SSブログ

国立劇場5月文楽公演第二部 [舞台]

5月10日(火)

東博の「写楽展」をぎりぎりまで見たいたので、移動して劇場に着いたのが開演5分前くらい。プログラムを買って客席に向かおうとしたら、ロビーで勘十郎さんたちが募金呼びかけをされていて、「今しか勘十郎さんに近づけない!」と焦って、よく確かめずにお財布からお札を出して募金箱に入れてから、千円札と間違えて5千円札を入れてしまったことに気がつきました……。ひぃぃ、貧乏人なのに。でも返してとも言えず……。(T_T)まあ、いいや。募金できる立場なだけ幸せと思わなくちゃね。

一・二人禿(ににんかむろ)
南都・睦・希・咲寿・小住、團吾・清馗・清公・錦吾
人形:文昇、一輔

廓の禿二人が羽根突きをしたり、鞠つきをしたりして遊ぶ姿が何とも可愛い。顔を寄せてひそひそ話をする仕草とか、子供らしくて初々しい様子を文昇と一輔が生き生きと見せた。
義太夫も掛け合いで賑やかな、短いが楽しい一幕。

二・絵本太功記(えほんたいこうき)
    夕顔棚の段 文字久・宗助、
    尼ケ崎の段 英・清介、咲・燕三
文雀のさつき、勘十郎の光秀、和生の操、簑二郎の初菊、玉志の久吉、勘彌の十次郎、簑一郎の正清

先月は歌舞伎で上演があったばかりの「太十」。ただし歌舞伎では「尼崎の段」だけだったので、あれっ?と思っちゃった。やはり夕顔棚からやらないと、久吉がこの家に入り込んでいたのが唐突に見えるし、さつきの気概もよく見えない。

眼目は文雀のさつき。さすが武家の後室らしい、頑固なまでに気骨のある、凛と筋の通った老女を気品をもって見せた。こういう武家女の役は、さすが右に出る人はいない。残念ながら、この数日後から休演されているとのこと、どうかお大事になさって、まだまだ素晴らしい舞台を見せていただきたい。

勘十郎の光秀は襲名公演以来か。襲名前は女形が多かったので、襲名披露がこの演目だったのは正直驚いたが、その後立ち役でもめざましい成長を見せてこの頃は立ち役の方が多いくらいかも。今回の光秀も、スケールが大きく、手足が良く伸びて、貫禄があり、一方で母と息子を同時に失う悲劇の武将という辛さ悲しさも見せてさすがの出来。

和生の操もすっきりとした品のある様子が美しく、光秀に意見する場での仕草が後ろ振りなども交えてきれい。

文字久がさつきの孫への愛情をじっくり聞かせた。
英・清介も十次郎の出陣前の苦悩と初菊のクドキを哀れさを込めて語った。
圧巻は咲大夫と燕三で、光秀の大きさ、老女と孫の最後の儚さなどを力強く豪快に語って、迫力いっぱい。勢いという点では今いちばんのコンビだろう。さすがの聞き応え。燕三さんって、あんなにバキバキ弾いてよく三味線の皮破いたり弦切ったりしないなあ。

歌舞伎と違うのは、幕切れで初菊が髪を下ろして出てくるのと、光秀が夕顔棚に実ったひょうたんをザ~ッと切って落とすところかな。(ひょうたんは久吉(秀吉)の馬印だからね)

三・生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)
    明石浦船別れの段 睦・咲甫・文字栄、喜一朗、龍爾(琴)
    宿屋の段  嶋・團七、寛太郎(琴)
    大井川の段 呂勢・清志郞

簑助の深雪(朝顔)、玉女の阿曽次郎、玉輝の徳右衛門、勘緑の岩代

簑助さんが恋する女を遣ったら、生身の役者だってかなわない。この深雪も、明石浦での楚々とした良家のお嬢さんが恋のために駆け落ちしようとするほどの一途さ、宿屋での零落してみすぼらしい姿になっても男を慕う哀れさ、大井川では絶望から身を投げようとする狂おしさ、と様々な姿を見せながら、一貫するのは男への愛である。一途で健気で哀れで情熱的。ううん、すごいものをまた見せてもらいました。

玉女の阿曽次郎の方は、あまり施所がなくて可哀想だが、すっきりとした二枚目振り。
しかしこの阿曽次郎、ほんとはあほ次郎じゃないのかと言った人がいたが(誰か忘れた)、ほんとにもうちょっとなんとかできんのかね、と思ってしまって、二枚目だけど好きじゃないわ。

嶋大夫の語りが絶品。深雪(朝顔)の身の上話を哀れを溢れんばかりに語り、見守るしかない阿曽次郎の苦悩を聴かせた。幕切れ、朝顔が先の客が阿曽次郎だったと知ったときの狂乱に悲痛さがあり、泣き崩れる朝顔の「しらなんだ、しらなんだ」の絶叫が耳に残る。
この場では寛太郎の琴も美しい音色を聴かせた。朝顔が本当に弾いてるように見えるのは、上手いなあ。

大井川の段での呂勢と清志郞も急展開する場面を緊迫感をもって聴かせてなかなかの出来。特に清志郞の三味線がよく鳴って盛り立てて立派。

本当はこの宿屋の前に「笑い薬の段」というのがあって、テレビでしか見たことがないのだが、それは可笑しい場面で一度生で観たいのだがまだ果たせず、今回もなくてとても残念。

東京公演は、平日でも普段はほとんど満席なのに今回は空席が目立った。珍しいことだが、文楽の人気がなくなったのではなく、まだ地震の後の自粛ムードや外出の手控え気分があるのだろう。舞台の他に募金活動までされている技芸員さんたちには気の毒だが楽までどうか頑張っていただきたいです。
nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 3

コメント 2

そらへい

5000円は痛いですが、募金に使われると思うと
許せますかね。
by そらへい (2011-05-21 00:34) 

mami

そらへいさん、
ま~、しょうがないですねぇ(笑)
勘十郎さんはじめ、技芸員の方々に揃って頭下げられちゃ、入れないわけにまいりませんわ。
by mami (2011-05-21 22:57) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました