SSブログ

国性爺合戦 [舞台]

11月21日(日)
国立劇場

この日は朝から来年1月の浅草歌舞伎のチケット取り。12月の顔見世がまだなのに、もう来年のチケットかあ。ま、そんなこと言ったら、3月の演奏会のチケットもすでに取ってあるけれど。

国性爺合戦2.JPG

「通し狂言 国性爺合戦(こくせんやかっせん)」
序 幕  大明御殿の場
      肥前国平戸の浦の場
二幕目  千里ヶ竹の場
三幕目  獅子ヶ城楼門の場
四幕目  獅子ヶ城甘輝館の場
        同 紅流しの場
        同 元の甘輝館の場
團十郎の和藤内、藤十郎の錦祥女、梅玉の甘輝、東蔵の渚、左團次の老一官

歌舞伎より文楽の上演の方が多い気がする演目。
よく上演されるのは三幕目以降。序幕からは珍しく、特に大明御殿の場は文楽でも観たことがなかった。
序幕第二場以外は、全編舞台が中国と言うことで、もちろん衣装もそれらしい。初演時に大ヒットしたというのも、ストーリーもさることながらそんな異国趣味が受けたのではないか。

とはいえ、物語自体は実に日本の義太夫狂言的に進む。悪人によるお国の乗っ取り。脱出するお姫様。それを助ける忠臣。離ればなれとなっていた親子の再会、親への考と継子への義理、自己犠牲による大団円。
とまあ、衣装と役名さえ違えば、国内が舞台でもちっともおかしくない話ではある。もちろん、だからこそわかりやすくて受け入れられてきたんだろうけど。

まともに考えてみれば、和藤内や渚が明の人と話ができるのも変なんだけど、まあそんな理屈は言わない歌舞伎の世界。そのくせ錦祥女の侍女たちが渚の服装(着物)をおかしがったり、家来たちが和藤内の太刀を重くて持ち上げられなかったり、と異文化を強調したりするのも面白い。

團十郎の和藤内は、理屈を超えたヒーローという稚気のある荒事の楽しさが十分。虎退治など馬鹿馬鹿しいくらいに可笑しい。こういうおおらかな役は変に腹だの智恵だのを見せずに直情径行的にやってくれてちょうど良い。大きさもあって、声も張りがあって立派。

藤十郎の錦祥女。まず衣装がピンクのひらひら。他の歌舞伎の演目じゃまず見られないものだが、こういうのをあの歳で着て何の違和感もないって言うのに感心(笑)。いや、お綺麗ですわ~。
楼門の場では父との再会(というより初対面?)、甘輝館では義理の母渚への孝行と情愛をたっぷりと見せた。
自害することによって夫と弟の仲を取り持つ健気さ哀れさが十分。でも普段に比べると割とあっさりめかな。お初なんかだとこってり過ぎるくらいだから。

配役で意外だったのが梅玉の甘輝だが、これまで見てきた甘輝がどちらかというと武勇の人というイメージだったのが、梅玉らしく武と知情に優れた高潔な将軍という風に見えてさすがに立派で、團十郎の和藤内と張り合って見劣りしない存在感を見せた。髭も案外お似合いだったな~。

東蔵の渚が凛として情愛深い老母の様子。錦祥女を手にかけようとする甘輝から守る懸命な姿に胸打たれる。
左團次の老一官は気骨ある雰囲気。
翫雀が珍しく悪役。派手な衣装と髭のいでたちもよく似合ってなかなかの敵役振り。三枚目敵でないこういう役もできるというところを見せて収穫。
亀鶴が皇女でこの頃多くなってきた女形。綺麗になってきたし、台詞も違和感なくこなしていた。これからも女形増えそう。

虎狩りの場面は結構ツボ。着ぐるみの虎がタイガースのマスコット並みに怖くない(笑)。その上中国の虎なのになぜか天照大神のお札でおとなしくなっちゃうはちゃめちゃさが何とも言えない。

以前も書いたような気がするが、この芝居が今一好きになれないのは、幕切れで錦祥女と渚が自害して息を引き取ろうとしているのに、和藤内と甘輝は後ろで手を結んで「さあ、戦だ!」みたいになって終わることで、妻や母が死にかけてるのに泣けとは言わないまでももうちょっとなんか言葉をかけるくらいできないのかよ、まったく男って奴は、と思ってしまうわけで(苦笑)。

nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 4

コメント 2

そらへい

「国性爺合戦」
タイトルだけですが、教科書に出てきたような記憶がかすかにあります。近松作なんですね。
物語、かなりデフォルメされているようなので
最後の男の生態も強調されているのだと思いたいです(笑)
by そらへい (2010-11-23 20:09) 

mami

そらへいさん、
古文の教科書ですかね?それとも日本史かな?
近松と言えば心中ものが多い印象(実はそうでもないけど)なので、これはちょっと珍しいんですが、文楽での初演時は大ロングランだったそうです。
最後のシーンは、女から見ると腹立たしいんですけど(苦笑)、まあお芝居ですから仕方ないんでしょうねえ。
by mami (2010-11-23 23:05) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました