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八月花形歌舞伎・第三部 [舞台]

8月23日

第二部は5時15分かそこらに終わったので、第三部との間は割とゆっくりしている。これなら第一部と二部の間をもうちょっと開ければ良かったのにね。

通し狂言
東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)
  序幕 浅草観世音額堂の場より  大詰 仇討の場まで    
お岩/小仏小平/佐藤与茂七  勘太郎            
直助権兵衛  獅 童               
お袖  七之助               
お梅  新 悟          
茶屋女房おまつ  歌 江              
舞台番  猿 弥               
宅悦  市 蔵            
伊藤喜兵衛  家 橘           
民谷伊右衛門  海老蔵

いやあ、勘太郎のお岩さんが期待を上回る素晴らしい出来。
勘三郎に習ったんだろう、元々声もよく似ているので、お父さんそっくりと言いたいところだが、むしろ勘三郎の上をもう行っていると思う。特に良かったのは「浪宅の場」、お歯黒を塗ったり髪すきをする場面、勘三郎だとサービス精神が強すぎるのが災いして笑いを取ってしまうところを、まだ幽霊じゃないのにぞっとするような凄味を見せたのに、唸ってしまった。すごいな、勘太郎ちゃん。いや、もうちゃんなんて言っちゃいけないのか。
さらに目を引いたのは手つきのきれいさ。例の毒薬を飲む場面、薬の包みを開き、湯飲みを持って白湯を飲み、という一つ一つの動作がゆっくりと、観客にもここが肝心、と思わせるような動きながら決して無駄に動いていない。やっぱり踊りが上手い人は、亀ちゃんや松緑もだが、手つきがきれいね。

もちろん、心理描写にも優れ、子までなした夫に邪険にされる女の悲しさ、親切と思っていた隣家に裏切られた怒りなどを、これでもかと言うほど丁寧に見せていくのにくどさがないのも良い。
変な笑いがない分、今まで観た誰よりも怖いお岩様だった。

早替わりで見せる与茂七では軽快、小平では哀れさも見せ、文字通り大車輪の活躍。

伊右衛門の海老蔵は、酷薄な色悪ぶりははまっているが(というよりはまり過ぎ?)、とにかく台詞がなってない。いつものことだが、どうして世話物になるとああいう変なしゃべり方になるのだろう。誰に習ったのか知らないが、耳障りで仕方がない。勘太郎に比べると、ほとんど子供の学芸会並み。
先日のNHKの番組ではずいぶん精進しているような取り上げられ方だったが、実際の舞台を観るととてもそんな風に思えない。それとも本当にあんなに一生懸命やっていてこうだというなら、よっぽど才能がないのかと可哀想になる。もう30代、若くてきれいで格好良いだけでちやほやされる時期はもうすぐ終わってしまう。30年後に恥をかかないように今がんばっておかないと。

直助の獅童がニンにあった小悪党ぶり。
お袖の七之助も楚々とした様子がよく似合った。
宅悦の市蔵がさすがに達者な芝居を見せ、人の良さと、小心者の哀れさを見せた。
舞台番が出てくる演出は初めて観たが、猿弥が場面転換の時間を上手くつないだ。
とにかく、今月三部中いちばんの大当たり。第一部の不満を吹き飛ばす出来。
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ユキタロウ

いまだ歌舞伎の事は良く分かりませんが、思わず肯いてしまう論旨の明快さが凄いですね!よほどの研鑽を積まれたか?あるいは・・・?(汗)

TVで放送されるようなら見てみたいものです。
by ユキタロウ (2010-08-26 20:52) 

mami

ユキタロウさん、こんばんは。
「あるいは・・・?」っていったい何を想像してらっしゃるんでしょう?私は怪しい者ではありませ~ん(笑)。
「論旨が明快」かどうかわかりませんが、思い込みで書いていますので、人によっては違う感想をお持ちの方もいらっしゃると思いますよ。(海老様ファンには石投げられそうだし)

TVで放送されたらいいですね!私ももう一度観たいです。
by mami (2010-08-27 00:09) 

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