いていくのを見るのは本当に嬉しい。実力がつくと、不思議と舞台映えする顔になってくるんだよね。今月、二人ともほんとに綺麗だもの。
冒頭の棒鼻の場面で小山三が場をさらってたなあ。91歳で若妻妊婦役!もう歌舞伎界の宝だよね。出てくるだけでみんなが幸せ。
三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
浜松屋より勢揃いまで
弁天小僧菊之助 七之助
南郷力丸 勘太郎
赤星十三郎 新 悟
浜松屋伜宗之助 国 生
忠信利平 彌十郎
日本駄右衛門 橋之助
七之助の菊之助、私は去年の時の方が良かったと思う。たぶん今回は自分らしさをより出そうと工夫してるんだろうな、と思うがそれが煩い。滑稽味がありすぎ。まあ、見方によっては面白味が増したとも言えるだろうが、緩急の付け方とか、まだ自分のものにできていない感じ。
とは言え、前半のお嬢様の様子はうっとりするほど綺麗で可愛くて素敵だったなあ。
それが男とばれて赤い襦袢一枚になった時、もろ出しにした脚の色っぽいことよ。
一方勘太郎の南郷は去年よりも一回り大きくなって立派。江戸前のすぱっとした男らしさが小気味良い。弁天の兄貴分の貫禄もあり、惚れ惚れする格好良さ。
橋之助の日本駄右衛門は大きさ貫禄とも十分で錦絵のよう。
勢揃いでは、新吾の赤星が柔らかみを見せて周りに見劣りしなかったのは立派。
今月は、ともかく勘三郎が無事に復帰して1ヶ月の本公演を休むことなく出演してくれたのがなにより。
まだ半年中村座は続くし、2月には勘太郎の勘九郎襲名という大きな行事も控えている。無理しないでと言っても難しいだろうが、がんばりすぎないでスローペースで良いのでやっていっていただきたいと思う。
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