松竹座壽初春大歌舞伎・昼の部 [舞台]
1月4日(火)
前日の文楽に続いて歌舞伎の観劇初め。ここ数年、松竹座の正月公演は昼夜とも観ているのだが、今年は夜の演目がいまいちだったので昼の部だけにした。だってお正月から人間豹なんておどろおどろしいの観たくないよ。染ちゃんには悪いけど。
一、玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)
第一場 向島晋其角寓居の場
第二場 土屋邸奥座敷の場
土屋主税 翫 雀
大高源吾 染五郎
晋其角 橘三郎
落合其月 薪 車
侍女お園 扇 雀
赤穂浪士の吉良邸討ち入りに題材を取った「松浦の太鼓」を、初代雁治郎のために書き換えた狂言。明治40年初演と言うことで、新歌舞伎と言って良いのだろう。同じシチュエーションなのに「松浦の太鼓」に比べると、台詞も理屈っぽいものが多いし、「仕官することになった」と嘘をついてそれとなく別れに来た源吾を、其角と其月が非難するのもなんだかしつこくて、そこまで言わなくても良いじゃん、と思ってしまった。なんだか無邪気に楽しめない芝居。「松浦の太鼓」を知らなければそれなりに面白いのかもしれないが、どうしても比べてしまうからいけない。
役者はみな良くやっていると思うけれど、翫雀ははっきり言ってお殿様役者ではないし、おおらかさが持ち味でもあるから、どうせならむしろ松浦のお殿様の方が良い味が出たと思う。ただ残念ながらこちらが家の芸だから、松浦侯をやることはないだろうけど。
染五郎は前半は辛抱役。終盤は颯爽としてはまり役。
扇雀が楚々とした味で好演。
二、男の花道(おとこのはなみち)
加賀屋歌右衛門 藤十郎
万八女将お時 秀太郎
加賀屋歌之助 染五郎
加賀屋歌五郎 錦 吾
田辺妻富枝 吉 弥
加賀屋東蔵 竹三郎
田辺嘉右衛門 翫 雀
土生玄碩 幸四郎
長谷川一夫で映画になった話を逆に歌舞伎化した作品とか。まったく初見。映画も観てません。
新作歌舞伎らしく、音楽が黒御簾ではなくスピーカーから流れるのだが、それがまあ、ひょっとしてその長谷川一夫の映画のサントラ?と思うような古くさいオーケストラ音楽でずっこけそうになった。全然歌舞伎じゃないのよね。江戸時代からの清元などを聞いてもちっとも古いと感じないのに、こういう音楽の方がわずか50年かそこらで古色蒼然としてしまうのはなぜなんだろう。脚本や演出は上演のたびに多少手直しするだろうに、音楽はそのままというのは手抜きだと思う。やっぱり歌舞伎の伴奏音楽は長唄とかで作ってほしいわ。
藤十郎の歌右衛門は当たり役というだけあってさすがに魅力たっぷり。芸に生きながら、恩義を忘れない熱い造形。ただ、ずーっと女形の姿なので、男なのか女なのかわからなくなることも少々あり…(笑)。劇中劇では「伊達娘恋緋鹿子」の八百屋お七の人形振りも少しだけど見せてくれるサービス。これ、本役で観たことないよな。
幸四郎の玄碩は初役とのことだが、黙阿弥などの世話物の時のような無理さがなくて自然な演技でなかなかのはまり役と見た。腕は確かだが、無骨で一本気、世渡り下手な医者のまじめさが良く出て上々。
でもこの話の眼目、玄碩が歌右衛門を呼び出す理由が、宴席で自分が余興をやるのが嫌で断ったのが発端、というのも大人げないというか。ま、それで歌右衛門が来なかったら切腹しろという田辺も無茶で、「走れメロス」じゃあるまいし、みたいな展開にあきれてしまった。
その田辺は翫雀で、これもちょっとニンじゃなさそうだが、さすがに芸達者な人なのでそれなりに見せてしまうところはさすが。
秀太郎の茶屋の女将が、ちょい役なのに、いかにもという様子でさすがに上手い。
竹三郎の東蔵も良い味。
今月昼の部は二つとも新歌舞伎で、お正月にはちょっとなあ、という気がした。夜も「吉田屋」はともかく人間豹ってどうよ~。なんだか、役者がやりたいものと観客が観たいものが乖離しているような気がする。
前日の文楽に続いて歌舞伎の観劇初め。ここ数年、松竹座の正月公演は昼夜とも観ているのだが、今年は夜の演目がいまいちだったので昼の部だけにした。だってお正月から人間豹なんておどろおどろしいの観たくないよ。染ちゃんには悪いけど。
一、玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)
第一場 向島晋其角寓居の場
第二場 土屋邸奥座敷の場
土屋主税 翫 雀
大高源吾 染五郎
晋其角 橘三郎
落合其月 薪 車
侍女お園 扇 雀
赤穂浪士の吉良邸討ち入りに題材を取った「松浦の太鼓」を、初代雁治郎のために書き換えた狂言。明治40年初演と言うことで、新歌舞伎と言って良いのだろう。同じシチュエーションなのに「松浦の太鼓」に比べると、台詞も理屈っぽいものが多いし、「仕官することになった」と嘘をついてそれとなく別れに来た源吾を、其角と其月が非難するのもなんだかしつこくて、そこまで言わなくても良いじゃん、と思ってしまった。なんだか無邪気に楽しめない芝居。「松浦の太鼓」を知らなければそれなりに面白いのかもしれないが、どうしても比べてしまうからいけない。
役者はみな良くやっていると思うけれど、翫雀ははっきり言ってお殿様役者ではないし、おおらかさが持ち味でもあるから、どうせならむしろ松浦のお殿様の方が良い味が出たと思う。ただ残念ながらこちらが家の芸だから、松浦侯をやることはないだろうけど。
染五郎は前半は辛抱役。終盤は颯爽としてはまり役。
扇雀が楚々とした味で好演。
二、男の花道(おとこのはなみち)
加賀屋歌右衛門 藤十郎
万八女将お時 秀太郎
加賀屋歌之助 染五郎
加賀屋歌五郎 錦 吾
田辺妻富枝 吉 弥
加賀屋東蔵 竹三郎
田辺嘉右衛門 翫 雀
土生玄碩 幸四郎
長谷川一夫で映画になった話を逆に歌舞伎化した作品とか。まったく初見。映画も観てません。
新作歌舞伎らしく、音楽が黒御簾ではなくスピーカーから流れるのだが、それがまあ、ひょっとしてその長谷川一夫の映画のサントラ?と思うような古くさいオーケストラ音楽でずっこけそうになった。全然歌舞伎じゃないのよね。江戸時代からの清元などを聞いてもちっとも古いと感じないのに、こういう音楽の方がわずか50年かそこらで古色蒼然としてしまうのはなぜなんだろう。脚本や演出は上演のたびに多少手直しするだろうに、音楽はそのままというのは手抜きだと思う。やっぱり歌舞伎の伴奏音楽は長唄とかで作ってほしいわ。
藤十郎の歌右衛門は当たり役というだけあってさすがに魅力たっぷり。芸に生きながら、恩義を忘れない熱い造形。ただ、ずーっと女形の姿なので、男なのか女なのかわからなくなることも少々あり…(笑)。劇中劇では「伊達娘恋緋鹿子」の八百屋お七の人形振りも少しだけど見せてくれるサービス。これ、本役で観たことないよな。
幸四郎の玄碩は初役とのことだが、黙阿弥などの世話物の時のような無理さがなくて自然な演技でなかなかのはまり役と見た。腕は確かだが、無骨で一本気、世渡り下手な医者のまじめさが良く出て上々。
でもこの話の眼目、玄碩が歌右衛門を呼び出す理由が、宴席で自分が余興をやるのが嫌で断ったのが発端、というのも大人げないというか。ま、それで歌右衛門が来なかったら切腹しろという田辺も無茶で、「走れメロス」じゃあるまいし、みたいな展開にあきれてしまった。
その田辺は翫雀で、これもちょっとニンじゃなさそうだが、さすがに芸達者な人なのでそれなりに見せてしまうところはさすが。
秀太郎の茶屋の女将が、ちょい役なのに、いかにもという様子でさすがに上手い。
竹三郎の東蔵も良い味。
今月昼の部は二つとも新歌舞伎で、お正月にはちょっとなあ、という気がした。夜も「吉田屋」はともかく人間豹ってどうよ~。なんだか、役者がやりたいものと観客が観たいものが乖離しているような気がする。
こんばんわ
同感です。私も今年の演目は昼も夜もいまいちかも。。。と思って行くつもりなかったのですが、急にたまたま昼の部のチケットをもらったので、土曜に見に行きます。
せっかくだし、初春公演だし、まあたまにはちょっと変わったものも見てみます。
by tamaiichi (2011-01-13 21:23)
tamaiichiさん、
そうなんですよ。今年の松竹座は顔ぶれも仁左衛門さんが出ていないこともあってちょっと寂しいし、演目も地味目ですよね。
でも、「男の花道」はあまり期待していなかったせいか(笑)、思ったよりずっと面白かったです。
楽しんできて下さいね。
by mami (2011-01-13 23:42)